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離職防止のアイデア10選。離職率改善事例も紹介

従業員の離職は、企業が解決したい課題の一つです。従業員の離職には、採用・教育コストの増大や、従業員のモチベーションの低下など様々なデメリットがあります。

新年度が始まったばかりですが、4月に入社した新入社員が、1か月もたたずに離職してしまう現象も伝えられています。

少子高齢化により人手不足の今、企業は新入社員に限らず、ベテラン社員も当然離職は防止したいものです。この記事では離職防止のためのアイデアを紹介します。

<参照>「きのう退職届出してきた」入社したばかりの新入社員がなぜ?|NHK

離職防止のアイデア【1】働きやすい職場づくり(人間関係編)

従業員の離職を防止するためには、働きやすい職場づくりが有効です。働きやすい職場の実現には多くの要素が関係しています。

まずは、職場の悩み事や離職の原因として良く上げられる「人間関係」の側面から、2つのアイデアを紹介します。

良い人間関係 ー対人関係コミュニケーションのスキルを向上させるー

人間関係が良ければ、職場のストレスや悩み事の大部分が解消されます。ストレスが減るだけでなく、職場での時間が充実し、より良い職場環境が実現するでしょう。

職場で良好な人間関係を構築できるかできないかは、従業員がこれまでの環境で自然と身についてきた物の見方や性格に全て影響されてしまうものだと思う方もいるかもしれません。しかし実はそうではなく、コミュニケーションの方法を学ぶことで、良好な対人関係は実現します。

たとえば「アサーティブコミュニケーション」は、職場での生産性を高めたり、ストレスを低減させたりできるコミュニケーション方法です。

アサーティブコミュニケーションは、相手を一方的に否定せず、自分の意見をきちんと伝える態度を指します。研修やトレーニングによってアサーティブコミュニケーションを身に着けることは、良い人間関係構築の助けとなります。

反対に、否定的な態度や言葉づかいをしがちだったり、逆に自己主張ができなかったり相手を優先してしまったりするコミュニケーションは、アサーティブの対極にあるコミュニケーション方法です。このような態度や行動は、職場での人間関係を悪くしてしまいます。

<参照>アサーティブ・コミュニケーションとは|リクルートマネジメントソリューションズ
アサーティブ・ジャパン

心理的安全性を高める

心理的安全性は、2016年にGoogleが生産性の高いチームに心理的安全性が重要であることを発表して以降、注目されているキーワードです。心理的安全性とは、自分の考えや気持ちを安心して表明できると感じる心の状態であり、心理的安全性のある組織は働きやすい職場といえます。

心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。

「効果的なチームとは何か」を知る|Google re:Work

このような心理状況でいられる職場であれば、前向きに業務に取り組むことによる充実感や、組織における自己効力感も高まり、不満を心にためてしまうことも少ないでしょう。結果、離職を動機付けてしまう感情が生まれにくくなると考えられます。

心理的安全性を確保する方法はいくつかあります。前述のアサーティブコミュニケーションを基本に、雑談を含むコミュニケーションを重ねることは、相手への信頼醸成の機会となるはずです。

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離職防止のアイデア【2】働きやすい職場づくり(制度・条件編)

前項では、心理的に「働きやすい」職場の作り方について見てきました。しかし、心理的に満たされていても、物理的に負荷の高い職場であれば離職が起きてしまいます。

ここでは、組織の制度や雇用条件の面から、どのような離職防止効果のある取り組みが可能かについて、4つのアイデアを紹介します。

休暇や給与などの条件を良くする

たくさん休暇があり、手に入る収入が多ければ、従業員はそのような職場を辞めたいとは思わないでしょう。休暇を増やしたり給与を上げることは離職率の改善に役立つ可能性があります。

このような従業員にとって望ましい条件を実現するためには、利益率の高いビジネスを継続したり、生産性を上げたりすることが必要となります。

生産性とは、労働力や機械設備・エネルギーなどの投入量に対する、生産物の割合のことです。投下するリソースを削減しても、そこから得られる成果物が減らなければ、生産性は向上したといえます。

ここでいう投入されるリソースには、時間も含まれます。このように考えると、仕事のスピードを上げるための取り組みは、離職防止にも役立つ重要なアクションだととらえることができます。なぜなら、生産性の向上を通じて、休暇や給与といった雇用条件の改善を実現することもできるからです。雇用条件の改善を目指す際には、仕事のスピードの改善についても検討すると良いでしょう。

