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ハイブリッド勤務をめぐる動きと、日本の大企業取り組みからわかった“気づき”とは

新型コロナウイルスの感染予防の観点からテレワークとオフィス勤務を組み合わせた「ハイブリッド勤務」という新しい働き方が世界中で取り入られている。

様々なテクノロジーで溢れている世の中、社員のwell-being(それぞれ個人にとって本質的に価値があり、健康で安心・満足できる生活状態)に向き合い、それらを叶えていくことは十分に可能だと筆者は思う。

日本企業では、どのように新しいワークスタイルを生み出しているのだろうか?実例と共に紹介していく。

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テレワーク後進国の日本、コロナを経て前進。24%→62.7%に

パンデミック以前の日本はオフィス勤務が主流であった。アメリカのテレワーク導入率が85%だった2018年、日本はわずか19.1% だったという。

日本にもZoomやSlack等の便利なツールは存在していたので、働き方改革を行うべきだという声はあったものの、日本企業はなかなか対応していなかった。

しかし、新型コロナウイルスの染症拡大の影響により、事態は大きく変化した。東京都の調査結果によると、2020年3月にたった24%だったテレワーク導入率は、翌月62.7%まで上昇した。

その後、2021年10月には55.4%と落ち着きを見せている。

出典:東京都産業労働局|テレワーク実施率調査結果をお知らせします!10月の調査結果( 2021年11月11日  産業労働局)

この動きに伴い、インフラ環境の整備を進めた。日立も2020年4月より全従業員が原則テレワークとなり、デジタルテクノロジーを活用してミーティング等を行っていた。

富士通:アフターコロナを見据えたワークスタイルコンセプト「Work Life Shift 2.0」を発表

2021年10月6日、富士通はアフターコロナを見据えた新しいワークスタイルコンセプト「Work Life Shift 2.0」を発表した。

富士通株式会社|一人ひとりのWell-beingに向き合うDX企業としての働き方へ「Work Life Shift」の進化

リアルな社内コミュニケーションを生かしたオフィス勤務と効率性の高いテレワークと組み合わせた真のハイブリッド勤務の実現を進めていく。

オフィスの役割

ハイブリッドワークを前提として、オフィスを「多様な従業員が集い・働き・学び・交わる場」に転換。テレワーク禍で課題だった新人教育や研修などは、オフィスの執務フロアの中心で開催されるという。また、一部のオフィスで生体認証を全面導入し、オフィスでの従業員同士のコラボレーションを促すデジタル技術を組み合わせるなど、テクノロジーを大きく活用していく。

テレワークの活用・テレワーク疲れ等の課題解決

生産性や創造性の向上のため、テレワークを取り入れるのはもちろん、スタートアップ企業との協業を通して、チーム内コミュニケーションの活性化を図る。また、チームメンバーのストレス状況を把握するなどしてパンデミック禍で課題に上がっていた「テレワーク疲れ」の解決策を社内で実施する。

SDGsへの貢献、well-beingへの向き合い方

富士通は「SDGs」(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)へも積極的に貢献しており、男性従業員の積極的な育児参加も推進している。育児休暇を取得できる日数の増加、育児と仕事の両立を目指す従業員を支援するため、社内で啓発活動を進めている。

この他、ワーケーションや副業も推奨するなどして、社員一人ひとりのwell-beingと向き合ったワークスタイルの推進などを挙げている。

富士通がWork Life Shift 20で貢献を目指す主なSDGs

日立:独自の仮想オフィスを活用。ハイブリッドワークの課題解決へ

日立製作所は Microsoft Teams を活用した仮想オフィスを構築した。この仮想オフィスには「360 度パノラマビュー」と、コミュニケーションと仕事の起点となる「ワークボード画面」が実装されている。

「360 度パノラマビュー」は、実際のオフィスと同じ風景の写真や従業員のアイコンなどが表示され、利用者はPC画面上でオフィスを歩き回ることができる。また、話したい相手の顔をクリックすることで、Teamsのビデオ会議システムが起動するという。

<参照>マイナビニュース|日立流ハイブリッドワーク、独自の仮想オフィスで課題解決へ

従業員約400人を対象に、2021年5月から約2カ月間仮想オフィスの実証実験を実施し、ハイブリッドワーク禍での課題解決に対する効果と有効性を評価した。

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会議等でのコミュニケーションだけでは不十分である

日立ソリューションズ・クリエイト 営業統括本部 DX推進センタ ソリューションマーケティング部 部長代理の中島佐奈江氏は、仮想オフィスは今後の新しいワークスタイルを強力にサポートする可能性を秘めていると語る。

しかし、会議等のコミュニケーションだけでは不十分であると語っているとも話しており、日常的な会話の重要性を指摘した。

なぜテレワーク下の「自然に話せる」コミュニケーションが必要か

社員が必要と感じている「コミュニケーション」は、オフィス、エレベーター、社員食堂、喫煙所などで発生する、いわゆる「雑談」を含めたコミュニケーションであった。

電話やSlack等のチャットでのコミュニケーションは意外とハードルが高く、「自然に話せる場」が意外にも必要であるという。

日立が構築した仮想オフィスはovice同様、相手が今話しかけてもいいタイミングかどうかを一目で確認することができ、吹き出しコメントにより現在の物理的・心理的状況を表示することが可能だ。心理的な安全や自分の望む環境を確保することができる。

仮想オフィスの実証実験後に行われた社内調査によると、77%の従業員が「ほぼ毎日利用」しており、66%が「また利用したい」と回答している。

また、82%もの人が仮想オフィスを利用してから、テレワーク禍での孤独や寂しさが「改善された」と回答。仮想オフィスを利用しているチームメンバーを見るだけで「心の距離感が縮まった」というコメントが寄せられていることから、テレワークがいかに孤独な作業であり、チームメンバーとのコミュニケーションが大切かということがわかる。

ハイブリッドワークにおける、必要不可欠なコミュニケーションの形

富士通が発表した新しいワークスタイルコンセプト「Work Life Shift 2.0」でも、チーム内でのコミュニケーションの活性化について述べられており、「意識的にチームと関わりを持ち、コミュニケーションを図る」ということが、ハイブリッドワークをうまく機能させる上で必要不可欠と言える。

そして、オフィスも在宅も関係なく、各々にとって最も効率が高く、自身に合っていると思うワークスタイルの実現が可能な「テクノロジーのサポート」と「企業・チームの理解力と対応」も重要になってくる。

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YUI SASANO
フリーランス歴10年目、現在25歳の作詞作曲家/SNSマーケター。アーティストや文化人、企業のSNSプロデュースの他、コラムニストとしても活動している。