人材育成とは?考え方や具体例、取り組む上で大切なことなどを紹介
人材育成に関心があるものの「どうやって取り組めばいいの?」と悩んでいる企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
人材育成に取り組むと、社員の能力が向上し生産性が良くなることはもちろん、エンゲージメントが高まり、離職が減るなどのメリットがあります。
この記事では、人材育成の概要や目的などについて、詳しく紹介していきます。また、実際に人材育成に取り組むときの具体的な進め方も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
人材育成とは?
人材育成とは文字通り、「人を育て、成長させること」を意味します。
企業の3大経営資源である「ヒト・モノ・カネ」のなかで、モノやカネを生み出す「ヒト」は最も重要です。
優秀な人材の確保、維持は難しく、事業の発展に向けて人材育成は欠かせません。
なお、人材を育成した上で人材活用を最適化することは「人材育成マネジメント」と呼ばれます。
人材育成の対象者は?
「人材育成」と聞くと、新入社員に対するものと思われやすいですが、中堅社員や管理職も対象となります。
ここでは、新入社員、中堅社員、管理職の階層ごとに、どのような人材育成を行うのかを説明していきます。
新入社員
新入社員には、学生気分を脱し「一人の社会人」の意識を高めてもらう必要があります。
さらに、企業理念や企業文化を理解し、自社への帰属意識を芽生えさせ、チームの一員としての自覚を育みます。
中堅社員
中堅社員とは、入社3年目以降でまだ役職がついていない社員を指すのが一般的です。
後輩社員への指導スキルを身につけさせると同時に、将来の管理職候補として、上層部と若手社員の間に立ちながら、業務をスムーズに遂行できる人材に育てる必要があります。
管理職
管理職に対しては、管理職の役割を理解した上でプレイヤーを脱し、経営者の視点でマネジメントを行える人材への育成が求められます。
優秀な部下を育成し、組織をスムーズに運営できる能力を備えてもらうことも必要です。
人材教育との違い
人材育成と混同されやすいものとして「人材教育」があります。人材教育は知識やスキル、ノウハウそのものを教えることです。
例えば、業務に必要なツールの使い方や、折衝を円滑に進めるための営業スクリプトを教えることは、人材教育にあたります。
優秀な人材を育てるには人材教育が欠かせないため、人材教育は人材育成の一部と考えて良いです。
人材開発との違い
「人材開発」も人材育成と同列に考えられやすいですが、次のように根本的な考え方は異なります。
- 人材育成…事業を安定的に成長させるために「人材を育てること」
- 人材開発…人材をより有効に活用できるように「必要な能力を開発すること」
人材開発は、一定のスキルや能力を持つ人材が必要となったときに、短期間で身につけさせるイメージです。
企業が人材育成に取り組む目的と課題
中小企業庁の小規模企業白書(2016年)によると、小規模事業者が人材育成に取り組む目的として、次のようなものが挙げられています。
「技術・技能の向上」や「商品・サービスの専門知識の向上」を挙げる事業者が多いことから、「実務スキルが高い人材を育成して事業を成長させたい」と考えていることが伺えます。
その一方で、人材育成に取り組めていない小規模事業者も、約6割に達していることが現状です。人材育成が後回しにされているのには、次のような理由が挙げられています。
人材育成は、取り組み開始後すぐ売上に直結しないため、目の前の業務を優先してしまうことは仕方がないと考えられやすいです。
しかし前述の通り、ヒトは事業を運営していく上でもっとも重要な経営資源です。人材が育てば生産性が高まり、経営の促進や効率化につながります。また、社員のモチベーションやエンゲージメントも高まることも期待できます。
すぐに結果が出るものではないからこそ、人材育成は地道に継続的に取り組むべきなのです。
人材育成を進める手順や考え方
中小企業庁の調査では、人材育成に取り組んでいない理由として「何から取り組んだらいいのかわからない」と答えた企業も多く見られました。
人材育成は、下記の手順で進めましょう。
- 現状を把握する
- 組織のあるべき姿を明らかにする
- スキルマップを作成する
- 人材育成の方法を検討して開始する
ここからはそれぞれのステップの詳細や、考え方などを解説していきます。
STEP1.現状を把握する
まずは、組織内にどんな業務内容があり、それぞれ誰が担っているのかなど、社内の現状を把握するところから始めます。
部署や年次、階層ごとに、どのような人材がいるのかを把握しましょう。
その上で、現時点で社内に不足している人材や、人的資源に関する課題を明確にします。
STEP2.組織のあるべき姿を明らかにする
事業計画を踏まえて、組織が成長していくには3年後、5年後などのタイミングでどのような状態になっていることが理想かを予測します。そのためには、経営層に今後のビジョンを聞くことが必要です。
そして、その理想を叶えるために、STEP1で整理した人員がどのように成長すれば良いのかを考えます。
これにより「この部署には3年後までに、このスキルを持つ人材が5人は必要」などが把握でき、人材育成計画を立てやすくなります。
STEP3.スキルマップを作成する
組織のあるべき姿を明確にすると同時に、年次や役職に応じて必要とされるスキルを一覧にまとめましょう。
どの年次でどのような人材となっているべきかを明らかにし、評価基準を決めておくことで、これからの人材教育を全社的・体系的に進めやすくなります。
STEP4.人材育成の方法を検討して開始する
人材育成の方針が明らかになったら、具体的にどのような手法で人材を育てていくかを検討し、育成を進めます。
人材育成の具体的な手法については、次章で紹介します。
人材育成の3大手法と具体例
人材育成の手法には、「3大手法」と表現されるものがあります。
それぞれ、具体的な内容を見ていきましょう。
