アメリカンドリームは過去のもの?Z世代レンズから見る仕事の未来とは
Z世代(1995-2004年に生まれた世代)である筆者は、ミレニアル世代(1985-1994年生まれの世代)前半の人と仕事をすることが多かった。ミレニアル世代の人たちは、Y世代(1975-1984年生まれの世代)の常識を引き継いでおり、上司に意欲とやる気を見せ、職場内で誰よりも一番働くことが理想とされる、いわゆる「ハッスルワーカー」であることが求められた。
Z世代という言葉自体もそんなに広まっていなかった平成時代、新しい時代の風を吹かせる勇気もなく、静かに職場の空気を詠み、チームリーダーや上司に好かれることが必要だという下心に従い「ハッスルワーカー」になりきっていた筆者。もちろん自身が一番若くスキルも経験も未熟であったがために、「やる気は誰よりもあります!」という今考えたら小っ恥ずかしいアピール方法しかなかったという理由もある。そしてそれが罷り通っていたのだから、実力をまだ磨いている最中の人からすると大変有り難いシステムでもあったが…。
そんな常識が”古いもの”となったのは、アメリカからやってきたZ世代という言葉と、地球温暖化による異常気象のお陰で「運動中の水休憩=怠け者」など虐待に近い方程式が消え去っていったお陰だ。(時間が経つにつれて、こまめな水分補給は大切だという手のひら返しのような考えが次々と生まれたが、恐らく、魂を削って極限のさらに深くまで追い込むことが素晴らしいという価値観は、未だにDNAレベルで残っていると思う。)
それから月日が経ったある日の朝、当時筆者が働いていたベンチャー企業に、Z世代の学生インターンが入ってきた。筆者もZ世代であるが、ミレニアルの影響を受け過ぎたお陰でだいぶハッスルに育っていたため、最近の才能ある若者はどんな感じなのだろうかとワクワクしていた。
高学歴、理系でコミュニケーション能力もあるというポテンシャルの高さ。この上ない完璧なインターン生を迎え入れたつもりだったが、彼のインターン初日を終えたチームの感想…それは、「ゆるい」だった。
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職場に必要なコミュニケーション、を考える
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Z世代は働きたくない
インターンの彼は物分かりもよく、洞察力もある。何を考えているかはわかりにくいが、態度が悪いわけでもなかった。唯一違和感と物足りなさを感じたもの…それは、「意欲=ハッスル」だ。面白いほどに、全く感じられなかった。
そう、とにかく雰囲気がゆるいのだ。正直に「働きたくない」とも言える彼は、仕事の連絡も、勤務時間外だととにかく遅い。
”つながらない権利”が話題になっている今は普通のことに感じるが、連絡が遅い=仕事ができないという価値観しかなかった平成時代。「最近の若い子は〇〇だ」「俺たちの時代は〇〇だったのに」この二つのセリフを頻繁に聞くことが多かった。
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The American Dream Is Dead ― アメリカンドリームは死んだ
アメリカ人ライターAndrew Rosas氏のTwitter投稿によると、アメリカンドリームが死んだという。理由は、以下の通りだ。
Z世代のほとんどが、コロナ禍に社会人デビューをしており、何の約束もない未来と喪失の時代、「夢を持つ」などリスクしかない。年金を支払う理由は理解できるが、Z世代が年金を必要とする時代にきちんと支払われるのかわからない、つまり国に頼れない。物価は上がるのに給料は上がらない。治安が良く平和を象徴するような国=日本だったはずが物騒になりつつある。
普通に生きることだけで精一杯だ。なぜなら、「普通」が普通でなくなってきているからだ。
Z世代は今、どんな価値観を持ち、どんなレンズで仕事の未来を見ているのだろうか?Z世代のレンズから見る、仕事の未来を6つ紹介する。
人生に対する悲観的で冷笑的な態度
Z世代はミレニアル世代と比較して、より明るい未来のためにリスクを取って冒険・チャレンジする意欲を持っていないという。それよりも、次の不況が起こる前に、今この瞬間を楽しみたいと思っている。
ほとんどのZ世代の労働者は、所得格差の拡大、授業料の値上げ、30歳までに家を所有することは難しいという概念と共に子供時代を過ごした。つまり彼らは安定性を期待せず、国に期待することもなく、頼りできるのは自分たちだけだと学んだ。
自身のメンタルヘルスを第一に考え、「ハッスルワーカー」になることを好まない
これはミレニアル世代が持つ価値観と最も異なることの一つだ。ミレニアル世代は「ハッスルカルチャー」に献身しており、仕事=人生と捉える人が多い。
しかしZ世代は人間としてもプロフェッショナルとしても成長できる場所で働きたいと思っており、ストレスを感じたり、憂鬱な気分になったり、早く退勤したいと思うような場所で働きたくないという。
