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「Zoom出社義務」背景に見る、ハイブリッドワークの効果と現代の働き方

(執筆:oVice, Inc., Head of Product Marketing/Go Harada)

日本経済新聞は今日、日経MJが2023年8月23日に報じた米国のWeb会議システム「Zoom」の運営会社、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの出社方針に関わる報道を改めてオンラインで公開した。

同紙では、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズがオフィス周辺に住む従業員に週2回の出社を義務づけた事に触れながら、米国IT企業のコロナ禍で高まったオンライン需要が、コロナ収束とともに効率性や生産性の観点でオフィス回帰に動き、その結果ハイブリッドな働き方へと動いているのではないかと示している。

日本経済新聞|米Zoom、従業員に出社義務 生産性向上迫る

“出社回帰”は当然の流れ?

2023年8月の同社の発表以来「あのZoomですら出社前提?」というような論調も日本社会には多かったが、出社回帰の実際は、こうしたイメージとはやや異なるのではないかと推測する。

どういうことかというと、多くの米国IT企業の場合、出社前提の従業員がコロナ禍にリモートワークになったので、今夏の出社回帰のムーブメントとは「コロナが収束したので、このような人々を対象に週2回程度は出社する方向に戻しますよ…」ぐらいのモノなのではないかと考えている。

日本でも同様な思考プロセスがあるのかもしれない。

我々のお客様の声を聞くと、「5分で済む会話をスケジュールに入れて確認するのは忍びないと思っていたら効率が落ちてしまった」であるとか、「多忙な方を相手とした場合、手が空いたであろう時にすかさず話を聞きに行く必要があるため、相談を受けがちな上席の方々はリモート勤務が難しい」という話をよく聞く。

このような課題を解決するために「出社する」という選択肢が出てくるのだが、弊社のお客様がそのような企業と異なるの点が一つある。それは出社せずにこうした課題を解決している点である。少なくない日本の企業が、こうした「同じ空間にいないと効率が悪いやり取り」をovice上で実現しているのだ。

出社「週2回」のメリット 

私が非常に興味深いなと思ったのは「週2回程度」の出社という部分である。というのも、実際に我々のお客様でハイブリッドワークを実施して定着しているお客様の多くが、週2回程度のリモート勤務を実施しているのである。

実は、週2回程度のリモートワークを実施するいわゆるハイブリッドワークは最も生産性が高い働き方であるという論文もある。

この論文には、130名の職員を対象に、9週間にわたって「フル出社」「フルリモート」「ハイブリッド」の3タイプの働き方を実施してもらい、メールの送受信数や新規性などから生産性を判断、それぞれの働き方の生産性を評価するという実験の結果が記されている。

このフィールド実験では、週に2回程度が最も生産性が高いという結果が出ている。さらにハイブリッドワークは、同僚から孤立する心配がなく、ワークライフバランスを高めることができるという考察も付けられている。

<参照>Harverd Business School|”Is Hybrid Work the Best of Both Worlds? Evidence from a Field Experiment”

この論文は、これまで何度も様々な記事になっている「従業員や企業が望む新しい働き方」というような主観的なモノではなく、客観性を持って働き方を数値化したことが興味深いと私は思っている。

またこのハイブリッドワークという新しい働き方は、会話による発散と議論による収束を集中して繰り返せるところに強みがあると思っており、これが生産性の高さに結びついているのではないかと考えている。

▲会話による発散と議論による収束

週2回のリモートワークを実施することで、首都圏でどの程度コストインパクトがあるかを私自身で試算してみたことがある。従業員が100名の企業であれば年間で1500万円程度の削減ができ、これを他の人的資源投資に回せるという試算結果にたどり着いた。

通勤費だけでも相当なコスト削減になり、二酸化炭素排出量や電力の削減などESG経営目線でも非常に効果がある施策ではないかと考えている。

▲企業ポートフォリオの比較筆者作成

出社を否定する必要はない

oVice社は約100名の社員が原則フルリモートだが、最近では定期的にオフサイトミーティングなどを実施し始めており、それ以外にも社員同士が関西会や九州会などと称してオフラインで会う機会を作ったりもしている。完全にフルリモートでは得られない出社、リアルに会うことの重要性も理解しているからだ。

実際に会うことによって得られるメタ情報は多くあり、これが多くの企業での出社への執着であるのでなないかと私は考えているが、一方で我々はコロナ禍を通してリモート勤務による集中できる空間や時間を得ることが出来る事も知ってしまった。なにより出社に費やす時間を無視できるというのはワークライフバランスを考える上でインパクトが大きい。

多くの企業にとってフルリモートに切り替えるのは大きな決断だ。しかし、現状出社がメインの企業であっても、たとえば「週2回程度のリモート勤務」といった頻度であれば、比較的試しやすい回数ではなかろうか。このように小さな変化から試してみるのもおすすめだ。

そして出社とリモートを組み合わせた勤務スタイルを取り入れるなら、どのように組織のメンバーが会話や非言語のコミュニケーションを行うのかに注意を払うといいだろう。議論だけではない会話もできるプラットフォームとして、oviceを試しに利用してみるのは、新しい働き方の模索になるのではと思っている。

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