マネジメントの意味とは?業務内容やオンライン環境でも成功させる方法を紹介
「マネジメント」という言葉は、ビジネスの世界では当たり前のように使われます。しかし、その意味や定義についてきちんと理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
「マネジメント」は直訳すると「管理」「経営」という意味になりますが、ビジネスにおける意味や定義はもう少し複雑です。マネージャーを務めるためには、「マネジメントとは何か?」という基本知識から理解する必要があります。
この記事では、マネジメントの意味や定義をはじめ、求められるスキルや業務内容を紹介します。また、リモートワークの普及とともに重要性が高まっている、オンライン環境でのマネジメント方法についても解説します。
目次
マネジメントとは
マネジメント(management)とは、「経営」「管理」を意味する言葉です。
ビジネスにおいては「経営管理」「組織運営」「目標を達成するための仕組みづくり」といった意味合いで使われます。
ドラッカーによる「マネジメント」の定義
アメリカの著名な経営学者、ピーター・ドラッカーはマネジメントを「組織としての成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しています。
また、マネージャーを「組織の成果に責任を持つ者」と定義しており、著書『マネジメント【エッセンシャル版】』のなかで以下のように言及しています。
マネージャーは、自らの資源、特に人的資源のあらゆる強みを発揮させるとともに、あらゆる弱みを消さなければならない、これこそ真の全体を創造する唯一の方法である
マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則 ピーター・F・ドラッカー
マネジメント(およびマネージャー)は、いかにヒト・モノ・カネの経営資源を効率的に活用できるか、経営資源のなかでも優秀な人材’(ヒト)を発掘・育成できるかが重要なポイントになると考えられます。
「マネジメント」と「リーダーシップ」の違い
マネジメントと似た言葉として「リーダーシップ」があります。マネジメントとリーダーシップは「目標を達成する」という目的は同じですが、求められる能力が以下のように異なります。
- マネジメント:目標を成し遂げるための手段や方法を考え、管理する能力
- リーダーシップ : 目標達成に向かってメンバーを導く能力
また、マネジメントは結果への責任を負いますが、リーダーシップは結果への責任を負わない点で異なります。
マネジメントの種類
「マネジメント」には「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ローアーマネジメント」という3つの階層があります。
それぞれの役割は以下の通りです。
階層 | 役割 | 役職例 |
トップマネジメント | 自社の基本方針の決定、ビジョン・計画の立案および経営戦略を検討し、意思決定を行う。 | 代表取締役、社長、経営層 |
ミドルマネジメント | 経営層と現場の橋渡し役を担う。経営層のビジョンや考えを現場に伝達し、現場からの意見を吸い上げて経営層に伝達する。 | 部長、課長 |
ローアーマネジメント | 現場のメンバーを指揮・監督する。 | 係長、主任 |
ローアーマネジメントは、役職を持たない人が担うケースもあります。
業務別マネジメント
マネジメントは階層だけでなく、業務によっても求められる内容が異なります。代表的なマネジメントの種類は以下の通りです。
種類 | 内容 |
チームマネジメント | チームのコミュニケーションを活発にして、生産性を向上させるマネジメント |
プロジェクトマネジメント | プロジェクトの進捗を管理するマネジメント |
モチベーションマネジメント | チームまたはプロジェクトメンバーのモチベーションを高めることを目的にするマネジメント |
ナレッジマネジメント | 個々の従業員が持つ経験や知識を管理するマネジメント |
ストレスマネジメント | 従業員のストレスを緩和、上手にコントロールするマネジメント |
メンタルヘルスマネジメント | 従業員が心理的に安心して働けるような環境づくりをするマネジメント |
上記の業務別マネジメントに関しては、階層と違って、兼任で担当するケースもあります。
マネジメントが求められる背景
