新型コロナウイルス蔓延により、幾多と発令されて来た緊急自体宣言が2021年10月1日、「全面的に」解除された。観光業や飲食業など、これまで虐げられてきた産業界が通常営業に湧いたのは喜ばしいことではあるものの、実は一般企業においても、これはこれで新たな試金石に晒されている。
テレワークを続けるか、それともオフィスに戻るか
緊急事態宣言解除のニュースが入った午後、ある企業のマネジメント会議でのこと。各種アジェンダが片付き、「他に質問などあれば…」という促しに対し手があがった。その質問とは「緊急事態宣言が解除されますが、弊社はこのままテレワークを続けるのでしょうか」というものだった。
テレワークによる人の流れの減少は、そもそも「7割減」と『お上』から押し付けられた達成目標だった。昨春以降、各自治体ではテレワーク導入促進に向け、中小企業向けに助成金を設定。もともと「テレワーク」などの概念が希薄な製造業も、現場が介在しない部署については出社せずに業務遂行可能な体制を構築した企業も多かった。
これが2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法案」と相まって、「働き方改革」と「テレワーク」は同時に、そして急速に推し進められてきた。しかし、新型コロナ禍によるこの1年半において、日本人の「長時間労働=美徳」という概念が覆されたのかは、判断の難しいところだ。
日本人は、お上からの司令について逆らうことのない従順な民族なのかもしれない。「7割減」のお達しに対し、中にはNTT docomoのように「出社禁止」を発令し、むしろこれを機会に働き方改革を推進してしまおうという戦略を進める大企業も少なくない。もちろん、これは通信会社という、テレワークを推進すべき立場だからということもあるだろうが、ユニ・チャームのように無縁だった企業も同様の方向に舵を切っている。
むしろ、宣言解除によって右往左往しているのは、やはり中小企業なのかもしれない。宣言が解除されたものの、出社についてお上から指針を示されたわけではない。よって小さな企業では、毎度月末に「来月はどうしよう」と都度判断している会社も少なくないと訊く。この際、政府が「リモート50%が指針」など取り決めてしまえば、こうした企業にもわかりやすいだろう。働き方改革関連法案にテレワークの数値目標を入れてしまえば、決断力に欠ける経営者も助かるかもしれない。
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働き手が減るこの日本こそ、地方でも働けるテレワーク環境を整えるべきだ
一方、日本の少子化による人口減少は待ったなしと迎えている。
総務省の統計によると2000年代を境に、日本の生産年齢人口はすでに減少に転じており、2060年には5,000万人を割り込む推計となっている。北海道や九州では、この頃までに人口の50%減が見込まれ、地方における労働人口の確保は喫緊の課題だ。
先日も四国のある自治体の方と直接会話したところ、それは非常に現実味を帯びた物語だった。若者は大学進学などを契機に四大都市圏に流出。その地で就業してしまうケースが圧倒的に多いため、自治体そのものに勤務するようなホワイトカラー人口は極端に減少していると説かれた。
よって政府は「地方活性化」と声を大にするのだが、特に地方の市町村レベルでは、日々の業務で手一杯で、新しい活性化の企画を立てられるような人員を割くことができない状況であり、「地方の実情を理解していない」とも言われる。
こうなると緊急事態宣言の有無にかかわらず、国策としてリモートワークを促進し、従業員の住居拠点が地方であっても問題ない新しい生活スタイルの変革を促すべきだろう。
ダイヤルアップでネット料金がかさむような時代ではない。「5G元年」と呼ばれた時代も過去のものとなり、すでに通信の世界では「6Gの到来がもたらす生活の変化」が先にんじて議論される日がやって来ている。
今や、若手は在宅勤務がメイン。始業からリモートワーク・ツールをオンラインで接続したままにしており、ランチ時も雑談しながら、勤務時間を共有するのも珍しい時代ではなくなって来た。こうしたタイプは、楽しく談笑しながら、それぞれの自宅から仕事に勤しんでいる。この輪に加えてもらえない私のような中年だけが、メッセンジャーなどで指示出ししているという悲しい現実については忘れてもらいたい。
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テレワーク環境から取り残された白シャツ軍団
すっかり出勤時に電車に乗らない習慣が見についてしまった私が時折、通勤時間に利用するともっとも驚くのは、乗客の服装だ。ほとんどの男性客が、上は白いシャツ、下はダーク系のズボンと、まるで「ユニフォームか!」と思わせるような格好である。これに肩掛けカバンが加われば完璧だ。まさに「白シャツ軍団」!これ以外の服装の日本人男性はこの世に存在しないのではないか思わせる光景…。
事務所で呟いてみたところ、「クリエイティブ系の職業は、このコロナ禍でとっくにテレワークになってますから、色付きシャツ着用の男性はもう通勤なんてしてませんよ。あとは白シャツしか許されない区役所の窓口業務のようにエッセンシャルワーカーか、『コロナ禍でも出社だ!』という融通の利かない会社の社員だけが通勤しているわけです。そんな昭和の化石のような会社では当然、白シャツしか許されないでしょう」という考察だった。
withコロナ、もしくはコロナ終息後、リモートワークを含めた働き方改革により、日本社会は変革するのか。この推移を観察すると興味深いだろう。