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緊急事態宣言解除でも色褪せない「オンライン飲み会」の新時代

東京都内でも10月25日に緊急事態宣言解除からの時短要請全面解除と飲食店への営業自粛解除がなされ、街へ活気が戻ってきた。そろそろ師走の声も聞かれる頃となり、人情として「2年ぶり」の忘年会や、さらには新年会などはりきって企画するビジネスマンも多いかもしれない。

ユヴァル・ノア・ハラリの世界的ベストセラー『サピエンス全史』によると、ホモ・サピエンスは集団で行動できる能力を身に着けたからこそ、人類として発展を見たとされている。人は集まりたがる生き物であり、交流してこそ、新しい文化を生み出す知力を発揮する。そう考えると集合体としての人類を「抑制」する新型ウイルスは、まさに天敵だ。

しかし、ウイルスによる席巻という時代においても、人間は新しいコミュニケーション手段を生み出した。言うまでもないオンラインを活用としたコミュニケーションだ。よって、いわゆる飲み会についても「オンライン飲み会」が登場したのは極めて自然な流れ。「昭和40年男」として、ノミニケーションは「リアルで展開されてこそ意義がある!」と力説しては来たものの、時代の波にも、新型ウイルスにも勝つ自信はない。歓迎会や送別会のニーズも高まり、社内でのコミュニケーション不足も指摘される中、若いメンバーに混じって「オンライン飲み会」に参加する運びとなった。

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社内の“ぎくしゃく”解消したい

オンライン飲み会の良さ

結論。

「悪くない」

それどころか、Pros & Consを列挙して行くと、メリットのほうが浮き彫りになったとしていい。

ここではオンライン飲み会のメリットをいくつか紹介していこう。

メリット① スケジュール調整が容易

飲み会手配の困難な点は、全員のスケジュール調整だろう。最近では「調整さん」などの便利なスケジュール調整機能も出回り、いくらか利便性は向上したものの、それでも希望者全員の日程を調整するのは難しい。例えば出張などが頻繁に入る上長や営業などが多い場合は、その日程を避けているだけで「忘年会は諦めよう、新年会にて仕切り直しで」などという経験をした幹事も少なくないだろう。

だが、オンライン飲み会を活用すれば、出張先から参加してもらうことさえ可能。夜の会食が入っている日程さえ避けることができれば、全国どこからでも参加できるメリットは大きい。

また、リアル飲み会の場合、業務により遅れて参加するなどメンバーへの配慮も必要だ。決められた「宴会コース」などとなると、先に出て来た料理を取り置きするなど、幹事も気を配らなければならず、逆にアラカルトでのオーダーでは、会計の際に割り勘をどう計算するかなど、気苦労も絶えない。オンライン飲み会であれば、途中参加のメンバーでも幹事が何か手配する必要はない。

メリット② 店舗予約不要

オンライン飲み会であれば、店の予約という煩わしい作業も不要だ。

まずはエリアを選ぶ作業。銀座か、新宿か、渋谷家か、はたまた赤坂か…。上役は世田谷に住んでいるが自身は下町住まい、さてどのあたりに会場に着地させれば角が立たないのか…ビジネスマンなら悩みところ。

そして、いったい料理は何を選べばよいのか、予算はいくらにするべきなのか。会社による支払いであるなら気にする必要もないが、自腹となると個々人の懐具合も異なってくる。出欠が不確かなメンバーが残っていると、店と交渉し、予約人数をいつまでに確定させればいいのか気が気ではない。

しかし、リモートならそんな煩わしさは一切不要。時間に合わせて集まるだけでいい。

メリット③ 子育て世代も参加可能

リアル飲み会は子育て世代にとって、もっとも調整が難しい案件。「お迎えよりも飲み会を優先するのか」など家庭内問題が勃発しかねない。

しかし、オンライン飲みなら解決が少し容易になる。お迎えを済ませてから自宅でのんびり参加できるのだ。なんなら子どもと食卓を共にしながら参加することも可能。小さいお子さんが泣き始めてもマイクをミュート。おしめ交換ならカメラもオフ!それでも宴席に戻って来ることができる。

実際、メジャーリーガーのダルビッシュ有さんは、NBAプレーヤー八村塁さんとのインスタライブにおいて「すまん、オレこのあと子どもの面倒みなきゃいかんから、そろそろ」という言葉を残し退席していた。オンラインコミュニケーションならではの気軽なやり取りを楽しもう。

メリット④ 好みの料理、好みのドリンクで参加

おおむね女性からの声として上がったのは、好きな食事、好きなドリンクが選べるという点。確かに会社での会食となると上司に気を使うなどの観点から、どうにも居酒屋系メニューが多く、あまり洒落たビストロなどが選ばれないケースもある。

好き嫌いがあり気を使う方もいるだろうが、自身の好きな料理と好きなドリンクを用意し参加できる点は、オンラインならではの大きな魅力だろう。

参加者に、大食漢男性や大酒呑みがいると「割り勘負けする」という不満もあったが、これもオンライン飲み会なら解消できる。さらに「お酌に気をつかわずに済む」という、日本社会特有の習慣も雲散する。今後、会社での会食はオンラインに限定したほうが人気企業となり得るのではないかとさえ考えさせられる。

この世には、「自分で料理を選ぶが面倒」という無精者も存在するらしく、カッティングエッジ企業の中には、事前に会社が料理を手配し、オンライン飲み会の前に手元に届くなどということもあるらしい。そこまで気が利いた会社であれば、業績は右肩上がりに違いない。

