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働き方改革とは?背景や具体的な取り組み方をわかりやすく紹介【中小企業の事例も】

働き方改革とは、働く人一人ひとりが多様な働き方を選択できる社会の実現を目指して、政府が推進している取り組みのことです。

長時間労働の見直しや柔軟な働き方の実現など、大企業を筆頭に、中小企業でも働き方改革への取り組みが行われています。

この記事では、働き方改革の概要から、背景、メリット・デメリットまでをわかりやすくご紹介します。大企業と中小企業の具体的な取り組み方や事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

【1分でわかる】働き方改革の内容とは

働き方改革とは、働く人々がそれぞれの抱える事情に合わせて「多様な働き方」を選択できるようにするために、政府が推進している改革のことです。

政府は、働き方改革を推進するために「働き方改革関連法」を制定し、時間外労働の上限規制や、年次有給休暇の確実な取得などを定めています。

働き方改革はいつからスタートした?

働き方改革関連法は、2019年4月1日より順次施行されています。

次の図のように、大企業では2019年4月1日、中小企業では2020年4月1日より、働き方改革がスタートしました。

働き方改革関連法施工スケジュール

①時間外労働の上限規制:大企業は2019年4月1日から、中小企業は2020年4月1日から、自動車運転業務、建設事業、医師は2024年4月1日から。

②勤務間インターバル制度の導入促進、③年次有給休暇の確実な取得、④労働時間状況の客観的な把握、⑤フレックスタイム制の拡充、⑥高度プロフェッショナル制度の導入、は、2019年4月1日から

⑦月60時間超残業に対する割増賃金率引き上げは、大企業は2019年4月以前から、中小企業は2023年4月1日から。

⑧雇用形態にかかわらない構成な待遇の確保は、大企業は2021年4月1日から、中小企業は2021年4月1日から(労働者派遣法の改正時期は大企業と同様)

企業規模の定義は、中小企業基本法の基準による。
▲働き方改革関連法施行スケジュール

出典:厚生労働省|「働き方改革関連法」の概要

働き方改革のスケジュールは、厚生労働省により、企業の規模や施策の内容に基づいて作成されています。

働き方改革が求められる背景・目的

そもそも、なぜ政府は働き方改革を推進しているのでしょうか?

働き方改革の背景として、日本は主に次のような課題を抱えています。

  • 少子高齢化などによる生産年齢人口(15~64歳の人口)の減少
  • 仕事と育児・介護の両立など、働く人のニーズの多様化

総務省の「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」によると、日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少しており、2050年には生産年齢人口が5,275万人(2021年と比べて29.2%減)と、今後ますます減少することが予測されています。

日本の生産年齢人口(1950年から2065年まで5年刻み)
▲日本の生産年齢人口1950年から2065年まで5年刻み

出典:総務省|令和4年 情報通信に関する現状報告の概要

生産年齢人口が減少することにより、労働力の不足や国内の需要の縮小などの課題が発生することが考えられます。とくに、中小企業や小規模事業者では、人手不足の問題が深刻化しています。

このような課題を解決するには、企業が従業員一人ひとりの生産性を向上させることはもちろん、様々な状況を持つ人々が就業機会を得られ、能力を最大限に発揮できる環境を作ることが重要とされています。

若者や高齢者、フルタイム勤務が難しい方や、育児・介護といった理由で離職した方など、働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持てる社会の実現を目的に、政府は「働き方改革」を推進しているのです。

<参照>厚生労働省|「働き方改革」の実現に向けて

働き方改革の実現に向けた政府の取り組み

東京

「生産年齢人口の減少」や「働く人々のニーズの多様化」などの課題解決に向けて、政府は次の3つの柱をもとに働き方改革関連法を施行し、従業員を雇う企業・事業所に働きかけています。

それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。

働き方改革の3つの柱①長時間労働の見直し

働き方改革の一つ目の柱は「長時間労働の見直し」です。

長時間労働は従業員のパフォーマンス低下だけでなく、睡眠・休養時間、余暇時間の不足なども引き起こします。疲労の蓄積により、心疾患などの健康被害や過労死を引き起こす恐れもあります。

そこで、政府は長時間労働の見直しとして、大企業では2019年4月1日、中小企業では2020年4月1日より「時間外労働の上限規制」を設けています。

具体的には、原則「月45時間・年360時間」が時間外労働の上限とされています。その他の法改正のポイントは、以下の通りです。

法改正のポイント

時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として月45時間、年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働+休日労働は月100時間未満、2~6か月平均で80時間以内とする必要がある。

