ホーム » 働き方改革 » 話題のオープンタレントとは?フレキシブルな働き方がもたらす、新たな雇用の可能性

話題のオープンタレントとは?フレキシブルな働き方がもたらす、新たな雇用の可能性

これまで主流だった「オフィス勤務」から、「テレワーク」「ハイブリッドワーク」など新しいワークスタイルへとシフトチェンジし始めたのは、たった2年前のことだ。新型コロナウイルス感染防止対策という理由でテレワークを導入したが、リモートで作業することに対して前向きに捉え、コロナ終息後も今のワークスタイルを継続する意思を表明している企業も多い。

しかし、Harvard Business Reviewの「リモートワークは新しい雇用モデルの扉を開いた」によると、働き方はまだまだ進化する可能性があり、企業は柔軟なオープンタレント採用モデルを検討するべきだという。

この記事では、オープンタレントとは何なのか。また、企業や社員にとってどうプラスになるのかを解説する。

Harvard Business Review「Remote Work Has Open the Door to a New Approach to Hiring(リモートワークは新しい雇用モデルの扉を開いた)」

オープンタレントとは?

オープンタレントとはその名の通り、タレント(才能・能力)を持つ人材を、プロジェクトベースなどで一時的に外部から雇用することをいう。雇用形態は社員・業務受託など企業によって異なるが、基本的には、以下のようなシチュエーションでオープンタレント採用を行うことがある。

  1. あるプロジェクトに対して、アサインできる人が会社内部にいない場合
  2. 外部から雇った方が、既存社員に残業代を支払うよりも安価になる場合
  3. 高度な専門スキルが必要であり、社内に適任者がいない場合
  4. 外部の優秀な人間にアサインしてもらった方がより良い結果になり、収益率が高い場合

ハイブリッドワークでオープンタレントモデルを取り入れた場合、才能あるフリーランサーを場所を問わず雇用することができる。オープンタレント雇用が正しく機能すれば、労働者が希望するワークスタイルを柔軟に提供しながら、企業はより才能のある人材と仕事をすることが可能になる。

関連記事
ハイブリッドワークとは?メリット・デメリットと導入事例を紹介

オープンタレントの実態

一昔前の日本の雇用形態とワークスタイルはそこまで柔軟と言えるものではなかった。

また、筆者はフリーランス歴8年目であるが、当時のフリーランス市場は「大変」で「珍しい」というマイナーな立場であり、筆者もそういった認識をしていた。しかし、現在はどうだろうか。

フリーランスの友人を見つけると、そこから芋づる式でフリーランサーに知り合えるというほど、業務受託の契約下で仕事をしている労働者も増えてきている。

雇用形態や副業・複業に対しての考え方も柔軟になってきており、2021年時点で55%の企業が副業・複業を容認している(条件付き容認を含む)。それに伴い、副業・複業者を受け入れている・受け入れ意向のある企業が47.8%あり、理由は「多様な人材確保が可能だから」と回答している。

 自社の正社員が行う副業の容認
 自社の正社員が副業を行うことを容認している企業の割合(全面容認と条件付き容認の合計)は55%。2018年の1回目の調査では同51.2%であり、3.8ポイント上昇している。
▲<strong>自社の正社員の副業を企業が容認禁止している割合<strong> <a href=httpsprtimesjpmainhtmlrdp000000537000016451html target= blank rel=noreferrer noopener>PRTIMES|パーソル総合研究所<a>

なぜ企業はオープンタレント雇用を導入すべきなのか

フルタイムで長期的に採用する予算はないが、プロジェクト単位で人材投資をしたい場合や、仕事量に合わせて人材を確保したい場合など、オープンタレントは幅広いシチュエーションで完璧な解決法となってくれる。

フルタイムで働くことを望む・望まないはその人のライフスタイルや理想とするワークスタイルによって異なるため、才能レベルには比例しない。つまり柔軟な雇用形態を整えることによって従来の雇用の可能性を超え、より相応しい人材を採用することができる。労働需要の変動へも対応しやすくなるだろう。

国内例:ランサーズの取り組み

「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」をビジョンに掲げるランサーズ株式会社は、2017年に「オープン・タレント推進室」を社内に創設した。働き方革命の支援と同時に、ランサーズを複業とする「タレント社員制度」を開始した。

「タレント社員採用」は、才能・能力のある人材を、雇用形態(本業・兼業の有無など)に関わらず、スキルや経験・人脈などを可視化し、ランサーズの社員として採用するという取り組みだ。「タレント社員制度」の第一弾として、複業研究家・働き方革命コンサルタントとして活躍する西村創一朗(株式会社HARES)を社員として迎えた。

また、労働人口が減少し、個人のスキルと生産性がさらに求められるこれからの時代に合わせて、タレント・能力を持つ人材と仕事をAIにより高い制度でマッチングさせる「オープン・タレント・プラットフォーム構想」の実現を目指し、誰もが自分らしく働ける社会の実現を目指している。

@Press|ランサーズ、『オープン・タレント・プラットフォーム構想』実現に向け 企業側の働き方改革を支援する 「オープン・タレント推進室」を創設

国外例:Dloitte(デロイト)の取り組み

世界最大の会計事務所であるDeloitte(デロイト・トウシュ・トーマツ)は、自身の経験を生かしてプロジェクトベースで契約することができる専門家のコミュニティ「デロイトオープンタレントコミュニティ」を作った。

コミュニティのメンバーになると、最新の案件情報を知ることができたり、自身が求めている仕事ついてデロイトと話す機会を与えられる。やりがいのある仕事・新しいスキルの取得と成長、希望するキャリアを築く機会を得ることができる。

Deloitte.|Deloitte Open Talent

採用担当者・マネージャーは何をすべきか

オープンタレント採用を積極的に行う場合、うまく機能させるために、採用担当者・マネージャーは普段以上にプロフェッショナルでいる必要がある。グローバル規模であれば尚更だ。

フリーランサー(あるいは複業者)と企業がオープンで柔軟な仕事のマッチングをする上で、ランサーズなどの採用プラットフォームを利用することは、お互いへの信頼確立に役立つ。支払い保証などの保護はまだまだ立場が低いとされているフリーランサーの味方になり、過去の実績・評判スコアなどのフィードバックは一種の履歴書の役割を果たしてくれる。

プラットフォームを使用せずに採用を行う場合は、プラットフォームが存在する意味を一度考え、起こり得るトラブルを想定し、未然に回避するための策を練っておく必要がある。事前に細かく決めることの難しい条件(勤務時間についてなど)を明らかにするためのトライアル期間を設けるなど、柔軟でありながらも明確なコミュニケーションを取ろう。

また、優秀な人材を採用することに慣れている人事・マネージャーは、才能・能力に対して投資をすることに抵抗が少ないが、低コストを重視するマネージャーにとっては慣れない作業かもしれない。しかし、柔軟なオープンタレント雇用を行うということは、企業=人である以上、優秀な人材を求めて優秀な企業と競争する必要があるということを認識しなければならない。

ハイブリッドワークは理想的なワークスタイルを実現することが可能となり、オープンタレントモデルも取り入れやすい。人事やマネージャーによる細かな管理能力が必要だが、うまく機能すれば、並外れた結果を期待することもできる。

author avatar
YUI SASANO
フリーランス歴10年目、現在25歳の作詞作曲家/SNSマーケター。アーティストや文化人、企業のSNSプロデュースの他、コラムニストとしても活動している。