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ウェルビーイングとは?意味や企業が取り組むべき理由、社内で推進する方法を紹介

ウェルビーイングは、健康経営の柱となる取り組みとして注目を集めています。

企業として、ウェルビーイングに向けて取り組んだ方が良いと何となく思いつつも、「ウェルビーイングの理解が曖昧…」「どのように取り組みを進めたらいいの?」などの疑問を持つ方もいるかもしれません。

この記事では、ウェルビーイングの意味はもちろん、ビジネスの現場でウェルビーイングが注目されている理由や、企業として取り組むことで得られるメリットなどを簡単に説明します。

ウェルビーイングの実現に向けた具体的な取り組み方法も紹介するので、企業の経営層や総務・人事などの担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

ウェルビーイング(Well-being)とはどういう意味?

ウェルビーイングとは、「Well(良い)」と「Being(状態)」を組み合わせた言葉です。

具体的には「身体的に健康で、精神的に満たされ、さらに社会的にも良好である」、つまり、すべてにおいて「良い状態にあること」を意味します。

ウェルビーイングと「幸せ」との違いは何?

ウェルビーイングの意味を知り、「それって『幸せ』と同じ意味じゃないの?」と思った方もいるのではないでしょうか。

幸せは「一時的」に満たされ幸福を感じることを指します。例えば、病気を患ったり、人間関係に悩んでいたりしても、おいしいご飯を食べればそのひとときを「幸せ」と感じることもあるはずです。

一方、ウェルビーイングは「状態」を指すため、感情が持続していることを意味します。つまり、人間が身体的、精神的、社会的に「常に満たされた健やかな状態」にあることがウェルビーイングなのです。

ウェルビーイングの歴史を簡単に知ろう

「ウェルビーイング」という言葉が初めて登場したのは、1945年にWHO(世界保健機関)が設立されたときです。世界保健機関憲章の前文には以下のように記されています。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。

世界保健機関(WHO)憲章とは|公益社団法人 日本WHO協会

その後、ウェルビーイングは、2007年の国際会議「Beyond GDP」で、経済的豊かさだけではない人々の豊かさを可視化し示す指標として注目されるようになりました。

従来、人々の生活の豊かさや幸福度を表す指標として「GDP」が用いられてきましたが、「人間は、経済的に豊かなだけでは満たされない」と考えられるようになったのです。

2012年には、World Happiness Report(世界幸福度報告)が初めて発行され、世界中の人々のウェルビーイングが可視化されました。

さらに2015年には、国連が掲げるSDGsの17の目標の一つに「Good Health and Well-being」が掲げられたことで、ウェルビーイングがより広く知られるようになりました。

ウェルビーイングが注目されている2つの理由

日本においても、テレビやインターネットなどで「ウェルビーイング」という言葉を見聞きすることが増えました。

これほどまでにウェルビーイングが社会的に注目を集めるようになった理由として、次のような内容が挙げられます。

  • 「心の豊かさ」が重視されるようになった
  • 働き方改革などの影響により「働く環境」が変化した

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

「心の豊かさ」が重視されるようになった

戦後、急速な経済的発展を遂げていた頃、日本の人々は「金銭的・物質的に満たされること=幸せ」と感じていました。

しかし、ある程度物質的・経済的に満たされた人々は、お金やモノでは得られないものをより大切に思うように変化していきます。それは、1999年にある車のCMで使われたコピー「モノより思い出。」が、多くの人の共感を得たことも影響を与えています。

このように「心の豊かさ」が重視されるようになったことで、身体的、精神的に健康で、良い人間関係のなかで働ける状態を意味する「ウェルビーイング」の考え方が支持される世の中となったのです。

働き方改革などの影響により「働く環境」が変化した

働き方改革やコロナウイルス感染症などの影響により、リモートワークをはじめとする「多様な働き方」を認める企業が増えたことも、ウェルビーイングが注目される背景の一つです。

従来よりも、多様な働き方が認められた社会で、人々は自分のライフスタイルに合った働き方を選択できるようになりました。

しかし一方で、従来のように従業員同士が同じ時間、同じ場所で働く機会が減ったことにより、コミュニケーション不足という新たな問題が発生しています。

従業員に長く働いてもらうには、企業としても従業員のメンタル面での健康を考える必要が出てきており、その結果、ウェルビーイングに取り組む企業が増えているのです。

日本のウェルビーイングの現状は?

日本におけるウェルビーイングの現状は、どのようになっているのでしょうか?