先述したように、マネジメントは限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を有効活用させて、企業を継続的に発展させるために必要不可欠なもの。とくに、少子高齢化による労働人口の減少が著しい現代においては、人材の有効活用は企業にとっては重要な課題です。
マネジメントによって経営資源を有効活用し、生産性を高めることは企業の成果に直結し、ひいては「社会貢献」の役割も果たします。
マネジメントの業務内容
マネジメントの業務内容には、主に次のようなことがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
目標設定
まず、マネジメントにおいて取り組むべきは目標の設定です。目標やビジョンが明確でない組織はバラバラになってしまい、チームとしての力を発揮できません。
ちなみに、ピーター・ドラッカーは目標の設定について、著書『マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則』のなかで以下のように言及しています。
目標には、はじめからチームとしての成果を組み込んでおかなければならない。それらの目標は、常に組織全体の目標から引き出したものでなければならない。組み立てラインの職長さえ、企業全体の目標と製造部門の目標に基づいた目標を必要とする
マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則 ピーター・F・ドラッカー
設定した目標は組織全員に共有することが重要です。経営層や一部の管理職にとどめるのではなく、現場のメンバーにまで浸透させることによって、全員が目的意識を持って業務に取り組むことができるでしょう。
チームビルディング
チームビルディングとは、チームメンバー個々のスキルや能力を最大限に発揮して、チームのパフォーマンスを上げるための取り組みです。グループワークや社内イベント、ゲームなどを通じて、チームメンバーの関係強化やマインドセットの形成を図ります。
チームビルディングに取り組むことでメンバーの特性を把握できるため、適切な人材配置を行うことができます。
関連記事:
チームビルディングとは?目的やビジネスメタバースが果たす役割を解説【具体例も】
進捗管理
チームやプロジェクトの目標に対する進捗を管理することも、重要なマネジメント業務の一つです。メンバーの業務進捗だけではなく、売上や利益といった数値管理も求められます。
進捗をただ管理するのではなく、進捗に応じて業務内容を改善したり、リソースの再配分を検討したりします。
評価・目標に対するフィードバック
マネージャーは、メンバーの実績に対して正しい評価を下すことで、メンバーのモチベーションの維持や、今後の適切な業務の割り当てが可能となります。
正しい評価を下すためには、メンバーの成果だけでなく、日頃の取り組み(プロセス)を詳細に把握しておくことはもちろん、メンバーと信頼関係を構築しておく必要があります。
また、評価をして終わりではなく、改善すべきポイントもフィードバックしてあげましょう。
人材育成
企業にとって最も重要な経営資源である人材を育成することはマネージャーの重要な役割です。メンバー個々に合った育成方法を考え、メンバーのレベルに応じて、どこまでを管理し、どこまでを任せるべきかを見極めましょう。
場合によっては精神的なサポートも必要となるため、定期的に1on1を実施することもおすすめです。
人材育成が上手くいけば、メンバーのなかから新しいマネージャー人材を生み出すこともできるでしょう。
マネジメントに必要な4つのスキルとは
マネージャーに求められるスキルは多岐にわたりますが、ここではマネジメントに必要な代表的な能力を4つ紹介します。
マネジメントの知識
マネジメントの手法は多岐にわたるため、まずはそれらを知識として身につけておく必要があります。マネジメントの目的や役割、手法を理解しておくことで身につけるべきスキルも自ずとわかってくるでしょう。(マネジメントを学べる本については後述します。)
また、マネジメントにおいては経営に関する知識も不可欠であるため、経理・財務、法務、人事など幅広い領域の知識を習得することが理想です。
コミュニケーション能力
マネジメントにおいては自身の想いを伝えるため、またメンバーの想いを汲み取るためにコミュニケーション能力は欠かせません。
挨拶をする、簡潔に伝える、相手の心理を察するなどの基本的なコミュニケーションの手法はもちろんのこと、相手を否定しない、多様性を受け入れるなど、メンバーに安心感を与えられるような言動を心掛けましょう。
