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上場企業役員レベルの女性比率は10%以下…なぜ日本企業では女性が活躍できないのか

2023年2月に株式会社識学が発表した「管理職に関する調査*」によると、「管理職になりたいと思う」と回答した非管理職者は8%で、女性に限ると、非管理職者75名のうち4%にとどまった。

その一方、アメリカの経営コンサルティング会社Gallupの調査によると、アメリカ人女性の45%が、最高経営責任者(CEO)になりたい、または上級管理職や指導的地位に就きたいと答えている。この数字は、女性の社会進出が成功しつつあることが反映されているのだと予想している。

同じ時代を生きているのに、なぜこんなにも異なるのだろうか? 本記事では、その理由を考えるとともに、女性が企業で活躍するために企業が試せるアイデアについて考えてみたい。

<参照>
7割超が「管理職になりたくない」と回答。“女性管理職を増やす動き”には賛成多数も、実際になりたい・向いている女性はごく少数に|HRpro *調査期間は2023年1月6日〜11日で、従業員数10名以上の企業に勤める20~59歳の会社員300名(管理職:150名/非管理職:150名)を対象に行われている。
Women in America: Work and Life Well-Lived|Gallup

アメリカの「女性の働き方」学ぶべきポイントは?

アメリカで人材サービスを展開するZIPPIAの記事によると、労働人口の58.4%を女性が占めているアメリカで、管理職に就いている女性の割合は35%(2022年9月時点)。さらに女性幹部がいる企業は、他の企業をパフォーマンスなどで上回る可能性が30%高いとも記載されている。

もちろん国柄や人生観の違いなども影響しているだろうが、日本とアメリカの間の差の理由には何があるのだろうか。筆者は、以下の3つが理由ではないかと考えている。

<参照>25 WOMEN IN LEADERSHIP STATISTICS [2023]: FACTS ON THE GENDER GAP IN CORPORATE AND POLITICAL LEADERSHIP|ZIPPIA

継続的に、柔軟な働き方が支持されている

日本企業がリモートワークを減らして出社勤務にシフトしていくなか、2023年6月にForbesが発表した「リモートワークの統計と傾向」という記事によると、2025年までに3,260万人のアメリカ人が何らかの形でリモートワークをするようになるそうだ。これはアメリカの労働人口の約22%に相当する。2023年にはGoogleやAmazonなどアメリカの大手テック企業が出社を義務化して話題になったが、たとえばZoomは出社義務を週2日間とするなど「ハイブリッドワーク」を導入している。

さらに同記事によれば、雇用者の93%がリモートでの面接を実施しており、リモート面接は継続予定だと述べられている。このことから、雇用主の視点からもリモートワークが受け入れられていることがわかる。

また「98%の労働者がリモートワークを取り入れた働き方を希望している」点について、Forbesはリモートワークによってもたらされた働き方の柔軟性やワークライフバランスの向上が影響しているのではないかと想定している。

<参照>Remote Work Statistics And Trends In 2023|Forbes

キャリアを築きやすい

近年日本でも話題になっている「ジョブ型雇用」だが、アメリカでは既に浸透している人事制度であり、これは女性にとってプラスになる。なぜなら、ジョブ型雇用では「年齢」や「子どもがいる母親である」などの属性よりも、候補者の経験やスキルを重要視して採用活動をするためだ。

そのため、就きたい仕事の条件に当てはまる資格や経験があればより多くのチャンスを得られ、出産や子育て後のキャリアビジョンも比較的描きやすい(簡単ではないが)。

既に成功している女性が多く、ロールモデルを見つけやすい

アメリカには既に女性の成功者が多いことに加えて、社内など身近な場所でロールモデルとなりうる女性に出会えることが多い。どのようにキャリアを築いていくべきかや、どのように人脈形成をしていくかなどを相談できるのは心強い上、自分の先を走る存在がいれば、未来のキャリアは描きやすくなる。

また、アメリカ国内では女性向けのカンファレンスも頻繁に開催されており、男性と比べて給与交渉をする頻度が少ないなどの問題について、具体的な事例や経験談と共に、どのように対処すべきかを共有しているそうだ。努力しても報われない環境で意欲的に働き続けることは難しい。問題の対処法を教えてくれるコミュニティがあることは、大きな支えになっているのかもしれない。

女性の役員比率がわずか10%前後の日本

2022年10月、厚生労働省が従業員が10人以上いる全国の企業6,000社を対象に行い、3,000社余りから回答があった「男女の働き方についての調査」によると、企業の管理職(課長級以上)に占める女性の割合はわずか12.7%。厚生労働省は「女性管理職の割合は国際的に見ればG7では最下位で低い水準」とコメントしている。

また、内閣府が「役員四季報」をもとに作成したデータによれば、女性の役員比率は約9%台だった。厚生労働省の報告書「令和4年版働く女性の実情」で日本の労働力人口総数に占める女性の割合は44.9%であると発表されていることを踏まえても、かなり低い数字であることがわかる。

しかしグローバル化や市場ニーズの多様化といった情勢変化に対応するため、経営層に女性を含む多様な人材を登用する重要性についての認識は確実に広まっている。内閣府が2023年6月に公表した「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」(女性版骨太の方針2023)では、「東証プライム市場上場企業における女性役員の比率を、2030年までに30%以上にする」という目標を掲げている。また経済産業省では女性リーダー研修を実施するなど、積極的な支援を始めている。