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柔軟な働き方を可能にする(ライフステージの変化があっても継続して働ける職場)

働きやすい職場であるかどうかは、柔軟な働き方が可能であるかどうかが大きく関係してきます。就業場所や時間に厳しい決まりがある場合、例えば幼い子供がいる、高齢の家族がいるといった方にとっては就業することが不可能になってしまいます。

たとえば、リモートワークを取り入れ在宅での勤務を可能とすることで、通勤時間にかかる時間が不要となります。これにより、8時間のフルタイム勤務をしながら子育てができるようになるという方も出てくるでしょう。

ライフステージに変化のあった方は、それ以前と同様の場所や時間で就業することが難しいという問題に直面しがちです。リモートワークのような柔軟な働き方ができることで、場所や時間の条件を理由に離職する必要がなくなるため、結果として従業員の離職率を改善できる可能性があります。

時間については、フレックスワークや時短により、柔軟な働き方が実現します。

福利厚生で満足度を高める

給与や賞与とは別で、企業が従業員に与えられるメリットには、福利厚生があります。

福利厚生で提供されるサービスの種類は、食事や通勤、住宅、自己啓発にかかわるものなど様々です。しかし、企業にあまり潤沢な資金がない場合にはこのような福利厚生は整備できないという場合もあるでしょう。

そのような場合には、特別休暇を福利厚生として提供するというアイデアがあります。

その場合も年次有給休暇に加えて、有給での休暇を付与することになるため、全くコストがかからないというわけではありません。しかし、けがや体調不良の際に取得できる「シックリーブ」や、「お誕生日休暇」などを整備すれば、2つの側面から従業員は企業に対して良い印象を持ちます。そして、そのような組織においては離職したいという気持ちは抱かれにくいでしょう。

良い印象が生まれる理由の一つは、このような休暇は、企業が従業員の心身の健康に気を配っているというメッセージとなるからです。もう一つの理由は、こうした休暇があれば従業員は年次有給休暇を消化することなく、心身のケアのための時間やプライベートの時間を確保できる点です。「仕事のために人生を犠牲にしている」という感覚を持ちにくくなります。

健康を維持できる業務内容・就業条件

肉体的な負担が大きすぎることも、離職を検討する大きな要因の一つです。肉体的な負担は、健康を損なうこともあります。

肉体的な負担を軽減する方法には、業務の機械化や効率化、残業を減らすことや、通勤せずにリモートワークを取り入れることなどがあります。

首都圏であれば片道1時間、往復2時間の通勤は珍しくありません。さらに長い時間を移動に費やしている人もいるでしょう。通勤の負担を解消しようとした結果、離職を検討するという人も世の中にはいます。通勤の負担はリモートワークを取り入れることによって軽減することができるので、リモートワークを検討できる職種の場合は検討すると離職率の改善に効果があるかもしれません。

通勤だけでなく、業務負荷を減らす業務効率化の実現も、離職率改善が期待できる取り組みといえます。

離職防止のアイデア【3】業務に対しモチベーションがあがる環境

人間関係や雇用条件と同じく、離職の動機に大きな影響を与えるのが「業務に対するモチベーション」です。ここでは、業務のモチベーションを高めたり維持したりするのに効果的な方法のアイデアを4つ、紹介します。

1: 業務においてやりたいことができる

企業において、従業員本人が「やりたい」と思っていることを実行できているのならば、その人の仕事に対する意欲は自然と高くなります。企業は、まず従業員本人の「やりたい」ことが何なのかを正確に把握しましょう。

また、その人とやりたいことと能力が乖離している場合には、どのようにしてそのギャップを埋めることができるのかを一緒に検討するのもよいでしょう。

2: キャリアパスへの不安を解消する

キャリアパスとは、ある企業で目標とする職位や職責に到達するために、どのような経験をどのような順序で積んでいくかの計画のことです。

キャリアパスにおいて、指標となるスキルや経験がクリアになっていないと、従業員は自分の将来について具体的にイメージできません。その結果、その会社で継続して勤務することへのモチベーションが保てなくなることも考えられます。

もし自社にキャリアパスが設計されていないのであれば、自社で勤務することでどのような経験を積むことができるのかを整理して示し、上記のようなモチベーションの低下を解消しましょう。

