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日本企業のエンジニアとして、カリフォルニア州で生きる【越境テレワーク 事例インタビュー】

あなたの「理想の働き方」とは、どのような形だろうか。

2019年4月より「働き方改革関連法」が順次施行され、さらに2020年から新型コロナが猛威を振るった影響により、特にリモートワークは著しく促進された。それから3年を経て新型コロナウイルス感染症は23年5月、日本でも「5類感染症」に指定され、20年以前の旧態然とした日常が戻って来たように思われる。

「働く」ことに国境がなくなる日

イーロン・マスクのような中央集権的封建制度による統治を礼賛する強権経営者を戴く企業も生き延びた一方、「どこでもオフィス」を提唱するLINEヤフーのように、出社であろうが在宅であろうが、社員による自由な働き方を尊重する企業も登場した。そしてさらには、そもそも社員が出社するためのリアル・オフィスを持たない、oViceのような企業もそれほど珍しい存在ではなくなった。

こうした働き方を突き詰めた結果、働く現場において、国と国の境目さえもなくしたケースもある。

さらなる働き方改革を推進する企業も散見される昨今、求人サイトによっては「在宅ワーク・海外在住可」という条件が検索に表示される。そう、もはや勤務先によって居住地を変えることは必須ではないのだ。

どういうことかというと、海外に居住しながら、日本企業に勤めることも可能となっているということだ。

米カリフォルニア州ロサンゼルス在住のエンジニア、堀場信行さんのワークスタイルは、まさに21世紀らしい働き方の代表例だろう。(競走馬のようにブリンカーを強要されている日本のサラリーマンの大半は気づかないのかもしれないが、21世紀は今やそんな時代だ。)

▲カリフォルニアの真っ青な空のもと浜辺の脇を歩く堀場さん家から約5kmの場所にあるビーチで趣味のウォーキングを楽しむ生活を送っている

堀場さんはかつて愛知県で飲食業に従事していた。外国人客への対応を迫られ「英語の勉強のため」2000年に渡米し、以後、転職やフリーランスでの経験を経て、現在は東京都港区に本社を置くIRISデータラボ株式会社に勤務している。

堀場さんは留学から現在に至るまで、ほとんどの期間をアメリカで過ごしている。日本に生活拠点をおいたこともあったが、子どもの教育環境を踏まえ再度渡米を決意したそうだ。

日本の会社に「越境テレワーク」堀場さんの働き方

「越境ワーカー」で気になるのは、なんといっても時差への対応だろう。ロサンゼルスの日曜夜は、日本時間月曜日の朝、日本ではけたたましく週明けの業務がスタートする。堀場さんはoviceにアクセスし、仕事を始めるのだそうだ。

「夕食後にオンラインで仕事を始めます。夜は19時から24時ぐらい。トラブルの際はもっと遅くなることもありますが、そういった事態は月に一度ぐらいですね。

こちら(米西海岸時間)の夜に日本からのオーダーが届きますので、日付をまたいだ朝にそれを確認します。午後も含め作業し、再び日本の確認を仰ぐんです。

そうして日本の日中にレビュー、テストをしてもらっている間、こちらは夜ですので寝て、再び朝、その結果を受け取り修正する…そんなサイクルなので、効率よくできていると思います」

と円満の様子だ。

唯一のストレスは「日本の月曜日がアメリカ西海岸では日曜の夜。日曜の夜のまったりしたい時間ですが、それが確保できないと感じています。日本の月曜の朝との温度差ぐらいでしょうか」と笑う。

▲自宅で勤務中の堀場さんoviceは外付けのモニターでいつも見られるようにしているそう画像を一部加工しています

「エンジニアですから、構築しているものを共有したり、バグの説明をしてもらったりという場合も多く、oviceで画面シェアしながら把握しています。

話しかけられたくないときは、oviceのステータスを『作業中』に変更しています。アバターの周りのリングが赤くなるので分かりやすいですよね。

でももちろん、oviceのスペースにいるので、同じくアクセスしているメンバーにも私のアバターが見えて、わかるんですよね。時にはoviceの『肩ポン』機能で、私に用事のある方が『話しかけたい!』と表現してくれて、本当のオフィスみたいです。

こうしたコミュニケーションを日本とアメリカでできるということが、すごく面白いと感じています。『こんな時代が来たんだ』と驚きも感じます」。

▲アメリカの堀場さんと日本にいる同僚とoviceでコミュニケーション画像を一部加工しています

メールからSkype、SNS、Zoom、そしてoviceへ

これまでもリモートでチームに参加してきたという堀場さん。リモートワークのプラットフォームの変遷について、振り返ってこう話す。

「最初はメールだけでした。その後、Skypeを使うようになり、さらにその後にはGmailのチャットツールやFacebookのメッセンジャーでのやりとりがありました。

そして、ChatworkやSlackを皮切りに、目的に合わせた多種多様なツールが選べる時代に。新型コロナとともに“Zoomの時代”が到来したようにも感じていますが、自分にとっては、今はoviceがコミュニケーションの主流です」。

▲IRISデータラボのoviceで働く社員たち

こうした複数存在するツールについて堀場さんは、「それぞれまったく性格が異なるもの」だと意見を述べてくれた。

「Zoomは、業務においては“便利な電話”のように感じています。会議という、“議題があり、意見を出し、決定事項にまとめて、決まったメンバーに共有する”ことに向いていると思います。Teamsはテキストによりコミュニケーションをするためのツールですよね。

一方、oviceは、まるで会社そのものです。先ほどもちょっと言いましたけど、“常にだれかがいる”ので。Zoomだとそうはいかないんですよね。言い換えると、oviceは『この目的でこの時間に集まりましょう』以外のやり取りが可能になっています。

それと、アバターで近寄ってきてくれる動きなど見ていると、人間味が感じられますよね。物理的にいる場所は違うけど、ovice上で実際に“すぐそこにいる”というのを感じています。そこにいるのがはっきりとわかるので、どうしたってサボれません(笑)」。

国境を超えたリモートワーク「越境テレワーク」の可能性

▲車で30分程度のところにあるエンゼルスタジアムオブアナハイムに友達と訪れた際の一枚大谷選手がどこに行くのかが気になっているとのこと

最後に、堀場さんはカリフォルニアでの生活についてこんな風に語ってくれた。

「天気もよく子育てに適している上、元来クルマ好きだったので、『広いところをドライブしたい』という個人的なモチベーションにもピッタリなんです」。

国境を超えたリモートワーク「越境テレワーク」が可能な時代。堀場さんのようなノマド・ワーク的要素を兼ね備えたワークスタイルが日本社会に受容されていくことは、実は働き方改革の大きな一歩につながっているかもしれない。

▲住まいの近所での一枚空と海が広がる

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松永裕司
Forbes Official Columnist ● NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ MSN+毎日新聞プロデューサー/ CNN Chief Director などを歴任。出版社、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験から幅広いソリューションに精通。