フレキシブルワークは日本社会に求められている働き方のコンセプトです。しかし、そのコンセプトの誕生以来、日本社会には浸透していないのもまた事実です。
この記事では日本でのフレキシブルワークの浸透状況を紹介します。またフレキシブルワークを実現するために取り入れたい制度や働き方、実際にフレキシブルワークに取り組んでいる企業の事例も複数を紹介します。「フレキシブルワークについての情報は断片的で、行動に結びつけにくい」と感じている方に、ぜひ参考にしていただければと思います。
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目次
「フレキシブルワーク」に含まれる様々な制度や働き方
フレキシブルワークとは、特定の取り組みを指す言葉ではなく「時間や場所に自由度のある、柔軟な働き方」の概念であり、それを実現する取り組みの総称とも言えます。まずは、どのような取り組みがフレキシブルワークの実践といえるのか、その一部を紹介します。
リモートワーク(テレワーク)
新型コロナウイルスの影響で日本でも急激に普及したリモートワーク。オフィス以外の場所(自宅やカフェなど)で働くことを指し、インターネットサービスやコミュニケーションツールを活用して、離れた場所から業務を行います。
出社する必要がないため、働く場所が柔軟になるというメリットが享受できる一方で、コミュニケーションが課題になるケースが多く見られます。離れていても十分にコミュニケーションできる環境作りが欠かせません。
フレックスタイム制度
フレックスタイム制度とは、労働者が出勤・退勤時間を自由に設定できる制度です。コアタイム(全員が出勤している必要がある時間帯)以外の時間なら、働く時間を自由に選べます。自分の都合に合わせて働けるため、子育てや介護で時間的制限のある方が働きやすくなるのが魅力です。
近年ではコアタイムを設けない「フルフレックス制度」を取り入れる企業も増えてきました。それぞれのライフスタイルに合わせて働けるため、より柔軟な働き方を実現できます。
コンプレストワークウィーク
「コンプレストワークウィーク」とは、1週間の所定労働時間は変えずに、1日あたりの就業時間を長くして、その分就業日数を少なくする勤務形態のこと。たとえば「1日8時間×週5勤務」のところ「1日10時間×週4日勤務」にするなどして週の勤務日数を圧縮することを言います。
1日の勤務時間は長くなりますが、しっかり休養できるため心身ともに、より深いリフレッシュが得られ、生産性も高まります。空いた時間を、自分の勉強やネットワークづくりに充てることもできるでしょう。
ワークシェアリング
ワークシェアリングとは、2人以上の労働者が1つの職位や業務を分担する働き方のこと。パートタイムや短時間労働で、仕事とプライベートのバランスを保ちやすい環境を整えます。一人あたりの業務負担を軽減し、労働環境を改善する効果が期待されています。
厚生労働省の調査によると、ワークシェアリングは「雇用維持型(緊急避難型)」「雇用維持型(中高年対策型)」「雇用創出型」「多様就業促進型」の4つのタイプに分類することができるとされています。
パートタイム勤務
パートタイム勤務とは、1日や1週間の労働時間を短縮して働くこと。家庭や趣味などの都合に合わせて働く時間を調整できる方法です。フルタイム勤務とくらべて労働時間が短いため、ストレスや負担が少なく、様々な事情で長時間勤務の難しい方でも働けます。
企業にとっても、パートタイム勤務の労働者は柔軟に雇用できるため、繁忙期や閑散期などに合わせて人員の調整がしやすいというメリットが挙げられます。
日本にフレキシブルワークが求められている背景
なぜ日本でフレキシブルワークが求められているのか、その背景を紹介します。
背景①人手不足の解消・活躍の機会の創出
日本では減り続ける労働人口が大きな課題となっていますが、フレキシブルワークはその解決策としても注目を集めています。時間や場所に縛られない柔軟な働き方は、子育てや介護などによりフルタイムで働けない方々にも働きやすい環境を提供できるからです。
単に人材を確保できるだけでなく、これまでは採用できなかった人々を採用することにより、人材の多様性もあげられます。様々な立場の人が一緒に働くことで、これまでになかったアイディアなども期待できるでしょう。
背景②ワークライフバランスの確保
フレキシブルワークを実現することで、従業員のワークライフバランスを充実させることもできます。近年はいかにプライベートを充実させるかという観点で仕事を選ぶ方も少なくありません。「趣味と仕事を両立したい」「育児にもしっかり携わりながら働きたい」という考えも主流となってきました。時間と場所に縛られない働き方が世の中からから求められているのです。
