「NTTが『働き方改革』をさらに推し進める」とNHKが報じたのは6月20日のこと。その報道によると、今後NTTグループの対象組織は勤務地の基本を「自宅」と設定、出社については出張扱いとする方針を打ち出した。 またNHKの調査によると現状、リモートワークを推進している企業は65%以上となり、さらに62%が継続予定であるばかりではなく、10%以上が「拡大」継続を計画しているとされる。日本においてもはや、リモートワークの継続は、一流企業のリトマス紙としての感すらある。 NHKの報道に呼応したわけではないだろう。NTTは同24日、公式リリースとして「リモートワークを基本とする新しい働き方の導入について」を発表した。 <参照>NHK|NTTが働き方の新ルール “勤務は自宅・出社は出張・飛行機利用OK”NTT|リモートワークを基本とする新たな働き方の導入について NTT経営企画部門広報室にインタビュー NTTグループは、「住む場所」の自由度を高め、ワークインライフ(健康経営)をより一層推進していく観点から、リモートワークを基本とする新たな働き方を可能とする制度を導入すると宣言。これをこの7月1日からスタートさせた。 NTTグループはこれに先立ち21年9月28日、分散型ネットワーク社会に対応した「新たな経営スタイル」を発表。その中で、 社員の働き方はリモートワークを基本とし、働き方を自由に選択・設計可能とすることでワークインライフ(健康経営)を推進する方向性をすでに示している。 7月1日からの今回の方針は、“哲学”として勤務地はオフィスなのではなく、自宅と定義している点で、各業界に衝撃をもたらしたとしていいだろう。 NTT(日本電信電話株式会社)経営企画部門広報室・荒巻優三さんに話を聞いたところ、第一声は「これほどの反響があるとは正直思っていませんでした」とのこと。もちろん、NTTグループはそもそも通信を事業主体とする社である。よってリモートワークは今後も社会的には継続されるであろうという風潮は読み取っていた。だが同社においても、これまでは自宅は勤務地から2時間程度という目安があったのも事実だ。 それがやはり「将来的には全国どこにいても、働くことができるやり方を考えて行く必要があるという経営方針の中、リモート・スタンダード組織を認定し、働き方を変えて行こうとなりました」と荒巻さん。 NTTは誰もがご存知の通り全国に広がる組織である。つまり「自宅が勤務地」という哲学は、これまでの配置転換による異動などにともなう転勤、または単身赴任が当たり前だった組織から、転勤のない働き方をスタンダードとする方針への転換となる。これまでは、異動・転勤により、場合によっては仕事そのものを諦めるケースもあり、また家庭を犠牲にしなければならないなどの弊害もあった。そうした「不自由さをなくす社会を作って行きたい」という哲学をも打ち出した形だ。 「不自由さをなくす社会を作って行きたい」 荒巻さんは 「明日から全員がドラスティックにリモートワークに…という変化ではない点はまずご理解頂きたいと思います。あくまで、これまでと同様にリモートワークを推進するというレベルが現実的です。つまり、出社が100%完全になくなるとは我々も考えていませんし、既報通り全国18万人の従業員のうち、リモートワークが可能な3万人程度からのスタートになると想定しています。 また、365日リモートワークというのも想定しておりません。オフィスに出社し、みんなでアイディアを出し合ったり、一緒に作業するのも当然必要です。7月は異動の時期でもありますが、異動していきなりリモートでは業務に慣れないという弊害もあります。ですから、出社を否定するものではなく、働き方の多様化に、より拍車をかける哲学を打ち出し、あくまでハイブリッドワークを想定しています」 と、NHK報道が世間にもたらしたような衝撃的な方向転換ではない点を丁寧に解説してくれた。 新型コロナウイルス禍により、リモートワークが進んだ影響による、メリットも重々認識の上だ。 「これまでもリアルな出社においては、例えば物理的な会議室は予約が困難な際もあり、収容人数にも限りがあり、出席人数を限定する必要に迫られる事態もありえました。 また配布資料も紙を印刷するケースも絶えず、エコではなかったかもしれません。しかし、リモートの会議であれば、出席人数に制限を設ける不便もなく、全社員出席さえ可能です。資料はもちろん事前にデジタルで配布可能ですからSDGs的にも無駄がありません」 とこれまでの悪しき風習を駆逐するに役立ったという見方も示した。 本社を地域的に分散する検討も進行中 もちろん、リモートの長所短所については検討した結果でもある。 「ご家庭ごとに様々な問題はあるかとも考えています。例えばお子さんがまだ小さいがゆえに、むしろ自宅では仕事がしづらいという社員もいます。そうした点を考慮し我々は、昔のいわゆる“電話局”などに手を加えることでサテライト・オフィスを設ける工夫もしています。 他社サービスも含めてですが、現在では全国約500の拠点を設けています。グループ会社である、例えばNTTデータを訪問する際もそのまま先方で業務ができるようサテライト・オフィスを活用したり、そうした人の流れを作り出すことでコミュニケーションが円滑になるケースもあると聞いています」 と、あくまで実情に合わせた自然な流れから生まれた働き方を尊重した結果のようだ。 