ワーケーションの課題とは?デメリットや対策と併せて紹介
リモートワークやハイブリッドワークなど、多様な生き方に合わせた新しい働き方が続々と誕生していますが、その中でも特に注目を集めているのが「ワーケーション」という働き方。
これから多くの企業に普及していくことが期待されているものの、まだまだ課題が多く一部の企業にしか導入されていません。ワーケーションに興味はあるものの、課題が気がかりで導入に至っていない企業も多いのではないでしょうか。
今回はワーケーションにどのような課題があるのか、どのような対策が有効なのか紹介していきます。
ワーケーションとは
ワーケーションとは、リゾート地などで休暇を取りながら仕事をする働き方のこと。仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた造語です。リゾート地などに数日滞在し、日中は仕事、夕方以降にアクティビティをするなどして、仕事と休暇の両方を行います。
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ワーケーションが注目される背景
なぜ、わざわざ仕事と休暇を同時にする必要があるのか疑問に思う方もいるかもしれません。その答えは日本人の「休み下手」にあります。海外では仕事とプライベートを割り切って考え、バケーションを満喫してリフレッシュし、また仕事に取り組むのが一般的です。
一方で日本人は、平日に休むのに抵抗を感じる方も多く、有給休暇を使い切らない人も少なくありません。総合旅行サイト、エクスペディア・ジャパンの国際調査では、日本人の有給休暇取得率は約60%。取得率の状況が6年ぶりに改善され、過去11年の中で最高の取得率を記録したものの、まだ他国と比べて高いとは言えません。
そのような働き方の結果、心身の疲労がたまり、健康を崩す方も少なくありません。休むことに抵抗のある日本人に、少しでもリフレッシュの時間をとってもらうための働き方がワーケーションなのです。
また、ネガティブな理由だけでなく、働く場所を変えることで、新たなアイディアが湧きやすいなどポジティブな理由でワーケーションを選ぶ方も増えています。最近ではワーケーション専用のサービスが生まれるなどして、徐々に認知度も高まっているのです。
ワーケーションとテレワークの違い
職場以外で働くことから、ワーケーションもテレワークの一種と言えます。そのため、テレワークをする上での注意点はワーケーションにも当てはまると言えるでしょう。
しかし、あえて両社の違いをあげるとすればテレワークの大きな目的が「仕事の効率化」であるのに対し、ワーケーションの大きな目的は「休暇をとること」。目的が違えば意識することも大きく違います。ワーケーション中は何をすべきなのか、優先順位をつけて行動をとることが重要です。
ワーケーションのデメリット
ワーケーションの普及を妨げる課題とはなんなのか。一つずつ見ていきましょう。
慣れない場所でパフォーマンスが落ちる可能性
ワーケーションでは慣れない環境で仕事をすることが多いため、想定外のことが起きることも珍しくありません。例えば、事前に調べてWi-Fi環境があることわかっていても、いざ現地に行ってみると、通信速度が遅くて仕事にならないこともあります。
行政からも「ワーケーション推進事業」として各地へ補助金を給付するなど様々な支援が行われていますが、地域によっては安定した作業環境や通信状況を確保しきれていないのが現状です。
また、通信環境以外にもデスクや椅子の高さ、照明の明るさが普段と変わることで集中しにくくなることも考えられます。何度もワーケーションをすることで気にならなくなるかもしれませんが、慣れないうちは戸惑ってしまうかもしれません。
ワーケーションのための制度をつくらなければならない
これまで日本は長らく「仕事は会社でするもの」という前提で制度を作ってきました。テレワークをするために会社の制度を見直した企業も多いと思いますが、企業の規模が大きくなればなるほど、制度を作り直す手間は大きくなっていきます。
テレワークとは違い、ワーケーションは必ずしも必要ではないため、どうしても企業の優先順位が低く、なかなか導入に至らないケースも少なくありません。
ワーケーション中の事故や怪我の扱いが曖昧
ワーケーションの制度を作る上で重要になるのが、ワーケーション中の事故や怪我の扱いです。通常、業務中に事故などで怪我を負えば労災扱いになりますが、業務とも休暇ともとれるワーケーション中では扱い方も微妙になります。
そのため、どのような条件下での怪我なら労災になるのか、予め定めておかなければなりません。もちろん、実際にワーケーションを運営していく中で想定外の事態も起きると思うので、柔軟に制度を変更していく体制も必要になります。
ワーケーションにかかる費用の負担
ワーケーションには当然ながら交通費や宿泊費といった費用がかかります。それらを誰が負担するかは会社の規則によって異なりますが、今は多くの企業で従業員負担になっているケースも多いようです。
自己負担で旅行に行くなら、仕事などせずに休暇を満喫したいと思う方も多いでしょう。今後、企業がどれだけワーケーションの費用を負担してくれるようになるかが普及の鍵になるかもしれません。