3: 納得感のある評価制度

一生懸命働き、実績を上げても、それが評価されなければ当然業務へのモチベーションは低下します。評価が不満で退職を検討する人は後を絶ちません。

評価は、公平性・客観性・透明性をもって行い、評価される側へのフィードバックを通じて成長を促し、納得感のあることが大切です。このような人事評価システムが確立されていれば、評価に対する不満から離職するような事態は防げるはずです。

公平性を確保するためには、評価を一面的に行うのではなく、360度評価を取り入れることが有効な場合もあります。客観性や透明性の担保には、明確な評価基準が設定されているとよいでしょう。

4: 感謝や称賛の文化

ポジティブなフィードバックである感謝や称賛は、従業員のエンゲージメントを高めます。なぜなら、感謝や称賛は、誰にも気づかれていなかった従業員の努力や良き振る舞いを可視化する行為だからです。

一対一で直接伝えることも良いですが、社内チャットツールに感謝や称賛を書き込むチャンネルを用意して、全社員から見える形でメッセージが投稿される形をとるのもおすすめです。

離職率改善のポイント

上述のアイデアが離職率改善に有効なのは、仕事をやめたい理由を見れば歴然です。2024年2月に、18歳~49歳の男女2,510人を対象に行われた「退職に関するアンケート調査」では、仕事を辞めたい理由は以下のグラフのようになっています。

 

<出典>【2,510人の社会人に聞いた!】仕事をやめたいと思ったことはありますか?|ベンナビ 労働問題

1位は「給与が少ないから」、2位は「職場の人間関係が悪いから」、3位は「やりがいが感じられないから」となっています。

4位以降に並ぶ原因も、①業務上の心理的困難、②健康やプライベートを保てない、③業務に対するモチベーションの保持や向上ができない、のいずれかに分類できる原因が並びます。先に挙げた10のアイデアに限らず、このような観点で従業員の就業体験を確保できると良いでしょう。

▽従業員の就業体験(PX)を、バーチャルオフィス導入で改善した事例
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離職率改善・良い効果を発揮した企業取り組み事例

最後に、離職率を改善したり、離職率に良い効果を発揮したりした企業の取り組みについて、事例を紹介します。

事例①サイボウズ

サイボウズ株式会社は東京都に本社を置くソフトウェア開発会社です。現在では多様な働き方と良いチームワークで有名な同社ですが、2005年には離職率は28%と過去最高を記録していました。

同社は離職率の高さを課題ととらえ、組織や評価制度を見直し、ワークライフバランスに配慮した制度や、社内コミュニケーションを活性化する施策を実施。その結果、2008年には10%以下となり、2012年以降は3~5%にとどまっています。

厚生労働省の「令和4年 雇用動向調査結果の概要」によれば、産業別の離職率では「情報通信業」で11.9%であり、こうした数字と比較しても同社の離職率は非常に低く保たれているといえるでしょう。

<参照>
ワークスタイル|サイボウズ
令和4年 雇用動向調査結果の概要|厚生労働省

事例②アウンコンサルティング

アウンコンサルティング株式会社は、海外向けSEOや海外向けWeb広告運用などのWebマーケティング支援を手がけるグローバルな組織です。2020年2月以降、対象者を拡大しながらフルリモートワークに移行していますが、その中でコミュニケーション課題を感じるようになりました。

その課題を解決するため、バーチャルオフィスのoviceを導入しました。その後、oviceの利用頻度が高いチームは、生産性が高く離職率も低いことがわかったため、今後も全社への定着を図っていくそうです。

▽同社のエピソードについて、もっと詳しく知る
BCPや「働きやすさ」重視でリモートに。生産性向上や離職防止といった効果も|ovice

まとめ

離職率に課題がある組織の場合、離職が起こりやすい職場環境であったり、離職が起こりやすい心理状態が従業員間に広がっている可能性が高いです。

こうした状況において、今回紹介したような離職防止のアイデアは、一度実施するだけでは効果は期待できません。離職防止に効果のある態度や制度を継続して実行することで、離職率の低い職場環境を構築することができます。

ただし、このように、環境やマインドに変化を起こす際には、抵抗感を抱く方も少なくありません。良い変化を起こすには時間がかかるものだと心構えをして、効果が出るまでじっくりと取り組むことが大切です。

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山浦雅香
1985年生まれ、茨城出身、東京在住。2007年北京に一年留学。ライター・編集。翻訳や中国向けSNSコンテンツ監修、中国VR展示会アテンドなども。