原則である月45時間をこえることができるのは年6か月まで。

法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。

大企業への思考は2019年4月ですが、中小企業への適用は2年猶予され2020年4月となります。
▲法改正のポイント

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署|時間外労働の上限規制わかりやすい解説

長時間労働を見直すことで、従業員の健康を守り、ワークライフバランスの実現を目指すことが可能です。

働き方改革の3つの柱②多様で柔軟な働き方の実現

働き方改革の二つ目の柱は「多様で柔軟な働き方の実現」です。テレワークやフレックスタイム制などの導入により、多様で柔軟な働き方を目指します。

また、労働時間や勤務場所を固定せず、従業員が自分で選べることによって、高齢者や子育て中の方などの雇用促進も見込んでいます。

「多様で柔軟な働き方の実現」に向けた具体的な施策は、次の4つです。

施策概要
フレックスタイム制の拡充・フレックスタイム制とは、1日の労働時間を労働者が自分で決める制度
・多くの企業では必ず勤務する時間帯(コアタイム)と選択により労働することができる時間(フレキシブルタイム)を分けている
・法改正によって清算期間(労働者が労働すべき時間を定める期間)上限が1ヶ月から3ヶ月に延⻑された
勤務間インターバル制度・1日の勤務が終了してから翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保する制度
・法改正により、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務になった
テレワークの普及・推進・テレワークモデル就業規則の公開
・テレワーク制度を導入・実施し、労働者の人材確保や雇用管理改善などの観点から効果を上げた中小企業事業主に対し助成金を支給など
多様な正社員の導入・多様な正社員とは職務内容・勤務地・労働時間などを限定して選択できる正社員(例:職務限定正社員、勤務地限定正社員、短時間正社員など)
・多様な正社員制度を普及・定着させるため、制度の導入や改定を検討する企業を支援

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働き方改革の3つの柱③正規・非正規間の格差解消

働き方改革の三つ目の柱は、「正規・非正規間の格差解消」です。

具体的には、次のような内容を実施することで、正社員と非正規雇用労働者の公正な待遇の確保を目指しています。

  • パートタイム・有期雇用労働法の施行
  • 同一労働同一賃金ガイドラインの作成
  • 行政による助言・指導や裁判外紛争手続きの整備

「パートタイム・有期雇用労働法」は、2020年4月1日(中小企業の適用は2021年4月1日)に施行されました。正規・非正規間で待遇差がある場合、労働者は事業主に対して説明を求めることが可能です。

「同一労働同一賃金ガイドライン」では、基本給・賞与・各種手当て・福利厚生・教育訓練などにおいて、不合理な待遇になる例とならない例を具体的に挙げています。

このように、正社員と非正規労働者の賃金や福利厚生などの待遇差を解消することで、非正規労働者のモチベーションアップや離職率の低下、生産性の向上などを目指します。

パート・アルバイトの社会保険加入も義務化された!

2016年10月より、パート・アルバイトなどの短時間労働者に対して、社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入の適用拡大が行われています。

2023年9月時点では「従業員数が101人以上の企業」かつ「以下4つの要件全てに当てはまる」場合は、社会保険の加入が義務化される対象となります。

①週の所定労働時間が20時間以上
②月額賃金が8.8万円以上(残業代・賞与を除く)
③2カ月を超える
③雇用の見込みがある学生ではない

さらに2024年10月からは、従業員数が51人以上の企業も対象に。パート・アルバイトなどの従業員が社会保険に加入する場合、企業は健康保険料・厚生年金保険料の半分を負担する必要があるなど負担が生じます。

企業として、「扶養内で働きたい従業員には個別で相談する」「優秀な人材は社会保険適用とともに多様な正社員にすることを検討する」「引き続きパートなどで働いて欲しい人には、丁寧な説明をする」などの対応を心がけましょう。

企業における「働き方改革」のメリット・デメリット

オフィスにいる人

生産年齢人口の減少を背景に、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てる社会の実現を目指している「働き方改革」。

