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【2022年版】働き方改革で企業が対応すべきこと・メリットを解説!

「働き方改革」は、働く人の視点に立った働きやすさを追及し、日本全体の生産力を向上させる成長戦略です。働き方改革はすべての企業が対象ですが、長年に渡る企業文化を変えづらい、もしくはIT活用に抵抗があり導入が進まないといった実態もあるようです。

コロナは多くの企業が働き方を見直すきっかけになりましたが、働き方改革本来の目的を再度振り返り、将来的な企業力強化を見据えて取り組むと良いでしょう。

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働き方改革とは

働き方改革を進める必要性や、取組みの概要について解説します。

「多様かつ柔軟な働き方を自ら選べる」ことを目指す

厚生労働白書によれば、働き方改とは、50年後も人口1億人を維持し、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現に向け、労働環境を大幅に見直し、多様かつ柔軟な働き方を従業員一人ひとりが選べるようにする改革です。

近年多様化する労働者のニーズに対し、本人の意欲や能力を発揮できる環境や、自ら働き方を選べる状況をつくり、「労働者にとっての働きやすさ」に着目した社会を目指します。

テレワークは働き方改革の一環

コロナで普及が進んだテレワークも、ICTを活用し、柔軟に働く場所や時間を選べる働き方であり、働き方改革の施策の一つです。総務省の調査では、テレワーク導入企業は未導入企業と比較して、労働生産性が1.6倍になるとされています。

総務省|テレワークの最新動向と総務省の政策展開

また、介護や育児による離職を減らせることで、労働者の確保にもつながります。

さらに、場所を選べる働き方は、都心部の若い働き手が地方の仕事に携われるようになり、地方と都心部における就労機会の格差解消も期待できます。


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改革の背景は「危機的な労働力不足」

働き方改革の背景には、日本の深刻な少子高齢化があります。国内の人口は2008年をピークに急激に減少しており、2015年からの50年間で総人口は7割に落ち、15~64歳の生産年齢人口も10ポイント近くになる見込みです。

働き手不足は国全体の生産力低下につながり、結果的に国力の低下にも及ぶ可能性があるため、国をあげての対策が必須です。

また、日本は長時間労働が常習化が問題となっており、結婚や出産、介護を理由とした離職者が多く、心筋梗塞や過労死などのリスクも懸念されてきました。画一的な働き方を是とする旧来の働き方では、さまざまな事情を抱えた優秀人材を逃すことにつながります。

働き方改革推進の狙いは「3つの柱」

労働力不足を解消するためには、働き手の増加や出生率の上昇、労働生産性の向上が必要です。これらを実現するための柱として、政府は3つの施策を掲げています。

①長時間労働の解消

3つの柱の中で最優先となる取組みが、長時間労働の解消です。仕事における価値を時間から成果にシフトすることで、ワーク・ライフ・バランスを実現します。プライベートの時間や睡眠時間を十分に保ちながら効率的に働けるため精神的にも豊かになり、過労死や精神疾患を防止できます。健全な働き方は、多様な人材の採用が促進され、社員の定着率向上にも寄与するでしょう。

②非正規社員と正社員の格差是正

2つ目は、非正規社員と正社員の間にある賃金格差を是正し、非正規社員に対する正当な報酬の保障やキャリアアップ支援を促進します。

日本は欧州に比べ、正社員と非正規社員の待遇に大きな差があるのが実態です。育児や介護に携わる女性や高齢者など、正社員として働くことが難しい従業員が、安心して非正規社員として長く働ける対策が必要です。将来的には、非正規という枠組み自体を無くし、正規や非正規の差別なく、ライフステージに合わせて働き方を選べることを目指します。

③柔軟で働きやすい環境の整備

従業員の多様な働き方を実現するためにも、企業はフレックスタイム制やテレワークなど働き方の選択肢を増やすことが大切です。

さらに、働き方を従業員の裁量に任せた上で、成果を評価や収入に反映するなど、仕事の価値をどこに置くかも重要になります。

「働き方改革関連法案」で定められた11の改正点

働き方改革関連法案の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」で、既存の労働関係法令について改正したものです。11ある改正点について、概要を説明します。

1)時間外労働の上限規制(罰則あり)

残業時間は月間45時間、年間360時間以内という基準は以前からありましたが、改正前は超えた場合「行政指導」となっていました。改正後は、月間および年間の基準時間が明確に「上限」となり、強制力が強くなっています。

臨時的に超過する場合も、労使合意の上年間720時間以内、複数月における平均残業時間は80時間以内、月間100時間未満という上限を守らなければならず、違反した場合は懲役もしくは罰金に値する可能性があります。なお、時間外労働の上限規制対象外となる事業や業務があるため、把握しておくと安心です。

2)月60時間以上の時間外労働に割増賃金率の引き上げ

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について、改正前は大企業が50%以上、中小企業が25%以上としていましたが、改正により一律50%以上となりました。違反した場合、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられることになります。なお、中小企業の適用開始は2023年4月からです。