国連が発行するWorld Happiness Report 2023によると、2023年の世界幸福度ランキングの1位がフィンランド、2位にデンマーク、3位にアイスランドと、北欧諸国が並んでいます。

日本の幸福度ランキングは世界146カ国中47位で、2022年の54位からは上昇したものの、G7では最下位です。

現在、日本政府は各省庁が連携し、ウェルビーイングを向上させる取り組みを推進しています。しかし、国民一人ひとりがウェルビーイングを追求しなければ、日本のウェルビーイングの現状が改善することはありません。

とくに人々が社会的に満たされるには、企業のウェルビーイングへの取り組みが必要不可欠です。

ウェルビーイングの5つの要素

ウェルビーイングを高めるには5つの要素があるとされており、主に2つの異なる考え方が存在します。

  • セリグマン教授が定義した5つの要素(PERMAの法則)
  • Gallup(ギャラップ)社が定義した5つの要素

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

セリグマン教授による5つの要素(PERMAの法則)

一つ目は、米国の心理学者マーティン・セリグマン博士が提唱している5要素で、それぞれの頭文字を取り「PERMAの法則」と呼ばれています。

要素内容
Positive(ポジティブな感情)希望や喜び、愛、思いやりなど、人々を前向きにする感情※ウェルビーイングのなかで最も重要な要素とされている
Engagement(エンゲージメント)今この瞬間を大切にし、没頭できるほど目の前のことに集中できること
Relationship (関係性)他者と良い関係を築き、サポートを受け、愛されること
Meaning(意味・意義)より大きな意味あるものに所属し、使命感を持って取り組むこと
Accomplishment(達成)目標を達成するために努力し、やり遂げること

セリグマン博士は、これら5つの要素を追い求めることで、人々のウェルビーイングは高まるとしています。

Gallup(ギャラップ)社による5つの要素

二つ目は、World Happiness Reportの調査を実施している「ギャラップ社」が提唱しているウェルビーイングの5要素です。

要素内容
Career Wellbeing(キャリアのウェルビーイング)好きな仕事(家事、勉強などを含む)に熱意を持って取り組んでいること
Social Wellbeing(人間関係のウェルビーイング)人間関係が良好で、愛し愛されていること
Financial Wellbeing(経済的なウェルビーイング)経済的に満たされていること
Physical Wellbeing(身体的なウェルビーイング)健康に毎日過ごせること
Community Wellbeing(地域社会でのウェルビーイング)住んでいる場所で良好なコミュニティーを築いていること

ギャラップ社では、ウェルビーイングな状態であるためには、これら5要素のすべてが満遍なく満たされる必要があるとしています。

企業がウェルビーイングに取り組む5つのメリット

かつて、企業が取り入れる「健康経営」の多くは「メタボ対策」が中心となったものでした。

しかしコロナ禍をきっかけに、企業はより広い規模で「健康」を考えるようになり、従業員のウェルビーイングに高い関心を持つ企業も増えつつあります。

企業がウェルビーイングに取り組むメリットとして、主に次の5つが挙げられます。

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

人材の流出を防げる

企業がウェルビーイングに取り組むと、従業員の労働環境が改善され、メンタルが安定します。

一人ひとりが安心・安定して働ける職場環境では、従業員の会社に対する不満が減ります。その結果、離職や転職による人材の流出を防げるようになるのです。

生産性が高まる

ウェルビーイングな状態で働ける職場では、従業員の自社に対する好感度や帰属意識が高まります。

「この会社に貢献したい」と熱意を持って業務に取り組むようになれば、生産性も向上します。

商品・サービスの品質が向上し顧客満足度も上がる

ウェルビーイングな状態で働けることで従業員の生産性が高まれば、より良い商品やサービスを社会へ提供できるようになります。

そうすれば、自社の商品・サービスが市場で高く評価されるようになり、結果的に顧客満足度も向上するはずです。

企業価値が高まる

人材が安定し、商品・サービスの品質が高まると、企業価値そのものも向上します。

人的資本に力を入れている企業は、投資家の間でも評価が高いため、結果的に投資を受けやすくなる可能性もゼロではありません。

優秀な人材の確保につながる

社内のウェルビーイング向上を重視する企業は、就職市場での評価も高まります。

理由として、とくに若い世代や優秀な人材は、自分の健康や幸福、働きやすい環境を重視してくれる企業に魅力を感じるからです。

ウェルビーイングを社内で推進するためのステップ

企業がウェルビーイングに取り組むときの具体的な進め方として、次の3つのステップがあります。

それぞれ順番に、詳しく見ていきましょう。

STEP1.自社のウェルビーイングの現状を把握する

社内のウェルビーイング向上に取り組むのであれば、まずは「現状」の把握から始めましょう。

自社の従業員のウェルビーイングが高いのか、あるいは低いのかがわからなければ、どのような取り組みを実施したら良いのかの計画を立てるのが難しくなってしまいます。

現状の把握には、従業員満足度調査(ES調査)や、従業員が希望する働き方や福利厚生を問うためのアンケート調査などを行うと良いです。

従業員のウェルビーイングを測定する方法

ウェルビーイングの5つの要素を定義したGallup(ギャラップ)社では、World Happiness Reportにて「ハシゴ式」で幸福度を測定しています。

ハシゴ式とは、「自分の生活にどの程度満足しているか」を0から10の11段階で回答してもらう方法です。従業員のウェルビーイングの状態がどの程度なのかを測ることができるので、ぜひ試してみてください。