企業が働き方改革に取り組むメリット・デメリットとしては、どのようなことが挙げられるのでしょうか。

メリット・残業代などの人件費やオフィスの電気代などの光熱費などのコスト削減
・従業員のパフォーマンス改善による生産性の向上
・柔軟な働き方の実現による「離職率」の低下
・企業イメージの向上で、優秀人材の確保の実現
デメリット・従業員のサービス残業が発生する可能性がある
・一部の従業員における生産性(業務効率)の低下が懸念される
・同一労働同一賃金による人件費の増加や、ツール導入などのコストが発生する

メリット・デメリット、それぞれについて詳しく説明していきます。

働き方改革のメリット

企業が働き方改革に取り組むことで、主に次の4つのメリットがあります。

  1. 残業代などの人件費やオフィスの光熱費などのコスト削減
  2. 従業員のパフォーマンス改善による生産性の向上
  3. 柔軟な働き方の実現による「離職率」の低下
  4. 企業イメージの向上で、優秀人材の確保の実現

長時間労働を見直すことにより、残業や休日出勤にかかる人件費や、オフィスの電気代などの光熱費といったコスト削減が見込めます。

労働時間が短縮されることで従業員の負荷が少なくなれば、集中力・パフォーマンスの改善や、生産性の向上にも期待できます。

また、企業が「フレックスタイム制」や「テレワーク」のような柔軟な働き方を受け入れることができると、出産や育児、介護などのライフイベントによる離職を防げる可能性も。

そして、長時間労働の見直し・多様な働き方の受け入れなどの働き方改革に取り組んだ結果、企業イメージが向上し、優秀な人材の確保につながるチャンスが見込めます。

働き方改革のデメリット・問題点

企業にとってメリットの多い「働き方改革」ですが、次のようなデメリットや問題点もあります。

  1. 従業員のサービス残業が発生する可能性がある
  2. 一部の従業員における生産性(業務効率)の低下が懸念される
  3. 同一労働同一賃金による人件費の増加や、ツール導入などのコストが発生する

長時間労働の見直しは、残業代などの人件費の削減や、従業員のパフォーマンス改善が見込まれる一方で、従業員が自宅に仕事を持ち帰って残業するなどの「サービス残業」が発生するケースが考えられます。また、従業員が仕事を時間内に終えることができなかった場合に、管理職や上層部にしわ寄せが来る可能性もあります。

「フレックスタイム制」「テレワーク」などの柔軟な働き方は、自分の状況に合わせて勤務時間や勤務場所を選択できますが、人によっては自由な環境で働くことで怠けてしまい、生産性(業務効率)が下がってしまうことも懸念されます。

さらに、同一労働同一賃金による人件費の増加や、テレワーク環境の整備に向けたツール・システム導入費などのコストが発生することも、デメリットの一つです。

しかし、テレワークに関しては、導入にあたって活用できる補助金・助成金の制度も数多くあります。

また、テレワーク環境における従業員の勤怠管理や、生産性(業務効率)低下の課題解決には、ビジネスメタバース「ovice」の導入が役立ちます。

バーチャルオフィスovice

oviceは、バーチャル空間で従業員同士が交流できるツールで、従業員の出社状況や勤務状態を可視化することが可能です。下記のページより、ぜひ詳細をご確認ください。

oviceの特徴や機能について詳しく見る

【大企業】働き方改革への取り組み方と4つの事例

中小企業に先駆けて、大企業では2019年4月1日より働き方改革がスタートしています。

実際に、oVice株式会社が大企業(従業員1,000名以上)でハイブリッドワーカーとして働く方109名を対象に行った「勤務形態に関する実態調査」によると、「政府が新型コロナウイルスを5類に移行した後に、働き方改革をさらに加速させた」と回答した方の割合は55.2%でした。

勤務形態に関する実態調査結果

Q.あなたの勤務する会社はコロナ5類移行後、コロナ禍中に比べて「働き方改革」をどの程度進めていますか。
・改革をさらに加速させた:55.2%
・コロナ禍中と変わらない:35.5%
・改革を進めていない/逆行した:6.5%
・わからない/答えられない:2.8%

また大企業で取り組まれている働き方改革の内容として、同調査では「リモートワークの推進(84.7%)」「最新のオンラインツールやデジタルワークフローの導入(59.3%)」「フレックスタイムやノー残業デーなどの労働時間の適正化(54.2%)」などの回答が見られました。