3)年5日以上の有給休暇取得義務

年10日以上の年次有給休暇がある従業員は、1年間のうちに年次有給休暇を最低5日取得することが義務付けられました。取得日数が5日未満の場合は、会社が有休取得時期を指定した上で、有休を付与した起算日から1年以内に合計5日分の有休を取得させる必要があります。

4)労働時間の客観的な把握

会社は、厚生労働省令で定めた「タイムカードによる記録やパーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」により、従業員の労働時間状況を把握しなくてはなりません。また、労働時間の記録は3年間保存する必要があります。

5)フレックスタイム制の柔軟性拡大

フレックスタイム制において、従業員の総労働時間に対して単位となる「清算期間」の上限が、1ヶ月から3ヶ月に延長され、最長3ヶ月間の総労働時間の範囲内で労働時間を柔軟に調整できるようになりました。

6)高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働)の創設

高度プロフェッショナル制度は、改正により新設された制度です。高度の専門的知識を持ち、1,000万円以上の従業員で、法律で定められた要件を満たす場合、所定の手続きを持って、労働時間や休日・深夜の割増賃金等の規定が適用除外となります。

7)勤務時間インターバル制度の導入

インターバルとは休憩時間を表しますが、勤務時間インターバル制度では、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保できる制度の導入が努力義務となりました。厚生労働省より「勤務時間インターバル制度導入・運用マニュアル」が開示されているため、導入の際は参考にすると良いでしょう。

8)産業医・産業保健機能と長時間労働者に対する面接指導等時間の強化

健康管理に必要な知識や能力を有する産業医による適切な健康指導のため、産業医の体制や活動環境が強化されました。産業医は、健康診断結果など従業員の健康に関する情報を収集し、適切に管理することや、従業員の健康を確保するため、健康相談の実施や指導を速やかに実行できる体制作りが必要です。

9)同一労働・同一賃金の原則

雇用形態にかかわらず公正な待遇を確保するため、企業は正規労働者と非正規労働者の間で不合理な待遇差が生まれないように対応が必要です。従来はパートタイム労働者に言及していましたが、今回の改正により、有期雇用労働者も対象になりました。基本給や各種手当、賞与などの賃金が対象です。

10)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

同一労働同一賃金に関連して、正規労働者と非正規労働者の賃金や福利厚生など待遇面で差が生じ、労働者から説明を求められた際、企業は根拠や内容について説明する義務を負うことになります。

11)行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備

雇用形態による待遇差などで企業と労働者の間で紛争になった際、労使間の訴訟による裁判以外にも、行政による助言や指導、裁判外での紛争解決手続ができるよう規定が整備されました。

働き方改革への取組みがもたらすメリット

働き方改革への取組みで得られるメリットについて、従業員と企業それぞれの側面で解説します。

【従業員】仕事でのパフォーマンス向上と豊かな生活を両立できる

従業員は、柔軟な働き方によりライフ・ワーク・バランスを保てることで、プライベートでは家族との団らんや趣味、自己啓発などに時間を費やせ、仕事では効率的に時間を使い、パフォーマンスを発揮しやすくなります。仕事とプライベートが相反するものではなく、相互作用で好循環を生み出しやすくなります。

【企業】生産性の向上や企業イメージアップにつながる

働き方改革は育児や介護による離職率を下げ、多様な優秀人材を確保できるようになるため、新たなアイデアやイノベーションの創出につながるでしょう。また、従業員一人ひとりが時間を有効活用することで組織の生産性が高まり、企業全体の事業スピードアップに寄与します。

さらに、従業員の働きやすさを考慮した労働環境や、従業員を大切にしていることは社外における企業イメージを向上させ、採用面でも有利です。

制度導入により、生産性向上や人材確保に成功した企業の実践例を紹介します。

事例1)物流業界特有の長時間労働をフレックスタイム制度導入で解消

三井物産ロジスティクス・パートナーズでは、長時間労働の是正を目的にフレックスタイム制度を導入しました。残業が習慣化されていた同社では、働き方の制度改正と同時に従業員の意識改革に取組み、わずか導入1年で総人件費を75%にし、従業員満足度も向上しています。

事例2)短時間勤務や休業制度で育児休業取得者が100%復帰

ワコールは女性従業員が多く、育児や介護による離職率が高いことが課題でしたが、短時間勤務制度と休業制度を導入することで復帰率100%を達成しました。「女性が働きやすい会社ランキング」でも常に上位にランクインし、2020年は首位を獲得しています。家庭とのバランスを尊重した対策により、採用と定着の両面で成果が出ています。


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KYOKO ONOGI
大企業、ベンチャー企業、まちづくり企業でシステム開発からマーケティング、広報PRまで幅広く経験し、独立。ITやマーケティング分野を強みとし、記事執筆やディレクション、Webコンテンツ制作に携わる。