Z世代がメンタルヘルスに対して関心を持った理由の一つは、有名人の影響もあるだろう。歌手で女優のデミ・ロバートが不安や鬱の影響・メンタルヘルスの問題に対してオープンにコメントをしたことや、オリンピック選手のサイモン・バイルズが自身のメンタルヘルスを守るために勇気ある行動したことは”会社や団体ではなく自分自身を優先して良い”という学びを与えてくれた。
また、ワークライフバランスの欠如は、若い労働者が仕事・会社を辞めてしまう大きな原因となる。学びの機会が少ない・経済的な恩恵が少ないなども辞職理由の一つだ。
<参考>
Gen Z does not dream of labor|Vox
Simone Biles’ bravest act: choosing herself|Olympics
職場は自身のアイデンティティとリンクさせていない
良い悪いの問題ではないが、ミレニアル世代以前の人たちと挨拶を交わすと、自己紹介のときに企業名を出す人が多い。企業名を出した方が共通の知り合いを見つけられる可能性も高く、企業とリンクさせてその人を認識できるため、効率的なネットワーキング法だと感じる。
一方、Z世代は自己紹介のときに「ライター」「マーケティング」「エンジニア」など、役割のみを説明する人が多い。つまりZ世代は職場と自身のアイデンティティをリンクさせず、仕事内容を伝える。なぜなら、今の職場はキャリアパスの一つ(通過点)にすぎないと考えているからだ。
Z世代が積極的に転職活動をする理由
一方で、多くのZ世代は転職活動に精を出している。その理由は以下のとおりだ。
さらに良い機会・チャンスを求めている。
「Z世代は働きたくない」と記述した後に矛盾することを言うようだが、Z世代は同じ職場でいつ訪れるかわからない昇給のチャンスを忠実に待つより、新しい職場を見つけて給与交渉した方が良いと考えている。安定性を期待せず、国に期待することもなく、頼りできるのは自分たちだけだと学んだためだ。
リモートワークは長く続く人間関係を作りにくいため
特にこの2年間で普及したリモートワークしか体験したことないZ世代にとって、職場の人間関係の絆は前の世代の人達に比べて感じにくかったのかもしれない。
流動的な世の中で、自主性が求められているため
ミレニアル世代と似て一つの場所に留まることが嫌いなZ世代は、流動的で自主性が求められる世の中に進んで対応している。また、グローバル化が進むにつれて仕事自体も変化していっているため、自身の仕事が不変だと信じることは難しいだろう。
経済が不安定なため
コロナの影響でたくさんの人が一時解雇され、Z世代はいつ自分が解雇されてもおかしくないと感じている。忠実に一つの会社で働くと報われるという都市伝説を信じることはできなくなり、職場ではなく彼ら自身を第一に考えるべきだという価値観をもつようになった。
快楽を求めている
ミレニアル世代の価値観はSNS主導で、かっこいい人になりたい、影響力のある人になりたいと思っている人が多く、それがモチベーションになっている。
その一方、Z世代は”〇〇になりたい”という願望を持っている者は少ないが、魅力的な人でありたい、そして”今を楽しみたい”と思っている。つまり、Z世代は快楽を求めているのだ。
どうやって・どこで仕事をするかも完全に自身で決める
彼らにとってリモートワークはオプションではなく、well-beingに欠かせないものだ。
現にZ世代の半数は、働いている企業や上司によるプライベートへの干渉が強く、ワークライフバランスが保てない場合、その職場を辞めると主張している。
<参考>Gen Z and the end of work as we know it|World Economic Forum
資本主義への幻滅
前書きにも書いたように、がめつさが少なく「ゆるい」のが特徴の彼らは、資本主義が終わりかけていた時代に生まれ育った。資本主義の欠点を目の当たりにし、資本主義システムに搾取された歯車、所謂社畜になりたくないと思っている。
Z世代の新しい価値観、新しいワークスタイル…どちらもどこか掴みどころがなく、負担に感じているマネージャーも多いかもしれない。大切なのは、Z世代が最初のデジタルネイティブ世代であり、さまざまなコラボレーションツールやプラットフォームに慣れていることを認識することだ。
チームリーダーがZ世代のワーカーをより理解し、マネージングために役立つツールはたくさんある。リモートワークであってもoviceのバーチャルオフィスを通じて、若い従業員が頻繁に発言することを可能にしたり、世代を超えたチームをマネジメントし、人間関係を築くことはできる。
彼らの新しい価値観に沿ったワークライフを前向きに築き上げていこう。
<参考>
Eat the rich! Why millennials and generation Z have turned their backs on capitalism|The Guardian
Put themselves first and don’t dream of labor: future of work through the Gen Z lens|Medium
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