勤務形態に関する実態調査結果

Q.コロナ5類移行後に進めている働き方改革の内容を具体的に教えてください。(複数回答)
リモートワークの推進:84.7%
・最新のオンラインツールやデジタルワークフローの導入:59.3%
・フレックスタイムやノー残業デーなどの労働時間の適正化:54.2%
・居住地域の拡大/自由化:52.5%
・フリーアドレス制度の導入などによるワークスペースの変革:42.4%
・サテライトオフィスの拡充と利用促進:40.7%
・育児・介護休業制度の確立および取得の推進:37.3%
・豪雨、地震、パンデミックなど災害への対策(BCP):30.5%
・その他:0.0%
・わからない/答えられない:0.0%

ここからは、働き方改革に向けた大企業の取り組みとして、次の4つを紹介していきます。

それぞれ事例も一緒に紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。なお、中小企業の事例については、こちらで紹介しています。

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【出社増の大企業社員】約6割の企業「働き方改革を加速」、社員は「まだ足りない」

ハイブリッド勤務の導入

ハイブリッド勤務とは、オフィス出社とテレワークを組み合わせた働き方です。テレワークでの勤務が可能なオフィスワーカーが主な対象となります。

週に数回オフィスに出社することで、テレワークのデメリットの一つでもある「意思疎通の難しさやコミュニケーション不足などによって生産性が落ちる」といった課題の解決にもつながります。

【事例1】東芝|ハイブリッド勤務の制度化

株式会社東芝は2023年5月から、従業員の勤務形態を出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッド勤務」へ移行することを発表しました。

事務や研究開発など、在宅勤務が可能な国内の従業員約4万4千人が対象です。

同社は生産性の確保や向上を前提として、従業員の働く場所の柔軟性を高めることや、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指しています。

<参照>
日経新聞|東芝、ハイブリッド勤務制度化
日系転職版|東芝、原則出社を撤廃へ 4万4000人対象にコロナ後も
東芝|新型コロナウイルス感染症に係る各種対策終了および「ハイブリッド勤務」導入について

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最新のオンラインツールやデジタルワークフローの導入

バーチャルスペースやWeb会議ツールなどのオンラインツール、従来のワークフローをデジタル化するシステムなどを導入することで、従業員の業務の効率化や、生産性向上が期待できます。

「テレワークの環境で、従業員同士のコミュニケーションが取れていない」という場合にはバーチャルオフィス、「業務を効率化したい」という場合はデジタルワークフローなど、課題に合わせて導入するツールを選定することがポイントです。

【事例2】NTTデータ|oviceの導入で業務の生産性をアップ

株式会社NTTデータでは、コロナ禍でテレワーク中心の働き方にシフトしたものの、社内の従業員同士のコミュニケーションや、情報交換が減少したことが課題でした。

そこで、ビジネスメタバース「ovice」を導入した結果、最低限のルールで活発なコミュニケーションが行われるように。

さらに、従業員同士が連携を取りやすくなったことで、業務の効率化が実現しました。

株式会社NTTデータでのovice利用

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フレキシブルワーク・時短勤務の導入

フレキシブルワークとは、働く場所と時間を柔軟に選択できる自由度の高い働き方です

フレキシブルワークや時短勤務を導入することで、従業員は仕事と育児・介護などの両立を図ることができます。

とくに、働き方改革が推進される背景には「仕事と育児・介護の両立など、働く人のニーズの多様化」といった課題もあるため、企業はフレキシブルワークや時短勤務など、柔軟な働き方を受け入れる姿勢を持つ必要があると考えられます。

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【事例3】伊藤忠商事|朝型フレックスタイム制度

伊藤忠商事では、2022年5月から各従業員が業務・生活の状況に応じて働き方を選択できる「朝型フレックスタイム制度」を導入。

朝型フレックスタイム制度は、9:00~15:00がコアタイム(業務をしなければいけない時間)で、5:00~9:00の間と15:00~20:00の間を選択して業務をする時間(フレキシブルタイム)です。

20:00〜22:00の勤務は原則禁止され、業務が残っている場合は翌日朝へシフトさせます。また、5:00〜8:00が推奨時間とされ、7:50以前に勤務を開始した場合はインセンティブとして深夜勤務と同様の割増賃金(25%)を支給しています。

