ハイブリッド勤務がうまくいく「ウェルビーイング経営」Tips
新型コロナウイルス感染防止のためにテレワークやハイブリッドワークが取り入れられる前から、「ブラック企業」や「時間外労働」という言葉が有名になるほど、日本の労働環境は良いものではなかった。そのためか、労働者は自己をケアする能力が極端に下がり、定時で帰る人間は「常識知らず」と見做されるほど異常な価値観ができあがっていた。
しかし、コロナ禍によりワークスタイルや働き方に対する価値観が大きく変化した。現在では、企業や組織が労働者の価値観や望みにどれだけ寄り添えるか、新しいワークスタイルにどのように対応していくかが今後の鍵となっている。
そして現在注目されている「ウェルビーイング経営」とは、健康の維持・増進を仕事のモチベーション・やりがいに繋げていこうというものだ。
そこで今回は、テレワークやハイブリッド勤務を導入する上で重要な「ウェルビーイング経営」について、Tipsを4つご紹介しよう。
Tips① 必要な時に、助けを求めやすい環境に
武蔵大学の森永教授らが実施した調査では、「自分が求めていないのに受けた支援」が多い場合、逆に困ってしまう・葛藤が高まってしまうというケースが見られた。
KOKUYO|withコロナ時代に求められる「ウェルビーイング経営」とは? 〈後編〉
部下やチームメンバーへのサポートは大切だが、支援される側が必要としていないタイミングだったり、「大丈夫?」などの声かけが頻繁すぎると、自身でスケジュールや計画を立てられるというテレワークのメリットを感じられなくなってしまうのだ。また、在宅で相手の様子が伺いにくいからこそ、的外れなアドバイスや支援が起こりがちで、良い信頼関係が生まれにくい。
そのため、支援が必要な時に本人自ら「助けてほしい」とSOSを発せる環境・関係性に普段からしておくことが大切だ。「助けが必要なら言えば良いのに」という言葉をよく聞くが、残念ながらSOSを求めても助けられた経験がない人はなかなかお願いしづらい。「仕事ができない人と思われてしまう」と心配させたり、「忙しそうだから今は相談しないでおこう」など相手の状態を想像で決めつけて判断したり、気を遣わせることなく、お互いに大変なときは支え合うという当たり前のようでなかなかできていないことを実行するのだ。
とはいえ、甘やかそうというわけではない。「〇〇で困っていて、△△ができない/わからないので、□□をお願いしたい」など、的確なSOSの求め方ができるようにサポートしよう。そうすることによって、こちらも的確な支援を提供することが可能になる上、時短にもなる。
Tips② 雑談を大切にする
ハイブリッドワーク禍では特に、社員の心身の健康状態を理解しておくことは大事だ。雑談の場を設け、彼らが今どのくらい不安を抱えていて、仕事に対してどのくらいモチベーションを持てているのか把握しておこう。また、Tips①の相談しやすい環境・関係にするためにも、雑談は大切だ。意外と相手が心を開くのは雑談中に小さな共感で盛り上がった瞬間だったりする。自分と共通点があると感じたとき、初めて安心感を覚えるのだ。
信頼を得るために会話するという下心満載ではうまくいかないので、日頃から彼らの話に耳を傾け、心地よい関係性を築こう。
また企業・組織は、社員の一体感や組織への愛着度合いなども長期視点で見なければならない。
オフィスワークだったからこそ自然に生まれていた一体感や愛着は、暫くは今までの貯金が保ってくれるかもしれないが、何も対処しないままだと薄れていくことは目に見えている。
一体感を作り出していたのは、感謝・承認・共感・雑談などの日々の「ちょっとしたやりとり」だ。デジタルツールを活用して、いかに「ちょっとしたやりとり」ができるかが、今後の鍵になっていく。
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Tips③ 多様性を受け入れる
以前から「ダイバーシティ」という言葉がスローガンのように使われているが、多様性というのは「個性的な人がいかに頑張るか」ではなく、「社会や組織がいかに多様性を受け入れ、活かすか」にかかっていると筆者は思っている。
ハイブリッド勤務では、家族構成や居住環境によって働き方や希望するワークスタイルが異なり、企業はこれまで以上に多様化する必要があるだろう。個々の違いや生活リズムを尊重しながら企業としての一体感を作り出すということは難しいが、そのためにSlackなどのデジタルツールは存在しているのだ。社員が自己管理できるようなサポートとともに、彼らのウェルビーイング(彼らの幸福観)に向き合おう。
また、責任感が高く自立心のある人がほど、今までの古い価値観に疑問を持っている人が多い。効率的で生産性のない物事に対して意見を言ってくれる可能性が高いので、ちゃんと聞く耳をもち、良い意見であれば取り入れる、または選択肢を与えてあげるということは企業やチームが成長していくためにも大切だ。
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Tips④ クリアなコミュニケーションを心がける
ハイブリッドワークでは、「空気を読んで行動する」ということを期待しすぎてはいけない。お互い異なる生活リズム・環境の中で仕事をしていて、お互い異なる価値観を持っている。そのため、マネージャーがチームに何を期待しているか明らかにすることが大事だ。チームメンバーに無駄に気を遣わせたり、深読みして考えさせるという行為は精神的疲労にしかならない。
また、タスクごとに責任者ややるべきことを明確することは大事だ。
何事も曖昧にせず、担当者や期日などもテキストでSlack上などで残し、クリアでわかりやすいようにコミュニケーションを心掛けよう。
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ハイブリッド勤務が浸透してきたことによって、労働者の価値観も変わってきている。
彼らのウェルビーイングに寄り添った経営が求められており、いかに柔軟に対応できるかが今後の組織力の鍵を握っているだろう。
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