日米に見るテレワークへの意識の違い|日本は給与、アメリカはテレワーク環境を優先
日本では新型コロナが小康状態となり、第6波の到来が囁かれる中でも、やや日常生活が還って来た気配が見られる。一方で海外では、ワクチン接種が進みながらも、まだまだ終息というトンネルの出口は見えて来ない。
コロナ禍によりリモートワークが急速に推進された世界において、各企業は元通りの出社スタイルへの揺り戻しを試みている。
アメリカ人は給与を犠牲にしてもテレワーク環境を守りたい
そもそも、リモートワークから通勤出社スタイルの社会は完全に戻って来るのだろうか。
リモートの導入が遅れた日本企業でも、ユニ・チャームのように事務系を完全リモート宣言する企業もあらわれ、また通信会社であるNTTはリモート拠点を設け、そもそも社員からは不評だった転勤、単身赴任をともなう異動もなくして行くと発表したばかり。いわゆる「大企業」は、少なくともハイブリッド勤務という働き方へ向かっているように見える。
<参照>NHK|「ユニ・チャーム」全国で“出社禁止“ 感染拡大で
一方、この2年にわたる強制的な「引きこもり」生活によって働く側の意識には大きな変化が起こった。アメリカのように国土の広い国では、出社の必要がないのであればライフランニングコストの安い地域へのリロケーションも促進され、生活スタイルにさえ変化が見られた。この変化は、リモートワークに関する調査でも浮き彫りになっている。
米雇用調査会社GoodHireが3500人を対象にしたレポートによると、85%がリモートワークの継続を好ましいと考え、また現在の職場での勤務を続けるためには74%がリモートの継続を希望している。また45%の対象者は、もしフルタイムでオフィスに戻る必要があるなら退職すると回答している。
さらに興味深い点は、実に61%の対象者がリモートワークを死守するためには、給与の減額を受け入れると回答しているところ。その減額も概ね10%程度という回答が多いとしながらも、中には50%の減額さえ厭わないとの回答も散見されたという。
他の項目では、給与以外にもリモートワークを継続できるのであれば、健康保険、歯科保険(アメリカでは健康保険と別になっている)、ジムの会員資格、退職金口座(401K)、有給休暇などのメリットを破棄してもかまわないとする対象者も70%となっている。
VMwareやFacebookなどはむしろリロケーションそのものを推奨している社もあり、新型コロナはアメリカ人の働く意識をすっかり変えてしまった。
<参照>GoodHire|The State Of Remote Work In 2021: A Survey Of The American Workforce
日本の新卒はテレワークでも給与に妥協したくない
さて、一方の日本ではいかがだろうか。
日本では全年齢を対象とした同様の調査のサンプルを見つけられなかったのだが、「Z世代」と呼ばれる現役の学生を対象とした株式会社学情報による数字が見つかった。
PRTIMES|【2023年卒】「テレワークで給与減の場合」はテレワーク希望が4分の1以下に。「米大手ITが、テレワーク継続で給与減」の報道を受け調査。
この調査は、Googleが同社のテレワーカーの給与を25%減額するとした発表に呼応した形式のようだが、「25%の減額でテレワークを受け入れるか否か」という設問に対し、およそ60%がテレワークをしたくないと応えている。
もちろん、テレワークそのものを受け入れるかどうかという純粋な設問については、74.5%がそれを望ましいというデータとなった。つまり現役の学生からすると、テレワークそのものは時代の流れとして「好ましい」と前向きに考えながらも、その導入によって給与を減額されるのは「受け入れがたい」と感じているようだ。
こうして日米のテレワークに関する意識を比較すると、アメリカ人は仕事そのものよりも、自らの生活スタイルを優先させる傾向が高く、新型コロナを契機に手に入れたその生活スタイルを死守しようとしているように思われる。一方で、日本人は通勤という犠牲を払ってでも給与を死守したいというメンタリティが読み取れる。
この差異は、そもそも日米の調査における2つの大きな違いを考慮しておく必要がある。
ひとつは、日本の調査の対象が、実際にはまだ就業していない学生である点。通学は体験しているだろうが、毎日の通勤およびオフィスにおけるストレスがどのようなものか経験していない層であること。
もうひとつは、日米の賃金差の著しい点も念頭に置きたい。西海岸の大都市では、年収1200万円などきわめて平均であり、日本のホワイトカラーの年収がその半分程度に抑え込まれている点を考慮すると、間違いなく「減額」に対する意識は大きく異なるだろう。
「通勤+給与」「テレワーク+生活」のどちらを優先するのかは、日本における「働き方改革」が今後どのように変異して行くのかを見守ることで明らかになる。
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