<参照>
企業の女性管理職の割合12.7% 厚労省「国際的には低い水準」|NHK
女性役員情報サイト|男女共同参画局
令和4年版働く女性の実情|厚生労働省
女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)
女性リーダー育成研修|経済産業省

企業の取り組みとしては、アデコ、パナソニック コネクト 、ルネサンスの3社が合同で女性のキャリア開発支援を目的とした「クロスメンタリング」を推進している。日本ではメンタリング制度を社内で取り入れるケースが多いが、「クロスメンタリング」では、メンター(支援・助言する人)とメンティー(支援・助言を受ける立場の人)を他企業同士で組み合わせ、企業を横断してキャリア形成を支援する。

<参照>アデコ ✕ パナソニック コネクト ✕ ルネサンス 女性のキャリア開発支援のため、3社合同で「クロスメンタリング」の取り組みを推進

なぜ日本で女性は活躍できないのか

冒頭で触れた「管理職に関する調査」には続きがある。非管理職150名のうち、子どもがいると回答したのは70名で、残る80名は子どもがいないと回答している。この2グループで「管理職になりたいと思う」「条件によってはなりたいと思う」と答えている比率を比較したところ、前者は32.9%、後者は23.8%だった。調査を行った識学は「子どもがいるから頑張りたいというモチベーションが明確にある方のほうが、管理職になりたい傾向にあるようだ」との見解を示している。

しかし、子育てと仕事の両立は難しいのが現状だ。Ms.Engineer株式会社が全国の働く20~40代女性に対して行った意識調査「出社回帰の流れが働く女性に対してどのような影響があるか?」によると、79.7%が「完全出社になった場合、育児と仕事の両立のイメージが湧かない」と回答したという。

完全出社になった場合、育児と仕事の両立できるイメージが湧きますか?

いいえ:79.7%
はい:15.8%
その他:4.5%
▲完全出社になった場合育児と仕事の両立できるイメージが湧きますか 出典MsEngineer

その理由として、「通勤時間などに時間が奪われてしまう」「移動などによって体力が奪われてしまう」「突発的事態に対応できない(子どもの熱や交通機関の遅延)に対応できない」などがあがった。

出社回帰の流れが強まったことにより、リモートワークによって改善していた「移動や出社に対しての不安」を再び抱えている女性が多くいることがわかる。それもそのはず、前述のMs.Engineer社の発表によれば東京都の平均通勤時間(往復)は95分で、女性の帰宅時間の遅さも全国1位。1年間の通勤時間を合計すると、約1ヶ月分の営業日と同等になるそうだ。

<参照>働く女性の多くが抱える「出社回帰」への不安。8割が育児と仕事の両立イメージがわかないと回答 -Ms.Engineer調査

また、ベビーシッターや家事代行サービスを展開するキッズラインが2022年に子を持つ親552人を対象に実施したアンケート調査によると、65.4%の母親が「子育てを理由に働き方を変えた」ことがわかった。

これまでに子育てのことを考えて、母親が働き方を見直したことはありますか?

働き方を見直した:65.4%
働き方を見直していない:23.2%
その他(母親は働いていない・不在など):11.4%
▲これまでに子育てのことを考えて母親が働き方を見直したことはありますか 出典キッズライン

そのうち「時短勤務を選んだ(パートタイムなど時間を短くした方を含む)」が41%、「職場や仕事は変えていないが、仕事の量を減らした」は21.1%、「育児がしやすい会社に転職した」は7.8%、「リモート勤務に変更した」は4.2%だった。子育てと仕事の両立を叶えるためには、働く環境を整えることが大切だということがわかる。

<参照>【母親の働き方2022】子育てを理由に働き方を変えたママは6割以上!どう見直した?何が困った?|キッズライン

「女性の活躍」には「子育てとの両立のしやすさ」が深く関わっている。リモートワークを採用していない企業は必然的に「女性が活躍しにくい企業」になる可能性が高い。

リモートワークなどの柔軟な働き方は、これまで多くの事例で生産性の向上やワークライフバランスの実現、多様な才能の活かし方としてその有効性が証明されているが、働く女性をサポートする上でも、想像以上の効果を発揮するだろう。

女性の「働きたい、けど…」をなくすためにできること

先日、以下のX投稿が話題になっていた。

勤務形態に柔軟さがなくなって「出社」一択になると、能力のある人がその企業で働けなくなったり、リモートワークを強く望んでいる人が転職してしまったりと、雇用側と雇用される側の両方が損をしてしまうケースも多いのではないだろうか。

日本で管理職女性比率を上げるためには、管理職になりたい意欲を引き上げると同時に、すでにそのような意欲のある方が管理職につくための障壁を取り払うことも必要だろう。

たとえば、働く場所の制約をなくすことは子育て中の女性にとっての働きやすさにつながる。そして、アメリカの例を見れば、ロールモデルや具体的課題への解決策も助けになることが期待できる。女性同士で経験や知識をシェアできる環境やコミュニティを構築していくことが重要だ。

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YUI SASANO
フリーランス歴10年目、現在25歳の作詞作曲家/SNSマーケター。アーティストや文化人、企業のSNSプロデュースの他、コラムニストとしても活動している。