OJT
OJTとは、On-the-Job Trainigの略語で、現場で行う教育のことです。
具体的には、主に指導役となる先輩社員が新入社員や中途入社した社員に対し、実務を通して知識やスキルを教えます。
実際に先輩社員の仕事のやり方を間近に見てもらい、同じように業務を行うことで、業務に必要な知識やノウハウを効率的に得られます。
<OJTの具体例>
- 業務で使う機器や設備、ツールなどの基本的な操作を一緒に行う
- 先輩社員の営業に同行し、実際の営業の現場を体験する
- 会議に必要な資料のたたき台をつくり先輩社員と完成させる
Off-JT
Off-JTとは、Off-the-Job Trainingの略語で、セミナーや集団研修など実際の現場以外でおこなわれる研修を指します。
OJTがマンツーマンを基本としているのに対し、Off-JTは大人数を一斉に教育できることがメリットです。
<Off-JTの具体例>
- 新入社員に対し、電話の受け答えの仕方やビジネスマナーなどの研修を行う
- 中堅社員をリーダーシップやフォロワーシップについてのセミナーに参加させる
- 管理職に対し、コンプライアンス研修や個人情報保護研修を行う
SD(自己啓発)
SDとは、Self Developmentの略語で、自己啓発を意味します。OJTやOff-JTが会社主体の人材教育であるのに対し、SDは社員が個人的に業務に役立つことを学習します。
人材育成の一環としてSDを推奨する場合は、検定の受検費の補助や資格手当の支給、定時退社への協力などで社員をサポートしましょう。
<SDの具体例>
- 業務内容に関する専門書をそろえ貸し出す
- 業務に役立つ資格取得のための講座の受講料を補助する
- 外部講師を招いての語学研修を毎週開催する
人材育成に取り組むときに大切なこと
人材育成は成果が見えにくいため、取り組む側としても「本当に成果があるのか」と及び腰になりやすいです。
ここでは人材育成に成功するために知っておくべきことを、4つ紹介します。
定量的な目標を立てる
「社員の成長」は、数値で評価しにくいものです。しかし、資金を投じて人材育成を進める以上、費用対効果の確認は欠かせません。そのためには、人材育成を始めるときに、定量的な目標を立てることが重要です。
例えば、スキルマップを活用し、「3年次までにTOEIC750点を取得する」「管理職は管理職研修を年に最低3回受講する」など具体的な数値目標を設定しましょう。
評価期限を設ける
数値目標を設定したら、評価期限も設けましょう。期限がなければ、いつまでに何をすればいいのかわからなくなり、社員のモチベーションが下がるためです。
例えば「3年次までにTOEIC750点」をゴールとするなら、1年目は500点、2年目は600点と中間目標を定め1年ごとに評価するなど工夫しましょう。
長期的視野で取り組む
日本では4月に新卒を採用することが一般的で、自社に役立つ人材に「育てていく」という考えが根付いています。しかし、人材育成は簡単なことではありません。
数ヶ月など、短い期間で人材育成の成果を出そうと意気込まず、5年後、10年後の自社の理想の姿を思い描き、長期的な視野で取り組みましょう。
コミュニケーションをとれる環境を整える
近年はテレワークなどで対面コミュニケーションが減っており「OJTをしたくても上手くできない」「普段の勤務の様子が見えないため、評価しづらい」と悩む企業も多いです。
人材を育成して正当に評価するには、出社していなくても手軽にコミュニケーションをとれる場を用意する必要があります。
例えば、ビジネスメタバースoviceでは、インターネット上にありながらまるで現実のオフィスで働いているかのようなバーチャル空間を提供しています。
アバター同士の距離や向いている方向に応じて声の大きさや指向性が変わるので、オフィスにいるかのような会話が可能です。「誰がどこで何をしているのか」といった勤務状況も可視化できるので、OJTもスムーズに進められます。
人材育成で知っておきたいフレームワークや理論
最後に、人材育成を進める上で知っておきたいフレームワークや理論を紹介します。
ギャップ分析
ギャップ分析は、理想と現状のギャップを明らかにし、理想に近づくために必要な行動や物事を考えるフレームワークです。
自社が有する人的リソースと将来の理想のあるべき姿を比較する「ギャップ分析」は、人材育成プランを立てるときに行うと効果的です。
コルブの経験学習モデル
コルブの経験学習モデルは、人材育成にOJTが有効とされる根拠となる理論です。具体的に、人間は経験→内省→概念化→実践を繰り返し、学んだことを身につけると考えられています。
OJTで日々業務を繰り返すことは「経験」にあたりますが、そこから内省→概念化へと進むことは簡単ではありません。そのようなときには、日報などをプラスし、社員が自身の業務を振り返る機会を与えると良いです。
ロミンガーの法則(7:2:1モデル)
ロミンガーの法則とは、人間の成長に貢献するのは「経験」が7割、他者からの「陶酔」(上司や先輩などの指導)が2割、「研修」が1割であるとした法則です。リーダーシップの研究機関であるロミンガー社が提唱しています。
この法則を根拠に「研修は人材育成に役立たない」と考える人もいます。しかし、実際に業務に取り組んだり、上司・先輩の指導を受けたりする時間は、研修を受ける時間より圧倒的に長いはずです。
むしろ研修は「わずかな時間であるにもかかわらず、1割もの影響がある」ということになります。研修は短時間で成長を促せる貴重な機会と判断し、質の良い時間を提供しましょう。
まとめ
人材育成は、「時間がかかる」「成果が目に見えにくい」などの理由から、後回しにされやすいです。しかし、企業の成長には、経営資源である「ヒト」の育成が欠かせません。
とはいえ、近年は働き方改革などでビジネス環境が大きく変化し、「人材を育成したくても、実行が難しい」と悩む企業も増えています。
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