テレワーク下での信頼関係の鍵は「テキストコミュニケーション能力」
恋人へのお別れもテキストで終わらすということがもう驚かれない程に、現代の「テキストコミュニケーション」は世の中に馴染んできているが、仕事においても同じことが言えるだろう。
これまで「直接会って話すべき」と思われていた内容も、今やZoomやテキストで十分に思われているのではないだろうか。
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9年前からテレワークで業務を進めることは可能だった
筆者は9年前にフリーライターとしてキャリアをスタートさせる前に、様々な企業の面接を受けた。某ファッション誌の面接はもちろん彼らのオフィスで行われ、それが普通の面接のあり方だと思っていた。しかし、あるIT企業は私の中の常識を打ち壊した。
Zoomという存在がまだ日本に知られていない頃(Zoomのサービスは2013年1月に開始されたそうなので、ローンチしてもうすぐ9年という計算になる)、Skypeを通して簡単な面談を行っただけで、ライターとして採用されたのだ。もちろん、正社員採用でもなく作業もそれほど難しいものではなかったが、筆者にとっては驚きの出来事だった。
あれだけ精神的にも体力的にも大変な思いをし、面接のためだけに交通費をかけて東京へ通っていたのに(そして不合格通知の連続だったのに)、こんなSkype一本で仕事が決まってしまうとは。
その後の契約は郵送されてきた書類にサインをし、返送して完了。業務も全てメールと電話で行われた(当時はSlackもなく、仕事でチャットアプリを使うという発想がまだ無かったため、「承知いたしました」という一文でさえもメールを使っていた)。
当時担当をしてくれた編集部担当者はメールと電話でのディレクションに慣れていた様子で、コミュニケーションのズレも都度修正しながら上手く業務を進めていくことができた。そしてその方とは一度も直接お会いしたことがない。
テレワークのキーは、テキストコミュニケーション能力
マネージメントする立場やチームワークでの仕事は、さらに複雑で大変だという意見があると思う。しかし、今の時代はZoomやバーチャルオフィスという便利なツールがたくさん存在しているので、テキストや電話だけでは伝わりにくかった内容も伝えやすくなったはずだ。
とはいえ、業務のコミュニケーションの中心はテキストが多い。そのため、文面上でのコミュニケーション能力が大切になる。
いくら対面でのコミュニケーション能力が高かろうと、わかりにくいメールやメッセージを送りつけてくる上司は厄介がられるし、文体で与えるイメージがあなたの人物像そのものになってしまう。
そこで今回はテキストコミュニケーションを円滑に進める上で心がけると良いチェックポイントをいくつか紹介する。そのテキストの送信ボタンを押す前に、確認してみて欲しい。
①自身のテキストの「視覚的インパクト」を確認する
あなたが書いたテキストが、相手にどんな心理的影響(インパクト)を与えるのかを確認するために、客観的に文章を読み直すという作業は極めて重要だ。
テレワーク勤務では、Zoomミーティング内で行われる会話も業務的な内容のみになりやすいので、あなたのユーモアや楽しい一面が伝わりにくい。しかし、あなたが現実で行ったコミュニケーション=(相手にとっての)あなたの人物像そのものになっている。
そして、テキストコミュニケーションでは言葉がダイレクトに伝わりやすい。
忙しい時に放った少し冷たい一言「了解」に対して、あなたの人柄を思い出し「きっと心の中ではお辞儀をしながらタイピングしてくれているな。」と思ってくれる部下は残念ながら少ない。
「冷たいな。結構時間かけて頑張ったんですけど・・・。私がどれだけ頑張ったのか分かってないんだろうな・・・。」と感じてしまう人の方が多いだろう。
もちろんその後、Zoomミーティングであなたが爽やかな笑顔で「先程の件、了解です!ありがとう!」と言えば、速攻誤解は溶けるだろう。しかし、わざわざ一旦誤解をさせておく必要もないのだ。
Harvard Business Review の記事「Slow Down and Write Better Emails (ペース落としてマシなメールを書こう) 」に書かれているように、文章が与える視覚的なインパクト(印象)を確認することは、高い読解・執筆スキルの一つである。