NTTがこうした働き方の多様性を打ち出した事実は、すなわち地方創生への貢献にもなりそうだ。私自身が所属していたNTTドコモももちろん全国に拠点があり、そうした背景があるがゆえに「地方活性化ビジネス」もひとつのテーマだった。 そんな中、今回の取り組みを受け、荒巻さんは「さらに一歩進めて、組織も分散していきましょうという発想も生まれています。つまり、本社組織が1か所に集中している必要はもはやありません。本社を地域的に分散しようという検討も、進んでいます」と新たな展開も期待できる状況であると教えてくれた。これは私自身が唱える東京一極集中解消論と、まさに合致するではないか。 関連記事リモートワークが促進する地方創生と東京一極集中解消 官公庁地方分散で日本をアップデートせよ 「新しいチャレンジを続けて行きたい」 荒巻さんはさらに 「先日、弊社も社長が島田明に変わり(22年6月就任)、その会見でも発言したように、新入社員などにいきなりリモートワークさせるのでは社員教育は難しい。まずは合宿のようなかたちでみんなで集まり、その後に全国に散らばり、また定期的に合宿などすることでスキルアップできるんじゃないかと考えています。我々はちょっと古い企業体質を持つと思われてはいますけども、(今回の発表のように)どんどんこうした新しいチャレンジを続けて行きたいと考えています」 と巨大企業による挑戦について語った。 ご存知の通り日本におけるNTTの影響力は大きい。グループ企業などを含めれば32万人とも言われる社員をかかえ、またその事業そのものに関連する企業数は枚挙にいとまがないほど。そうした関係会社もNTTの働き方の多様性推進については、取り入れていかざるを得ないだろう。 同社が先陣を切って日本の働き方を変えて行く意志を示すことで、日本の働き方そのものに変革をもたらすに違いない。NTTの舵切りについて訊ねていると、日本はまだまだ捨てたものではない!そんな期待感が自ずとあふれて出て来る思いすらした。 ハイブリッドワークの導入検討や実践の場面で活用できる情報をまとめました。ぜひお役立てください。 資料を無料でダウンロードする
ロイター通信によると「テスラのイーロン・マスクCEOが全社員に向け、週40時間以上出社しない者は辞めたものとみなすとメールした」という。企業は果たして出社・テレワークのどちらを選ぶか決断しなければならないのか。今回は、ABWという概念を中心に、サイバーエージェントの取り組みを見ていこう。
感染防止の観点からスタートした在宅勤務は、リモートワークを確立させ、新型コロナ小康状態が見込まれつつも2022年には、ハイブリット・ワークの完成もしくは完全リモートワークの時代へと歩みを進めていると思わせた。リモートワークもやはり時代の趨勢として「不可逆的」と思われたものだ。一方で、最近では世界的にこれらの潮流に逆行する現象も垣間見える。今回は、リモートワークの今後について、日本と世界の動きを確認しながら想像してみよう。
政府の調査によると、東京は世界の都市と比較しても人口が極端に密集しているそうだ。東京一極集中はかねてから指摘されている通り、地方の衰退を招くだけでなく、災害に対する脆弱性も懸念される。働き方改革とコロナ対策が叫ばれる中、この東京一極集中は少しでも是正されるのだろうか。
この2年近く、「リモート勤務を成功させるTIPS」や「バーチャル・オフィス成功の秘訣」などの記事をいやと言うほど目にして来た。ユーザーのみなさんについても、そうした記事をお探しの方も多かろう。だが、そうした提言に本当に意味があったのか、少々考え直してみたい。
メタバースにより実現された5つのソリューションとしては、仮想空間におけるコミュニティ(SNS)活用 や仮想空間におけるゲームなどがある。一方で、メタバースには法的問題も立ちはだかる。今回はメタバースの現状と今後について考えていこう。
テレワークが普及してから、会社のリクルーティング事情も変わってきている。特にIT企業では、エンジニアやクリエイティブに関わるプレイヤーを確保するために、リモートワークを条件として人材確保を図っている。今回は、リモートワークが定着した現在のリクルーティング環境について考察してみよう。
メタバースにおける不動産投資も白熱している……昨年末までには、海外からそんなニュースが飛び込んでくるようになった。今回は、最新のニュースや業界動向をもとに、メタバースの不動産としての価値について考えてみよう。
かつて日本の風物詩であった花見の「場所取り」。リモートワークが広がる中、その姿は消えつつある。今回は、春の風物詩「場所取り」の過去と現在、そして今後について考えていこう。
メタバースにも「シンギュラリティ」はやってくる。来るべき未来に備えるためには、私たちが国際レベルの情報リテラシーを獲得することが必須だろう。 ところが、悲しいことに現在の日本は情報リテラシーをないがしろにしているようにさえ思える。今回はメタバースにシンギュラリティが生じる条件を考察するとともに、メタバースが浸透しはじめた世界で私たちは何をすべきなのか考えてみよう。