STEP2.ウェルビーイングの実現に向けて「社内でできること」を検討する

現状を把握したら、従業員のウェルビーイングを実現するために、どのようなことができるのかを検討します。

具体的には、次のような取り組みを実施しましょう。

従業員の健康維持に努める

企業としてウェルビーイングを実現するには、従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが最も重要です。

身体的、精神的に安定していなければ、働くことが難しくなり、休職や離職につながってしまうためです。

従業員の健康を維持するためにできることとして、具体的には次のような内容があります。

  • 健康診断の実施
  • メンタルチェック
  • 健康相談窓口の設置
  • フィットネスなど福利厚生の充実 など

労働環境を見直す

従業員が快適に働くには、労働環境の見直しも必要です。具体的には、次のような取り組みを検討してみてください。

  • リモートワークや時差出勤など働き方の選択肢を増やす
  • 残業の抑制など労働時間を見直す
  • 有休消化の義務付けなど休暇を取得しやすくする など

コミュニケーションを取りやすい環境を構築する

働き方の多様化により、「リモートワーク」など、従業員同士が離れた環境で働くケースが増えたことで、コミュニケーション不足の問題を抱える企業も増えています。

現状の働き方を維持しつつ、社内のコミュニケーションをより活性化させるのであれば、ツールの導入を検討することがおすすめです。

例えば、チャットツールを導入すれば、メールよりもより気軽にやり取りが可能です。また、オンラインでも従業員がまるでオフィスにいるかのように会話できる、バーチャルオフィスツールを利用する方法もあります。

バーチャルオフィスoviceでは、従業員一人ひとりの出社状況や勤務状況を一目で確認できます。また、アバターの距離や向いている方向で声の大きさが変わる機能もあり、「今ちょっといいですか?」と言った、気軽なコミュニケーションの実現が可能です。

oviceの特徴や機能について詳しく見る

STEP3.取り組みを実施し、効果検証する

現状把握や必要な取り組みを整理したら、実現可能なことから徐々に導入していきます。

ウェルビーイングに向けた取り組みをしばらく継続したら、定期的に満足度調査やアンケートを行い、効果検証することも重要です。結果を分析し、従業員のウェルビーイングがさらに向上するよう取り組みを続けましょう。

企業のウェルビーイング取り組み事例

ここでは、従業員のウェルビーイングの実現に向けて、企業が実際にどのような取り組みをしているのかを紹介します。

  • 楽天グループ株式会社
  • 株式会社アジャイルウェア
  • キヤノンマーケティングジャパン株式会社

楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社では、新型コロナウィルス感染症の拡大をきっかけに、ニューノーマルな時代にあった働き方を考え、「コレクティブ・ウェルビーイング」に関するガイドラインを作成しました。

コレクティブ・ウェルビーイングとは、楽天グループ株式会社の定義によると「ある目的のもとに、ありたい姿を持つ多様な個人がつながりあった持続可能なチームの状態(※)」を指します。

オンラインでのネットワーキングなど、従業員一人ひとりがそれぞれ価値観に基づいて自分なりの働き方を見つけ、同僚の価値観も尊重しつつ働けるよう取り組んでいます。

<参照>(※)ニューノーマル時代に向けて、コレクティブ・ウェルビーイングを考えよう|楽天グループ株式会社

株式会社アジャイルウェア

プロジェクト管理ツールなどを提供している中小企業「株式会社アジェイルウェア」では、「人を大切にするウェルビーイング経営」に取り組んでいます。

具体的には、リモートワークも可とするフルフレックスの導入などの「自由な働き方のサポート」や、40歳以上の従業員に対する「人間ドック受診料の負担」などを行っています。

ウェルビーイングに向けた取り組みは、従業員との対話を通して計画し、実践しているそうです。

<参照>私たちが大切にしていること|株式会社アジャイルウェア

キヤノンマーケティングジャパン株式会社

キヤノンマーケティングジャパン株式会社では、異なる地域で勤務するチームメンバーがスピーディに連携できるよう、バーチャルオフィスツールoviceを導入しました。

リモートワークとコロナ禍で、従業員の心理的安全性の確保の重要性を認識したことが理由です。

oviceを活用した「ウエルビーイング対話」で、業務の生産性向上や従業員の心理的負荷軽減に取り組んでいます。詳しくは次のページをご覧ください。

関連記事:
“密でスピーディなコミュニケーション”が実現 バーチャルオフィス導入で事業推進力を高めるキヤノンマーケティングジャパン

まとめ

企業が積極的にウェルビーイングに取り組むと、「人材の流出が減る」「生産性が上がる」「企業価値が高まる」など、多くのメリットを得られます。

ヒトは企業運営において、最優先すべき経営資源です。安定した企業運営を目指すなら、ウェルビーイングの実現に向けた取り組みを始めましょう。

働き方の多様化で従業員同士が離れた環境で働くことにより、コミュニケーション不足の課題を感じている場合は、バーチャルオフィスの提供を検討してみてはいかがでしょうか。

バーチャルオフィスoviceは、オンライン空間でありながら、まるで本当のオフィスにいるように、従業員同士のシームレスでスムーズなコミュニケーションが可能です。ぜひ導入を検討してみてください。

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