論理的思考力
マネジメントの重要な役割の一つがメンバーを正しい方向に導くこと。メンバーに納得して業務に取り組んでもらうためには、論理的に説明する必要があります。
「背中を見せて育てる」はリーダーシップを発揮する上では効果的かもしれませんが、マネジメントにおいてはきちんと言葉で説明することが求められます。
論理的に説明するためには、曖昧な表現や抽象的な言葉を使わずに、具体的に何をすべきなのかを明確にして、それを具体的な言葉にして伝える癖をつけましょう。
ファシリテーション能力
ファシリテーションとは、メンバーが活動・発言しやすいように舵取りすること。マネジメントにおいては会議の進行や日常業務をスムーズに進めるためにファシリテーション能力は欠かすことができません。
ファシリテーション能力を鍛えるためには、多くの会議や対話の場を経験するだけでなく、実践した後に良かった点と悪かった点を振り返ってみて改善することが大事です。
マネジメントについて学べるおすすめの本
マネジメント業務を行うためにはマネジメントに関する基本知識を身につけることが重要です。ここでは、マネジメントを学ぶのにおすすめの書籍を3冊紹介します。
『マネジメント[エッセンシャル版]-基本と原則-』ピーター・F・ドラッカー
出版社 | ダイヤモンド社 |
著者 | ピーター・F・ドラッカー、上田惇生(編訳) |
概要 | マネジメントの基礎を学べる入門書であり、マネジメント本の「定番」として知られる名著。 |
『マネジメント[エッセンシャル版]-基本と原則-』は、「マネジメントの発明者」として知られるピーター・ドラッカーの著書『マネジメント 課題、責任、実践』を初心者向けにまとめた一冊。
マネジメントに関する基本的な考え方が体系的にまとめられているため、マネージャー初心者だけでなく、長らくマネージャー職を経験した方がマネジメントについて学び直す際にも最適です。
『人を動かす』D・カーネギー
出版社 | 創元社 |
著者 | D・カーネギー、山口 博(翻訳) |
概要 | 自己啓発本の原点とも呼ばれ、人間関係にまつわる30の原則を学ぶことができる名著。 |
『人を動かす』は、自己啓発やプレゼンテーション、対人スキルなどの開発に尽力したD・カーネギーが「人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」の計30の人間関係にまつわる原則を記した一冊。
1936年の発売から世界累計で2000万部以上売り上げを記録しており、『マネジメント[エッセンシャル版]-基本と原則-』と同様に、マネージャーが読むべき定番本として知られています。
『ビジョナリー・カンパニー 2- 飛躍の法則』ジム・コリンズ
出版社 | 日経BP |
著者 | ジム・コリンズ 、山岡 洋一 (翻訳) |
概要 | 全米1435社のなかから飛躍的に業績を伸ばした「ビジョナリーカンパニー」11社のデータを分析し、優良企業の条件をまとめた一冊。 |
『ビジョナリー・カンパニー 2- 飛躍の法則』は、ピーター・ドラッカーの後継者ともいわれる経営学者のジム・コリンズの著書。業界や時代を超えて生存する、偉大な企業「ビジョナリーカンパニー」を競合企業と比較し、その特徴について解説しています。
ビジョナリーカンパニーシリーズは全4冊出ていますが、『ビジョナリー・カンパニー 2- 飛躍の法則』は「リーダーシップ」について詳しく書かれているため、マネジメントを学ぶのに最適であり、座右の書として挙げる経営者が多いことでも知られています。
マネジメントにおける直近の課題
ビジネス環境の変化とともに、マネジメントを取り巻く環境や求められるスキルも変化しています。
ここでは、マネジメントにおける直近の課題を整理しましょう。
マネジメント人材の減少
先述したように、労働人口の減少傾向とともに、マネジメント人材も不足傾向にあります。また、マネージャーになると責任が大きくなるため、「管理職にはなりたくない」「出世したくない」と考える若者が増えています。
日本生命が調査したデータ(※)によると、20代の約80%が「出世したくない」と回答しており、出世することよりもワークライフバランスを重視する人が増えています。マネジメント人材の不足は今後さらに深刻になるでしょう。
<参照>(※)日本生命保険相互会社|第155回 20代で「出世したくない」が77%だが、それでも心配いらない理由とは?