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背景③生産性の向上
フレキシブルワークによって、時間と場所を自由に使えるようになれば、生産性の向上にも寄与します。自分の都合に合わせて働けるため、ストレスや疲れが軽減され、仕事のパフォーマンスも向上するでしょう。企業の立場からは、残業代を削減でき短い時間で成果を得られる点がメリットとなります。
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背景④グローバルなチーム体制の整備
時間や場所に縛られずに働ければ、海外に住む人達とも一緒に働けます。距離はもちろん、時差も気にせず働けるため、海外の優秀な人材も採用の対象になるでしょう。労働人口が減り続ける日本において、海外の人材を雇用することは多くの企業が検討すべき戦略ともいえます。
日本におけるフレキシブルワークの浸透状況
日本ではどの程度フレキシブルワークが浸透しているのか、制度ごと、働き方のタイプごとに見てみましょう。
リモートワーク(テレワーク)の浸透状況
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本でもリモートワーク(テレワーク)が急速に導入されました。東京商工リサーチが企業を対象に実施した調査では、1回目の緊急事態宣言時には17.6%から56.4%へと上昇。その後、緊急事態宣言解除後には低下するものの、2回目の緊急事態宣言時には38.4%に再上昇しました。
また、総務省が発表した令和4年版情報通信白書によると、テレワークを利用したことがあると回答した人の割合は、米国・ドイツでは60%弱、中国では70%を超える一方、日本では30%程度にとどまっています。
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フレックスタイム制度の浸透状況
日本では1988年からフレックスタイム制が導入されています。厚生労働省では毎年、日本企業における就労条件を把握するために「就労条件総合調査」を実施しており令和4年度の調査では、8.2%という結果になりました。前年の6.5%に比べると、わずかに浸透していると言えるでしょう。
コンプレストワークウィーク浸透状況
具体的なデータはありませんが、日本でも「週休3日制度」を取り入れる企業が見られるようになりました。休日が増えたことで、子育てがしやすくなったり、副業を始められたという方もいるようです。
一方で、制度を取り入れたものの、先輩や同僚が週5日働いている中では週休3日にしづらいという声も。また、週4日勤務では、保育園に入れるための「保活」で不利になるなど、日本で浸透させるにはまだまだ課題がありそうです。
ワークシェアリングの浸透状況
こちらも具体的なデータは発表されていませんが、日本で取り入れる企業が徐々に見られるようになりました。しかし、1980年代からワークシェアリングが普及していた欧米諸国に比べれば、まだまだ定着したとは言えない状態です。
その理由としては、業務フローの見直しに伴う一時的な生産性の低下、雇用条件の最適化、副業規定の明確化など、企業がクリアしなければならない壁がいくつかあるからです。
一方で最近は「タイミー(Timeee)」のようにスポット的に働く人とマッチングできるアプリが増えているため、ワークシェアリングの普及を加速させていくかもしれません。
パートタイム勤務の浸透状況
2023年発表の総務省統計局による調査によると、パートタイム労働者は近年著しく増加し、2022年には約1,474万人に達し、正規・非正規職員・従業員数である5,689万人の約4分の1を占めるようになっています。パートタイム労働者の約7割が女性ですが、男性のパートタイム労働者も増加傾向にあります。
日本企業におけるフレキシブルワークの例
次に、日本企業におけるフレキシブルワークの具体例をご紹介します。
事例①oVice社のフルリモートワーク
oVice株式会社はフルリモートワークによって、フレキシブルワークを実践しています。全国各地からバーチャルオフィスに出勤しているので、勤務場所についての自由度がとても高くなっています。
2023年現在、全社員がフルリモートで働いており、ワーケーションを活用している社員も少なくありません。
