“自由に働く”を愛する私が考えた「フレキシブルワーク」にまつわる3つの疑問
現在アメリカでは「オフィス勤務」に戻る企業が存在する一方で、「フレキシブルワーク」という新しい働き方が話題になっている。2023年3月のINSIDER INTELLIGENCEの記事によると、銀行のフレキシブルワーク制度が進化し続けているそうだ。
「フレキシブルワーク」とは、働く場所や時間・休暇の自由度を高めた働き方のことを指し、「9時から17時まで」という決まった時間に働くのではなく、職務特性やライフバランスに合わせて働く時間や環境を変化させる働き方だ。リクルートワークス研究所によると、2017年の時点で英国、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダ、スウェーデン、デンマーク、米国の8ヶ国が積極的に取り入れている。
現在25歳、10年前にフリーランスとして働き始めたSNSプロデューサー兼作曲家である筆者は、いつだってフレキシブルな働き方を求めてきた。自身を律して勉強や作業をすることは得意なタイプだったが、他人から指図されることを異様に嫌がる子供だったため、自分で生活をコントロールできる働き方がないかと考えてたどり着いた答え、それが「フリーランスになること」だった。
そんな私からすると、フレキシブルワークは自由に働くことと正社員のメリットを両立できる夢のワーキングスタイルに思える。
さらに「フレキシブルワーク」について調べ進めていると、3つの疑問が生まれた。
- フリーランスではないのに、本当に自由な働き方ができるのか?
- なぜ日本には浸透しない?(浸透スピードが遅いのか?)
- 企業側のフレキシブルワークのメリットは何なのか?
この記事では上記3つの疑問にスポットライトを当て、考察してみようと思う。皆さんの考えもぜひシェアしてほしい。
目次
疑問1. フリーランスではないのに、本当に自由な働き方ができるのか?
正社員の働き方として一般的なのは、いわゆる「9時5時勤務」だと思う。サラリーマンの父を見て育った筆者は、学生時代から「大人になっても毎朝8時前には家を出ないといけないのか」と憂鬱な気分になっていた。そのため、比較的自由な働き方ができる「フリーランス」という存在を知り、問答無用でその働き方をチョイスしたというワケだ。
しかし正社員のキャリアを選んだとしても「フレキシブルワーク」を選択することができれば、憂鬱な朝は来ないらしい。
働く場所について
リモートワークやハイブリッドワークが導入された時点で「働く場所」に縛られなくなった方は多いと思うが、フレキシブルワークも同様、作業内容や目的に合わせて働く場所を柔軟に選ぶことができる。
基本的には自宅やカフェで働き、必要であれば現場やオフィスに行く。毎朝満員電車に揺られる必要はない。
働く時間について
日本で頻繁に聞くことがある「フレックスタイム制」は、あらかじめ定めた総労働時間内で、労働者自ら始業時間と終業時間を決めることができる制度だ。この制度を導入している企業の多くが「コアタイム制度」を採用しており、「平日午前11時から午後4時は必ず勤務しなければならない」などのルールを設けている。
しかし、小さな子供を育てているお母さんやお父さんにとって、この「コアタイム」を毎日気にしながら子育てと仕事を両立することは大変だと思う。それが、「フレキシブルワーク」の実践方法によっては、動かせない予定(会議など)以外の時間は、労働者の都合に合わせて働く時間を決めることができる場合もある。フリーランスと同じだ。
期日内に業務をこなすことができるのならば、毎日同じ時間に働いても良いし、朝早くから働いても、家族と夕食後に働いてももちろん問題ない。集中力が切れてしまってモヤモヤするときは作業を中断してジムに行ってもいいし、友人とランチに出かけてもいい。
以上のことから、正社員でもフリーランス並み(※)にある程度自由に働けてしまうことがわかる。
※フリーランスは「働く場所や時間」だけなく、案件単位での契約あるいはタスク型業務を担当するなど、「企業との関わり方」や、「フリーランス=スキル特化型」であるという特徴がある。また、「正社員」という雇用形態が職業柄存在しない場合もある。
疑問2. なぜ日本には浸透しない?(浸透スピードが遅いのか?)