<参照>伊藤忠商事|労働生産性向上に向けた主な取組み

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遠隔地勤務制度の導入

遠隔地勤務制度とは、オフィスから離れた地域に住む場合でも、テレワークの活用によって勤務できる制度のことです。なかには、国内だけでなく国外に住んでいる従業員を受け入れる企業も存在します。

遠隔地勤務の制度の導入により、配偶者の転勤や介護など、様々な事情での引っ越しをきっかけとする離職を防ぐことも可能です。

また、「勤務地がネックとなって求人の応募が集まらない」といった採用課題の解決にもつながり、これまで採用できなかった優秀な人材を確保できる可能性もあります。

【事例4】三菱電機|国をまたいだ遠隔地勤務の制度化

三菱電機株式会社は、2021年に従業員が勤務地の通勤圏外に居住しリモートワーク中心で業務を行う「遠隔地勤務制度」を試験的に導入しました。

遠隔勤務制度が導入された背景には、従業員が転勤によって単身赴任で家族と別居せざるを得ない、育児や介護へ参加しづらいといったことがあります。

遠隔地勤務制度を導入する目的は、単身赴任による家族との別居回避や育児・介護への参画など従業員への支援と優秀な人材の確保です。

2023年からは本格的に制度化し、海外に居住しながら日本で働く国をまたいだリモート勤務も可能にする予定であることを発表しています。

<参照>
日経新聞|三菱電機、海外でリモート勤務可能に 人材獲得へ制度化
三菱電機|「遠隔地勤務制度」のトライアル導入について

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【中小企業】働き方改革への取り組み方と事例

中小企業では、「人材が足りていないけど人件費を捻出できない」「コストの問題でツールを導入できない」といった課題がある場合も多いのではないでしょうか。

大企業と比べると、中小企業は設備投資や人件費に投入できる資本が少ない傾向にあります。様々な制約があるなかで、従業員の満足度向上だけでなく「優秀な人材の確保」や「従業員一人ひとりの生産性の向上」「人件費の削減」などを目標として、働き方改革を進めることがポイントです。

ここからは、中小企業における働き方改革への取り組みとして、次の4つを紹介します。

事例と合わせて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

システム改善やITの活用などで生産性を向上させる

生産性の向上が重要となる中小企業の働き方改革では、システム改善やツールの活用がおすすめです。

業務の効率化により、本来の業務に集中できるシステム改善で業務に関わる時間を削減できるというメリットがあります。

【事例1】有限会社山下組|人材不足と職場環境の改善を実現

京都府宇治市にある有限会社山下組は、人手不足解消のために、見積もり・発注・原価管理のソフトを導入しました。

その結果、社長が一人で担っていた事務作業をスタッフに任せることができるようになり、現場巡回や新規取引先などの営業活動ができるようになりました。

これまでは紙ベースだった勤怠管理は、アプリに変更です。スマートフォンで打刻・日報の送信を行うことで、現場の従業員は直行直帰が可能となりました。

体を休める時間が増え移動時間が無くなることで、時間的な余裕が生まれ、現場での事故やケガの予防にもつながっています。

<参照>厚生労働省|ITの活用で人材不足解消と職場環境改善を実現

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テレワーク・フレックスタイム制の導入

従業員の育児や介護といったライフスタイルの変化による離職を防ぐためには、テレワークやフレックスタイム制度の導入といった対処法があります。

なお「全ての勤務時間をテレワークに充てるのは難しい」という場合は、週1〜2日にテレワーク(残りの日は出社)を導入する「ハイブリッドワーク制度」の導入がおすすめです。

続いて、フレックスタイム制度は、1日の労働時間帯を「必ず勤務する時間帯(コアタイム)」と「選択により労働することができる時間(フレキシブルタイム)」に分ける事例が多いです。

導入にあたっては、就業規則(その他これに準ずるもの)において、始業・終業の時刻を従業員の判断に任せる旨を定める必要があります。

【事例2】サイボウズ株式会社|一人ひとりが希望する働き方を実現できる制度

IT企業サイボウズ株式会社は、2018年に従来の人事制度を廃止し従業員自身が働く時間や場所を宣言する「働き方宣言制度」を開始しました。

以前は働き方のラベルを時間と場所を軸として9つに分類していましたが、従業員の希望する働き方を適切に伝えられないという課題がありました。

そこで、新たに「基本的に9時から17時」「日によっては18時退社」「月に3日ほど、在宅勤務」など、働き方を従業員自身が宣言できる制度を導入したことで、離職率が低下しました。