マネジメントスキルの習得に意欲的な若者も多い
「出世したくない」と回答する若者が増えている一方で、マネジメントスキルを身につけたいと考えている人は一定数存在しています。
若年層向けの就職支援事業を展開する株式会社ジェイックが18歳〜30代の正社員を対象にした調査(※)によると、「入社1年目までに習得したいスキル」の第3位に「マネジメントスキル」が挙げられています。
企業は、マネジメントスキルを身につけたいと考えている人に対して、きちんとしたマネジメント教育を実施できる体制を作ることが重要です。
<参照>(※)株式会社ジェイックのプレスリリース| 若手正社員に「入社1年以内に習得したいスキル」を調査
マネジメントに求められる役割の変化・多様化
労働人口が減少しているなかでも働き方は多様化しています。とくにリモートワークが一般化して以降は、これまでのマネジメント方法が通用しない場面が多く、オンライン環境でのマネジメントに課題を抱えている企業が増えています。
オンラインであろうと、オフラインであろうとマネジメントの基本は変わりませんが、オンラインならではのポイントを押さえておくことは大事です。
関連記事:
リモートワークとは? 意外と知らない歴史や導入する場合のポイントを紹介
オンライン環境でのマネジメントを成功させる方法
前提として、オンライン環境でのマネジメントは主に次の2つの理由により、難易度が高いことが事実です。
- コミュニケーションが取りづらい
- 業務プロセスがみえない
マネジメントにおいてメンバーとの関係構築は必要不可欠ですが、リモート環境では出社時よりもコミュニケーションが不足するため、メンバーと関係を構築するのが難しくなります。
また、従業員の業務プロセスが見えづらいことで「結果主義」「アウトプット重視」になり、正しい評価ができなくなってしまうのです。
オンラインマネジメントを成功させるには、次の5つの施策を実行しましょう。
それぞれ、詳しく解説します。
コミュニケーションツールの導入
オンライン環境でコミュニケーションを創出するために、zoom、Google MeetなどのWeb会議(ビデオ通信)ツールの導入は必須です。Web会議ツールは会議にだけ使用するケースが多いですが、オンライン環境では雑談の場としても、積極的に活用するのがおすすめです。
またオンライン環境では、誰かに質問や相談をしたいときに、どのタイミングで連絡を取れば良いのか悩むケースが多くなります。
ビジネスメタバースのoviceでは、メンバーの状況がバーチャルオフィス空間上で確認できるので、いつ話しかけて良いかの判断がしやすくなるメリットがあります。オンライン環境におけるコミュニケーションツールの一つとして、ぜひご検討ください。
メンバーの業務報告の徹底
オンライン環境ではメンバーの業務進捗がわかりにくいため、メンバーに業務の進捗を報告してもらうようにしましょう。
なお、報告する頻度は毎日または週に1回など、メンバーと相談して決めましょう。
定期的な1on1の実施
オンライン環境の場合、日々の業務報告だけではメンバーの状況がわからないこともあるため、直接1対1で話す「1on1」の開催がおすすめです。
毎日10分だけ、週に1回30分など、定期的に1on1の時間を設けるようにしましょう。
ナレッジの共有
オフラインではスムーズに進められる業務(入社時のPC設定やツールのインストールなど)も、オンラインだと手間がかかってしまうことがあります。
また、オンラインでは他人の業務を直接見て学ぶことができないので、業務に関わるスキルを習得するのが遅くなってしまうこともあるでしょう。
オンラインでもオフラインと同じように業務を進められるように、業務のプロセスやノウハウなどのナレッジをスプレッドシートやNotionなどのテキストツールにまとめておくことがおすすめです。
チームビルディングゲームの開催
マネジメントと同様にチームビルディングもオンライン環境では難しいものですが、ゲームならオンラインでも気軽に楽しむことができます。
週に1回、月に1回など定期的にチームビルディングゲームを開催しましょう。
チームビルディングゲームについては、下記のページで詳しく解説しています。
関連記事:
チームビルディング研修に使えるおすすめゲーム&自作するときのポイント
まとめ
今回は、マネジメントの概念や業務、オンライン環境で実施する際のポイントまでを解説しました。
マネジメントは、マネージャーとメンバーとの信頼関係を構築することが重要であり、そのためには日頃からコミュニケーションを活発にとることが大事です。
オンライン環境ではコミュニケーションが不足しやすいですが、Web会議ツールやビジネスメタバースを活用してコミュニケーションを創出しましょう。
オンラインでのマネジメントに課題を感じている方は、ぜひ一度ビジネスメタバースのoviceをご検討ください。