(初回掲載日:2023年5月24日)
リモートワーク採用企業は、いわゆる「コロナ禍」と呼ばれた、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う対策として大幅に増えました。しかしポスト・コロナという空気感が訪れると、オフィス出社回帰という現象が見られました。採用の動機が不可抗力だったとはいえ、場所や時間に自由度のある、という新しい働き方に初めて接したことで、そこにメリットを感じた人も多いでしょう。そのため、経験した新しい働き方を忘れがたいと感じることも自然です。
時間や場所を働き手が柔軟に選択できる制度を「フレキシブルワーク」と呼びます。リモートワークは、フレキシブルワークの要素の一つですが、有用性が広く認知された一方で、様々な課題も指摘されています。その一つが、オフィスのあり方です。フレキシブルワークという新しい働き方において、オフィスはどのような役割を担うのでしょうか。
本記事ではフレキシブルワークを実現していく中で、オフィスにどのような機能が求められ、どのように解決を図ることができるのかを、紹介していきます。
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コロナ禍前後におけるオフィスの変遷と現状
まずは、コロナ禍前後を通じて、オフィスの担う役割がどのように変化していったのか見ていきましょう。
ステップ(1) フレキシブルワークが浸透した
コロナ禍の到来によって、最初に生じた働き方の変化がリモートワークの普及です。急な変化に対応できず多くの課題が発生しましたが、徐々に課題も解決され人々の意識も変わっていきました。
それまで「仕事はオフィスでするもの」という意識から「時間や場所に選択肢がある」という「フレキシブルワーク」の考え方が広がっていったのです。
ステップ(2) オフィスの縮小や移転が相次ぐ
フレキシブルワークの浸透によって増えたのがオフィスの縮小や移転です。出社する従業員が激減したことにより、これまでのように物理的な執務スペースを広く確保しておく必要が減り、オフィスをコンパクト化する企業が目立ちました。
中には自社オフィスを持たずに、コワーキングスペースやバーチャルオフィスを活用しながら経営している企業も現れました。多くの企業がオフィスの価値やあり方について見直したのではないでしょうか。
ステップ(3) オフィス回帰の傾向が強まる
未知の危機だった新型コロナウイルスに対する社会的な知見が蓄積されると共に、オフィスに出社する人が徐々に増えていきました。オフィスビルの稼働率は、2020年からの下降基調が、2023年に初めて上昇基調となりました。
多くの企業や従業員がテレワーク・リモートワークを一通り経験した中で、チームが離れて仕事をすることの課題も浮き彫りになりました。
特に、テレワークで課題として浮上したのがコミュニケーションです。例えば、東京都の「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)報告書」によると、テレワークを導入した企業の回答のうち、「社内コミュニケーションの減少」がもっとも高い課題とされています。こうしたテレワーク中の課題に悩む企業が存在する中では、オフィス回帰の流れが生じるのも無理はないでしょう。
ただし、毎年の調査に対する回答の推移を見てみると、令和4年調査の「82.2%」に対し、令和6年調査では「69.4%」に減少していることから、テレワーク制度を運用してきた中で、解決策を見出した企業もあることが覗えます。
ステップ(4) 新たな働き方とオフィスの役割を模索
しかしオフィスに求められる役割は、コロナ禍前と同じではありません。かつては「出社が前提」でオフィスが存在していましたが、現在は「出社してもしなくてもいい」という、ハイブリッドワーク制度を展開する企業が増えたからです。そのため、出社した人もしていない人も、同じようにパフォーマンスを上げるにはどうすればいいか。今後のオフィスにはそのような問題が突きつけられているのです。
フレキシブルワークの課題
働く時間と場所に自由度を持たせるフレキシブルワークは、注目が集まっているものの、様々な課題に不安を感じて二の足を踏んでいる企業も少なくありません。フレキシブルワークにどのような課題が生じているのかみていきましょう。
課題(1) コミュニケーションの難しさ
リモートワーク下でもコミュニケーション課題は問題視されていましたが、オフィスに人が戻り始めた今、問題はさらに深刻化しました。それは「出社した人」と「していない人」のコミュニケーション格差が起きてしまうこと。