<参照>サイボウズ株式会社|自由すぎる……! サイボウズが最近はじめた新しい「働き方制度」について聞いてみた

勤務時間が不規則な職種は「マルチタスク化」で休日を増やす

医療系・介護系・宿泊業界など勤務時間が不規則な業種・職種の場合は「マルチタスク化」を行うことで、働き方改革につながる可能性があります。

マルチタスク化とは、従業員が行う業務を限定的にしないことで、人手が必要な業務を従業員全員でカバーできるような体制を作ることです。

従業員の負担を軽減できることで、従業員満足度の改善や人手不足の解消にもつながります。

【事例3】株式会社下部ホテル|勤務時間が不規則な職種は「マルチタスク化」で休日を増やす

山梨県にある株式会社下部ホテルは、旅館業のため接客スタッフを中心に朝食勤務後6 時間休憩をはさみ、次は夕食勤務という「中抜け」が多いという課題がありました。

始業から終業までの拘束時間が長く休み時間は変則的です。従業員からは「ゆっくりと休めない」「家族と生活リズムが合わない」などの不満が出ており、社員満足度の低下や、求人を出しても人が集まらない状況が続いていました。

そこで同社では、接客・フロント・内務などこれまで専門のスタッフが行っていた業務を「サービス部」という1つの組織に統合します。

各従業員が複数の業務を行う(マルチタスク化)ことで、中抜け勤務を廃止でき早番、中番、遅番のシフト制で対応する仕組みです。マルチタスク化にあたっては「年間の休日数が増える」という社員のメリットも併せて説明し、協力を仰ぎました。

その結果、社員満足度の改善、残業時間の減少、人件費は前年比300 万円減、従業員の年間休日を10 日程度増加を実現しました。

<参照>中小企業庁|社員のマルチタスク化によって、中抜け勤務が削減し、年間休日数も増加。社員の満足度が向上。

 高齢者採用など、短時間労働者の雇用促進

働き方改革の取り組みとして、短時間労働者の雇用を促進することも挙げられます。

例えば、育児や介護で離職した方や、高齢者、障がい者、持病がある方など、フルタイムで働くことが難しい場合でも、「短時間勤務」の枠で雇用することで、働き手を増やすことが可能です。

【事例4】株式会社味莱|13パターンの多様な勤務時間の設定で人材の定着化

宮城県にある水産加工の企業・株式会社味莱は、健康診断でがんが発見された従業員が働き続けたい意思を示したことをきっかけに、従業員一人ひとりが事情に合わせて働きやすい環境を整備することになりました。

従業員全員が、親の介護など個々の事情に合わせて勤務を継続できるように、勤務時間帯を13パターンに細分化しています。

この取り組みは、病気になった従業員だけでなく、周囲の従業員にも「会社として従業員を大切にしている」というメッセージとして伝わり、人材の定着に繋がりました。

さらに株式会社味莱では、人手不足の解消を目的として、外国人や障がい者を積極的に採用しています。

外国人の従業員に対しては生活習慣の違いなどを丁寧にフォローし、障がい者には個人の特性に合わせたことを担当してもらうことで、雇用が安定しました。

人材定着・雇用の安定によって従業員のスキルが向上し、設備投資をせずに生産量が1.5倍程度に増加する効果が生まれました。

<参照>中小企業庁|働きやすい職場づくりで会社と従業員の信頼関係が向上し、人材が定着。

まとめ

働き方改革が推奨される背景には、「少子高齢化による生産年齢人口の減少」や「働く人のニーズの多様化」などの課題があります。

政府も掲げている「長時間労働の見直し」や「多様で柔軟な働き方の実現」に向けて、一部の企業では、テレワークやフレックスタイム制度、オンラインツールやデジタルワークフローの導入などの取り組みが行われています。

しかし、企業にとっての働き方改革は、メリットだけでなくデメリットもあることが事実です。とくにテレワークやハイブリッドワークの導入は、従業員同士のコミュニケーションが減少したり、勤務管理が難しかったりなどの課題も。

ビジネスメタバースの「ovice」を活用すれば、バーチャル空間を通して「今誰がどんな業務をしているのか」を可視化できるため、コミュニケーションをスムーズに取ることが可能です。下記のページにて、詳しい内容を説明しています。

oviceの特徴や機能について詳しく見る

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