テレワークによって起こる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を防ぐには?
新型コロナウイルスの影響もあり、2020年の春頃から全世界でテレワーク・ハイブリッドワークが主流になっている。それと同時に「テレワーク・バーンアウト」という言葉を聞くことが増えた。
「テレワーク・バーンアウト」とは、その名の通りテレワークによって生じるバーンアウト(燃え尽き症候群)だ。燃え尽き症候群といえば、人生を賭けて努力してきた部活動を引退した後や、大きなプレッシャーがかかったプロジェクトを終えた後など、過剰な心的ストレスのある状態から解放された後に無気力になる状態をイメージするだろう。
テレワーク自体は、働き方改革の一つのはずだ。もちろん、パンデミック禍でコロナ感染者数を増やさないための策であるが、毎日満員電車に揺られる必要がなくなり、家族との時間を増やすことができるなど、私たちのワークスタイルをよりよいものにするためのプランのはずだった。
ではなぜ「テレワーク・バーンアウト」が広まっているのか。そして、どのように防いだら良いのか、改善策を紹介する。
▼こちらの記事もおすすめ
コロナ禍におけるメンタルケアの重要性・テレワークでのセルフケアTips
リモートワークでメンタル不調になりやすい人は?ストレスの原因や対策を紹介
目次
なぜ、「テレワーク・バーンアウト」になるのか?
人々の性格を二分するときに、「introvert(イントロバート=内向的性格)」か「extrovert(エクストロバート=外交的性格)」か、どちらかに当てはめて考えることがある。「シャイ(内向的)」か、「積極的(外交的)」か、という表現もできるだろう。
さて、テレワークの日常を思い描いて、どちらのタイプがテレワークに向いていると思うだろうか?筆者は、2020年春のテレワーク導入が日本で積極的に行われていた頃、内向的な人の方がこのワークスタイルに向いているのではないかと考えていた。家から出なくて良い上、会社よりも居心地の良いスペース=家で仕事ができる。疲れたら徒歩数秒のベッドで横になって休め、Zoom会議でバレないように上着を着れば、朝起きて着替えずにパジャマで仕事をすることも可能だ。
しかし、TED TALK「3 steps to stop remote work burnout (テレワーク・バーンアウトを止める3つのステップ)」では、このように表現されている。
「Introvert(内向的性格の人)にとって、テレワークは悪夢だ。」
家が職場になったせいで、職場と家の境界線が曖昧になった。仕事をしていない時間でさえ、職場にいるかのように精神を休めることができていない。つまり、ONとOFFの切り替えを自然に行うことが難しくなった。
そして、パソコンのスクリーンを眺めている時間が増えた。延々と続くZoomミーティングに対してのストレスは、「extrovert(外交的性格な人)」も抱えている。
そして、ZoomカメラをONしているということは、演技パフォーマンスを行っているのと同じだ。バーチャルだから移動時間を節約できる、人の入れ替わりに時間を考えなくて良いために詰め込めるだけ入れ込むなど、配慮のないスケジュールは、あなたを8時間ぶっ通しで演技パフォーマンスさせているという意味だ。帝国劇場の役者よりも長時間働いていることになる。
しかも、画面上で行われる会議はリアルで行われる会議よりも高い集中力が必要になる。相手の雰囲気を読み取るには一瞬の動作も見逃せない上、Wi-Fiの調子が悪く会話がスムーズにできないときは謎な笑みを浮かべてその場をやり過ごすしかない。
こんなことが8時間×週5日間も続けば、精神的に疲労してしまう。創造性が低下し、なんとかタスクこなすことで精一杯になってしまうだろう。
そして限界が超え、無気力(=燃え尽き症候群)になってしまうのだ。
「テレワーク・バーンアウト」を防ぐには?
うまくテレワークをこなし、バーンアウトにならない秘訣は、エネルギーを温存させることだ。
まずはルーティンや習慣的な行動を見直してみよう。
今までは通勤時間があったために、自然にONとOFFの切り替えを行っていた。8時間ぶっ通しで仕事をしているわけではなく、コーヒーを淹れに行ったり、トイレに行くついでに同僚とおしゃべりしたり、ランチのために外を歩く時間が短時間でもあった。そう、テレワークでもなお、これらが必要なのだ。
しかし、自宅が職場になった以上、無意識に行うことはできないだろう。そのため、「意図的に」これらを毎日のルーティンに組み込むことが必要だ。
勤務時間を終えたら音楽をかける、照明を変えてみる、簡単なストレッチをする、コーヒーを淹れるついでに同僚に連絡して励まし合うなど、ちょっとしたアクションを取り入れることによって、自身で仕事とプラーベートの境界線を作ってみよう。
その次に、心のゆとりを作るためのエネルギー管理をしよう。自分に最適なペースを無視して無理をしてしまう人は、バーンアウトしやすい。精神的エネルギーを消耗するやりとりと、エネルギー補給できるやり取りのバランスを取ることが大切だ。
Zoom会議の予定を減らし(演技パフォーマンスを休息なく行うことはクオリティも創造性も下がるので、全くお勧めしない)、多くの内向的な俳優やCEOもそうしているように、エネルギー充電するための時間を増やそう。そして、自身が最もエネルギーの高い、元気な時間帯を見つけよう。その時間以外は静かに仕事ができるようにスケジュール管理を行うことも重要だ。
マネージャーは、部下たちがゆとりを確保できるようにペース配分する
もしあなたがマネージャー・管理職なら、部下たちがゆとりを持って毎日働けるようにペース配分をすることは、燃え尽き症候群にならせないためにも必要だ。
Zoom会議であっても、リアルの場と同じく外交的な人たち中心で会議が進みやすいので、誰もが発言しやすい場を作ることが大切だ。議題を整理して、Zoomでのブレインストーミング(自由な意見交換の場)は最小限にしよう。パワーの強い外交的な人たちのアイデアに押されてしまう可能性があるので、内向的な人の意見も平等に聞けるように、意見を書き込めるような共有スペースを会議前に設けるのもお勧めだ。
また、ゆとりのある会議を行う上で音声通話を使うというのもポイントだ。実は研究によると、音声だけの方が感情や行間を読み取りやすく、疲れにくいということがわかっている。
THE Wall Street Journal|ビデオ会議はもうやめよう 音声通話がいい理由
Zoom CEOでさえも、Zoom疲れによる燃え尽き症候群を経験したと話している。
THE Wall Street Journal|米ズームCEOも「ズーム疲れ」
oviceでは音声のみのやりとりがメインとなっているので、精神的疲労を最小限にしながらもスムーズに会議を行うことが可能だ。
より複雑なやり取りなどは、リアルタイムのやり取りを避け、携帯電話で自分の意見をボイスメモに録り、同僚に送るというのもお勧めだ。筆者は友人からこのアイデアを教えてもらって以来、たまに取り入れているのだが(頻繁に行うと、単に文字を打つことを怠けていると捉えられ、効果が薄れるので注意)、テキストだけだと伝わらないニュアンスや詳細も伝えることができるので非常に便利である。
まだまだテレワークによって生じる問題や課題はあるが、今の働き方に合わせてより良く改善して行くことが、心身の健康を守るために不可欠である。
是非、自身にとって最適な働き方を見つけてほしい。