出社している人同士で盛んにコミュニケーションが行われることによって、出社していない人たちと壁が生じたり、情報共有に漏れが生じてしまうリスクがあるのです。どこで仕事をしていても同じような報連相を基本としたコミュニケーションができる環境でなければ、本当の意味でのフレキシブルワークを実現することはできません。
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課題(2) チームマネジメントの難しさ
フレキシブルワークでは、チームマネジメントも難しくなります。コミュニケーションが難しくなれば、タスクの進捗確認や報連相も難しくなるのです。離れていてもチームのパフォーマンスを上げるためには、ツールなどをうまく活用する必要があります。
また、ツールのセキュリティ管理を徹底するのもチームマネジメントの一つ。ツールを活用して生産性が上がっても、情報漏洩などが起きては意味がありません。セキュリティツールを導入するだけでなく、安全な使い方を徹底するためセキュリティ研修なども行いましょう。
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課題(3) 社会的孤立の問題
コミュニケーションが難しくなれば、チームのパフォーマンスが下がるだけでなく、メンバーたちが社会的に孤立してしまうリスクにも繋がります。特に外出する機会のない人や独身の人は、孤立が原因でメンタルを崩してしまう可能性もあるのです。
フレキシブルワークを行うには1on1などを実施して、メンバーひとりひとりの状況を把握できる状態を作りましょう。メンタルの不調もいち早く気づいて対策できれば、大きな問題にならずに済むはずです。
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今後のフレキシブルワークとオフィスの展望
フレキシブルワークは、直面する課題を解決しながら実践するということもあるでしょう。課題解決のためにはどのような取り組みが求められ、展開されるのでしょうか。
解決策(1) ハイブリッドワークスタイルの普及
コロナ禍によって「出社」から「リモートワーク」への急激な変化が起きましたが、その後、それらを両立した「ハイブリッドワーク」が見られるようになりました。人によって自宅とオフィス、どちらが仕事がしやすいか違いますし、日によっても違います。
仕事の種類や体調、家庭の事情などによって出社するかしないか選べるハイブリッドワークは、フレキシブルワークの一形態です。ハイブリッドワークであれば必然的に、同じチームのメンバーでも働く場所が異なる、という状況が起こります。すると、場所の違いによるコミュニケーションのしにくさを解消できるツールの導入が重要になります。オフィスとそれ以外の環境がオンラインに集約される、デジタルツインのような考え方や取り組みが今後広がっていくかもしれません。
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解決策(2) オフィス空間の再構築
ハイブリッドワークの推進は重要ですが、単に「在宅でも出社でもいいですよ」と言ってもうまくいきません。従来の固定デスクや個室型のレイアウトのままハイブリッドを始めても、無駄が多く組織がうまく機能しません。
より柔軟な働き方をサポートするために、オフィスはコラボレーションや創造性を促進するスペースという役割が求められます。どのようなオフィスが最適なのかは業界や社風によっても変わり、これから多くの企業が模索していくでしょう。
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解決策(3) 企業文化の変革
ルールや環境をいくら整えても、企業文化が変わらなれば本当の意味でのフレキシブルワークは実現しません。「仕事はオフィスでするもの」という文化が残っていては、いくら自由に働けるルールがあっても機能しないでしょう。
フレキシブルワークに適応したオフィスや制度を整えていく上で、社員の意識改革も同時に行っていく必要があります。たとえば経営陣からフレキシブルを推進していく旨のメッセージを頻繁に発信したり、社員に働き方に関するインタビューを行ったりして、本気で取り組んでいる姿勢を見せましょう。
フレキシブルワークを前提に、オフィスの価値を問い直す
リモートワークとオフィス出社回帰という経験を経て、多くの企業が「これからのオフィス」について考える機会があったことでしょう。そこで合わせて考えたいのがフレキシブルワークです。フレキシブルワークは日本社会において、働き方改革の一つの解となる様式です。今後のオフィスには、フレキシブルワークを前提とした要素が必要となるでしょう。