セキュリティ面のリスク
ワーケーションでは、自宅でのテレワーク以上にセキュリティを意識しなければなりません。ワーケーション先の通信環境は必ずしも安全とは言い切れないため、自社でモバイルWi-Fiなどを用意する必要もあります。
また、ワーケーション中にPCを放置したり、置き忘れることも大きなリスクです。通信環境だけでなく、PCやデータを入れたUSBの取り扱いなど、一人ひとりの社員が徹底して遵守する姿勢も求められます。
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ワーケーションできない職種との不公平感
テレワークと同様、ワーケーションも可能な職種と不可能な職種に分かれます。テレワークができない職種の中には、一部の職種だけテレワークできることに不満を感じている方も少なくありません。
テレワークは、まだ仕事をしているので納得している方も、遊びながら仕事をしているワーケーションをしている人がいることに不満を感じる方もいるでしょう。ワーケーションできない人たちをいかにケアするかも、ワーケーションをスムーズに運営するために必要になります。
バケーションにならないリスク
休み下手な日本人に休暇をとらせることが目的のワーケーションですが、仕事をした後に頭を切り替えて休暇を楽しめるでしょうか。仕事のことが頭から離れず、休みを満喫できない方も少からずいるはずです。
心も体も休めてないのに有給休暇は消化されていき、結果的に健康を害するリスクもゼロではないのです。企業側は制度を作って安心するのではなく、本当にワーケーションで社員がリフレッシュできているのかアンケートをとりながら運用していかなければなりません。
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ワーケーションを充実させるための対策
上記の課題を解決し、ワーケーションを充実させるための方法を紹介します。
作業に適した環境の整備(ワーケーション施設を使う)
ワーケーション先でも普段と変わらないパフォーマンスで働くには、仕事に適した環境が重要です。最近ではワーケーションのための施設もあるので、そのような施設を活用するのがおすすめ。
ワーケーション施設は仕事をするのが前提なので、通信環境はもちろんデスクなども仕事向けのものが用意されているのが特徴です。ワーケーション施設では法人向けの契約もできるので、企業として契約すると社員も快適にワーケーションを楽しめるでしょう。
ワーケーションに即した就業規則の整備
ワーケーションを始めるなら、ワーケーションに対応した就業規則を用意しましょう。どういう条件であれば費用を会社が負担してくれるのか、どの職種であればワーケーションを活用していいかなど、細かく決めておきましょう。
あらかじめ規則を整備しておくことも重要ですが、ワーケーションを運用しながらより活用しやすいように改善していく仕組みにすることも重要です。
補助金や助成金の活用
ワーケーションをする上で課題になる費用については、ワーケーション補助金制度を活用して負担を減らしましょう。自治体によって助成金をもらえる条件や金額が違うので、活用する場合は自社の都合にマッチした自治体を選ぶことが重要です。
セキュリティ強化
ワーケーションをする際にはセキュリティにも注意しなければなりません。ワーケーション用の施設なら、通信環境のセキュリティも整備されているので、一般的な宿泊施設よりも安心できるでしょう。
ただし、重要なのは社員たちの意識です。どんなにセキュリティ環境が整っていても、データの扱いなどが不適切では意味がありません。ワーケーションを始める際には、全社員にセキュリティ研修を受けさせるなどの対策も必要です。
ワーケーション中の仕事範囲を明確にする
ワーケーションは仕事をするのと同じくらい休暇をとるのも重要なので、仕事の範囲は明確に決めておきましょう。仕事の範囲が曖昧だと、リフレッシュ中も仕事のことが頭から離れず休暇になりません。
ワーケーション中にどの仕事を終わらせるのか決めることで、社員たちも心置きなく休めるはずです。
マネジメントの仕組みづくり
ワーケーションに限らず、マネージャーと離れて仕事をすることで、従来のマネジメント方法が通用しなくなります。離れていても適切にマネジメントできるように、労務管理ツールなどを活用しましょう。
ツールを使えばリアルタイムで仕事の進捗などが可視化されるため、いちいち仕事が終わっているか確認する必要もありません。離れていてもどれくらい仕事をしているのか分かるので、適切な評価もできるでしょう。
バーチャルオフィスを導入する
ワーケーションをする上で、労務管理ツールと同じくらい重要なのがバーチャルオフィスです。離れて仕事をするとコミュニケーションが減ってしまい、いくらオンライン会議ツールを導入しても、雑談が生まれることはありません。
しかし、バーチャルオフィスツールなら、まるでオフィスに出社したかのようなコミュニケーションが可能になり、自然と雑談も生まれます。ワーケーション事態が話のネタにもなり、チームの雰囲気も盛り上がるでしょう。
ワーケーションの実践を、複数人にインタビュー!
働き方事例シリーズvol.4「ワーケーション」|oViceBlog