バーチャルオフィスを活用することで、居住地に関係なく、スムーズにコミュニケーションをとって連携しながら事業を展開しています。
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事例②伊藤忠商事の朝型フレックスタイム制度
伊藤忠商事は、2013年10月に「20時以降、原則残業禁止」「8時以前の朝型勤務」をスタートし、2022年5月より「朝型フレックスタイム制度」を導入しています
午後8時から午後10時までの勤務は「原則禁止」、午後10時から翌日午前5時までの勤務を「禁止」。逆に午前5時~午前9時は深夜勤務と同じ割増手当が付くようにし、さらに午前8時までに出社した社員には軽食を無料で提供するようにしました。
この取り組みを通じて、より多く働きたかったり働く必要があったりする場合に、終業後の残業ではなく、朝に仕事をするようにと促しています。フレックスなので強制ではありませんが、残業分の時間を朝にスライドすることでメリットが享受でき、満足度も高まっていると考えられます。
事例③ファーストリテイリングの週4日勤務制
ファーストリテイリングは、2015年から週休3日制を導入しています。これは、変形労働時間制を用いた、1日10時間×週4日の勤務で、通常のフルタイム勤務(8時間×5日=週40時間)と同額の給与を支給する制度です。
しっかり働きながら、家族と過ごす時間を増やしたり、自己啓発に時間を費やすことが出来るので、仕事もプライベートも共に充実させられると社員から好評のようです。
<参照>ユニクロ|週休3日制とは?
事例④エス・アイの多様就業対応型ワークシェアリング
株式会社エス・アイは、20年以上前から多様就業対応型ワークシェアリングを導入しています。複数の従業員で業務を共有化することで、技術力の孤立化、無駄な残業の発生、集中力の低下などを防いでいます。
他にも出勤・退勤時間を個人で自由に設定することができる自由出勤制度を導入しました。
日本にフレキシブルワークを浸透させるためには?やるべきこと
今後、日本社会において、フレキシブルワークを浸透させるために必要なアクションを整理します。
リモートワークへの対応
本当の意味でフレキシブルワークを実現するには、リモートワークの導入は欠かせません。ただし、ツールを導入してIT環境を整えただけではフレキシブルワークとはいえないので、社内規則を変え、社内文化の変革にまで着手する必要があります。
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働き方改革
休暇制度を含めた働き方改革もフレキシブルワークには必要です。フレックスタイムによって働く時間を自由にするのはもちろん、男性の育休などの休暇制度の充実も欠かせません。制度を用意しても使われなければ意味がないため、実態を把握し、しっかり活用されるような改善やはたらきかけも大切です。
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マネジメント体制の整備
フレキシブルワークには、離れた場所でもメンバーを適切に頼りながら働けるよう、マネジメント体制の整備も必要です。社内のコミュニケーションを促進する雑談や、1on1といった取り組み、就業環境や職務内容といった実態から見て納得感のある評価制度や、成果の可視化なども行いましょう。
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オフィス環境の見直し
リモートワークも重要ですが、出社しても働きやすいようオフィス環境の見直しも重要です。「出社日だから仕方なく出社する」ではなく、自ら出社したくなるようなオフィス環境を整えたり、オフィスでしかできない仕事や体験は何なのかを改めて考察し、従業員や会社にとってのオフィスの価値を体現した環境を実現しましょう。
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日本の働き方改革の課題を“フレキシブルワーク”が解決
フレキシブルワークは、日本の直面する様々な課題の解決策となる可能性があります。そして、海外に比べれば遅れはとっているものの、今回紹介したように日本でもフレキシブルワークが広がり始めています。
しかし、フレキシブルワークを取り入れ同時に事業の成長を保つには、注意すべき点もあります。既に導入に成功した企業からヒントを得て進めることも、一つの良い方法でしょう。
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