もちろん長々と感謝や想いを述べる文を毎回書く必要はないが、「了解」の一言だけでは部下に対する感謝や労いは伝わらないということを理解しておくことは大切だ。感謝しているのなら、「ありがとう」の一言を添えよう。その一言があるかないかだけで、文章全体が与える印象が柔らかくなる。
「こちらの意図を(良いように)深読みして、理解してくれるだろう。感謝してることくらい伝わっているだろう。」という期待は禁物だ。
Slack上で行われるチャットの全てに神経を巡らせてることは難しいかもしれないが、特に仕事の訂正を依頼をするとき・フィードバックをするときは、丁寧すぎるくらいがちょうど良いだろう。
Harvard Business Review|Slow Down and Write Better Emails
②タイプミスを避けるため、プラス2分間を校正に当てる
同じくHarvard Business Review 「10 Digital Miscommunications and How to Avoid Them (10のミスコミュニケーションと、予防策)」では、少し長めのメッセージを送信する前、タイプミスを防ぐために「プラス2分間を校正に当てると良い」と紹介されている。特に急いでいるとき・感情が高まっているときはタイプミスが起きやすく、あなたが感情的になっているという印象をテキスト受信者に与えやすいという。
テキストは個人のタイミングで読み、返信ができるという利点がある一方で、あなたの文章を読んでいるとき、相手の精神的な状況がどんな状態にあるかを想像しにくい。例えば、あなたが良いアイデアを得て興奮している最中メッセージを送ったとしても、相手の精神状態は異なった位置にいる可能性が高いだろう。
あなたが「これだけ興奮しているのだから多少のタイプミスくらい良いだろう!このワクワクも伝わるはずだ!」と思って放ったテキストも、相手にとっては「誤字脱字が多すぎて読みにくいな…」という印象で終わっている可能性も高い。
辛うじて内容は伝わるかもしれないが、あなたと相手の温度差は、良い人間関係を築く上でプラスになるだろうか。一方的な意見のシェアで終わっているのかもしれない。
Zoom等、相手の精神的状態がある程度見える環境でのやりとりなら、多少の温度差も構わない(人間なのである程度の感情の差ができるのは自然である)。しかし、テキストに関しては、相手がどんな精神状態で読んだとしても理解しやすい文章を心がけよう。
また、校正を行う際は、頭の中で読むだけだとタイプミスに気が付きにくいので、声に出して読むことをお勧めする。
Harvard Business Review|10 Digital Miscommunications and How to Avoid Them
③文頭にポジティブなメッセージを
仕事とはいえ、テキストを読むのは意外と億劫な作業で、後回しにしやすいタスクの一つである。テキストを読めば何かしら仕事のタスクが増える可能性が高いのだから、気持ち重めにメッセージを開封する人も多いだろう。
その億劫さを吹き飛ばしてくれるのは、冒頭のポジティブな一言だ。
送信者のキャラクターによって様々だが、元気な挨拶・丁寧でポジティブなフィードバック・お礼の言葉など、相手を尊重する一言が最初にあるかないかだけでそのテキストを読むときの気分がガラッと変わる。
④できるだけグループチャットで話す
CNET Japan「リモート環境で信頼されるためのテキストコミュニケーションの7つの極意 」で紹介されているように、部下と上司などの上下関係がある間柄で一対一のメッセージをすることは精神的負担が重くなる可能性が高いのだそう。やりとりの中で次第に精神的に追い込んでしまうなど、密室すぎるコミュニケーションが逆効果。
逆にグループチャットでは第三者がテキストのやりとりを見守ってくれている(何か意見があれば発言していくれる)ため、お互いに言葉使いや発言に無意識的に気を配ることができ、常に客観的な目線でやりとりを行うことができる。
<参照>CNET Japan|リモート環境で信頼されるためのテキストコミュニケーションの7つの極意
緊急事態宣言も明け、働き方も多種多様になっていく中で、今までとはまた違う「現代コミュニケーション能力」はより一層求められる。どんな働き方が求められようとも適用できるように、人間関係のあり方・築き方も進化していく必要がある。
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