前書きで「フレキシブルワーク」を積極的に取り入れている8ヶ国(英国、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダ、スウェーデン、デンマーク、米国)を紹介した。しかしながら「フレキシブルワーク」というカタカナを日本で聞いたことがなかった。正直、全く浸透していないと思う。
なぜ浸透していないのか、仮説を立ててみた。
仮説①国民性
有名な話だが、フランス人は待ち合わせにオンタイムで来ない。ChatGPTへ尋ねた「フランス人との仕事あるある」の回答のように、ミーティング開始時間が遅れることは珍しくない。
(と油断した筆者がフランス人との待ち合わせに5分遅刻した際、フランス人メンバーが先に到着しているという謎ハプニングもあった。電車の乗り換えが上手くいきすぎたそうだ。)
その一方、日本人は時間に細かい人が多い。予定通りにスタートする会議、2分遅延しただけで文句を言われる電車…フレキシブルの欠片もないため、働き方がいきなり自由になっても困ってしまうのかもしれない。
仮説②ただ情報が遅い
世界の最先端の情報は英語で発信されることが多い。諸外国に比べて英語が話せる人口が少ない日本は、どうしても情報収集と拡散に時間がかかってしまう。
また日本は民主主義国家であり、多数派の意見が反映されやすい。英語が喋れて最先端の情報を持つ人口は少数派のため、彼らの価値観はなかなか反映されない。そのため、フレキシブルワークという文化も広まりにくいのかもしれない。
上記したものはただの仮説に過ぎないが、「働き方を変化させる」ということは経営陣にとっての負担も大きい。大多数の労働者が「フレキシブルワーク」を強く要求しない限り、新しい働き方を導入することは難しいのかもしれない。
疑問3. 企業側のフレキシブルワークのメリットは何なのか?
働く側(労働者)の都合に合わせて働けるフレキシブルワークだが、企業側にメリットがなければ導入は難しいだろう。そこで、企業にとっての「フレキシブルワークを導入するメリット」を考えてみた。
メリット①従業員の満足度が上がり、優秀な人材を獲得しやすくなる
スウェーデンのIKEA はフレキシブルワークを採用しており、従業員の満足度を高めている。その結果、企業イメージを高めることにも成功。国民が定める「最も魅力的な企業」としての認知も高く、「良好なワークライフバランス」「快適な職場の雰囲気」などのランキングで1位を獲得している。こうした取り組みにより、有能な人材を採用し定着させることにも繋がっているという。
また、全国の大学生・大学院生601名が回答した「Z世代・SDGsシューカツ解体白書プロジェクト」によると、63.2%の学生が「 働く場所に重視するポイント」に「ワークライフバランス」と答えている。
ワークライフバランスの推進により、生産性の向上、離職率の低下など、さまざまな効果があることが知られているが、「ワークライフバランスが整っている状態」というのは一人ひとり異なる。だからこそフレキシブルワークを導入し、働き方を個人に委ねることが有効なのかもしれない。
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メリット②効率が上がる
WIREDの「夜型」の人が努力しても、決して「朝型」になれない:研究結果によると、「朝型か夜型か」は遺伝子によって決まるため、どんなに努力しても自分のタイプを変えることはできないそうだ。定時ではない時間帯で能率が高まる人が存在し、その影響は生産性だけでなく、精神の健康にも及ぶ(自分の遺伝子に逆らうことが精神的にいいはずがない)。
つまり、集中力の高い時間帯を自身で把握し、その時間に働くことができれば効率も向上する。
メリット③本当に一緒に仕事をしたい人を採用できる
アホみたいな話だが、本当だ。ハイスキルで優秀な人材は引く手あまたなので、ある程度の自由を求める傾向にある。
「柔軟に働くことができる環境」はある意味企業にとって不便なことかもしれないが、労働者にとっての「魅力的な条件」であることは間違いない。
柔軟に働くことのメリットは大きい
正直、「フレキシブルワーク」という働き方が国民全員に有益であるかはわからない。しかしフリーランスとして10年生きてきた筆者は、「柔軟に働くこと」が生産性を高め、ワークライフバランスも向上すると確信している。
働き方を自身で選択できる今の時代、「フレキシブルワーク」がどのくらい日本に受け入れられるのか、それによって日本人の生活はどのように変化するのか…今後が楽しみだ。
フレキシブルワークを可能にするバーチャルオフィス“ovice”について知る
フレキシブルワークという働き方のアイデアについて、全方位からまとめました。働き方改革に取り組む際には、新時代の働き方とその推進方法を理解できるこちらの資料をぜひお役立てください。