メリット⑤ 帰宅電車からの解放

テレワークによって通勤時間から解放され、時としてはその時間さえも業務効率向上に充てられる時代となった。都市圏のビジネスマンにとって、ドアトゥドアで平均1時間程度、つまり往復で2時間程度だった通勤時間を、自由に使うことができる時代へと変貌を遂げたと言い換えてもいい。テレワークは月40時間、年で480時間あまりの自由時間をビジネスマンに与えてくれた。

これはリモート飲み会も同様だ。職場から会場への移動時間、また会場からの帰宅時間からも解き放ってくれた。盛り上がったからといって終電を気にする必要もない。また、終電を逃した…とタクシー代がかさむこともない。さらに、帰路の電車で乗り過ごし、終着駅に連れ去られ、職場から自宅までの運賃よりも高額タクシー代を支払ったなどという失敗談もなくなった。

これは2次会の煩わしさからの解放も意味している。リアル飲み会でも上司の目を気にして2次会にやむなく参加…という若者も少なくなっただろうが、それでも2次会のために、さらに次の店を手配し、移動する必要も消え去った。自分さえ差支えなければ、飲み会をオフにした瞬間にベッドに飛び込むこともできる。また、明日の朝が早ければ、「今日はこのあたりで失礼します」とすぐに退出できる。自由のなかったリアル飲み会とは、いったい何だったのだろうと考えさせられる。

メリット⑥ ぶっちゃけ、仕事中でも参加可能

突き詰めて考えると、これはもはや仕事中でも出席可能ではないだろうか。もちろん、終業したメンバーはアルコールも入り、楽しそうに思えるものの、自身がテレワークでミーティングを行っていない限りは、テレワークツールをONにしたまま業務を遂行できる。時として、そのまま飲み会中の上長や同僚に「ちょっと仕事の質問してもいいですか」などと、仕事に巻き込むことさえ可能だ。

業務に目途がついた時点で、そのまま「プシュっ」と好みのドリンクを開け、参加するのみ。リアル飲み会ではありえない利便性がそこにある。仕事山積で飲み会に参加できず、疎外感を抱くという事態も避けられる。

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初対面のオンライン飲み会で生まれるデメリット

リモート飲み会が利点のみかというと、もちろんそうではない。そこには、表があれば裏もあるに違いない。

特に職場の会食、プライベートな飲み会などよりも、異業種交流会、アイデア交換などで弊害が生じやすい。

初対面同士のメンバーが多い場合、リアル飲み会などと異なり、名刺交換もできない。主催者によっては出席簿など用意、配布してくれるものの、それらが実際の「顔」となかなか紐付かない。リアルな名刺交換の際のちょっとした会話で相手を記憶することが多い中年世代限定の弱点かもしれないが、私自身はこれを乗り越えられずにいる。

こうしたリモート交流会の際は、リモートツールが自動的に小さなグループに振り分けてくれるのだが、これがまた必ずしも会話したかったメンバーかと言うと、そうとも限らない。運が悪いと前回のシャッフルで一緒だった方と、次の小グループでも同じになってしまい、お互い苦笑いしつつ、さしたネタでもないのに会話を続けるというループも経験した。

逆に「あの方と会話してみたい」と気になったメンバーとは結局話せないケースもあり、異業種交流のように初対面のメンバーが多い飲み会は、オンラインには向いていないだろう。

そう考えたところで、ふと「オンライン飲み会は合コンに向いていな」と思い当たった。合コンをオンラインで行うデメリットについては、

  • 顔以外わからないので、背格好や全体的な雰囲気が把握できない
  • 気に入った相手がいても1対1での会話がしづらい

などがある。

特に「1対1」での会話に持ち込むのが憚られるという点では、異業種交流会と同じ障害がありそうだ。個別にメッセンジャーでのやり取りを容易にするなど、この点解決できる企画が定着すれば、まだまだ可能性は広がりそうだ。

オンライン飲み会は一旦減少、しかし遠隔地飲み会を中心に定着

緊急事態宣言も明けた現在、リモート飲み会の機会はまず一旦「減る」と予見されよう。現在は日本国民の多くがリアル飲み会を渇望しているという点が挙げられるからだ。しかし、そのままリモートは廃れてしまう…と読むには異論がある。上記に列挙した通り、オンライン飲み会には、あまりにもメリットが多いからだ。

また、こんなケースも参考になるだろうか。先日、久々に大学時代の「クラコン」(クラス・コンパ)、つまり同窓会でもしようという話が持ち上がった。せっかくだから、流行りの(?)オンライン飲み会も悪くなかろうという結論に至り、実施したところ、やはり利点が多かった。

参加メンバーには、海外在住、沖縄在住がおり、かつひとりは当日、パートナーと温泉旅行中と判明。想像できるよう、リモート飲み会の利点は、これらの問題点をすべて解決してくれた。「海外」と言っても時差の少ない隣国周辺だった点も手伝い全員めでたく参加。それぞれ土地のおつまみなども披露し合い、それはそれで会話がはずんだ。

ちらっとスクリーンに映るだけというメンバーのパートナーが映るというハプニングもあり、我々も大いに盛り上がった。海外在住者など遠隔地のメンバーとも飲み会が可能という点は、かつて自身が海外に住んでいた体験からも、まったく新しい時代であると実感させる。

リアル飲み会は年末に向け、活性化するに間違いない。しかし街に活気が戻って来ると同時に、またそのリアルな宴会の煩わしさは、今後も露呈するだろう。すると忘年会、新年会などの職場の会食を中心に、一層オンライン飲み会がスタンダードと化す流れが来るかもしれない。


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松永裕司
Forbes Official Columnist ● NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ MSN+毎日新聞プロデューサー/ CNN Chief Director などを歴任。出版社、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験から幅広いソリューションに精通。