これからの時代の働き方として大きな注目を集めている「フレキシブルワーク」。欧米ではいち早く取り入れられてきましたが、日本でも働き方改革の一環として取り入れる企業が増えてきました。
まだ日本では馴染みのない概念かもしれませんが、これから重要な働き方のコンセプトになっていくでしょう。今回は、フレキシブルワークについて、その考え方や具体的な取り組みや始め方、実際の事例を紹介します。働き方改革のための新しい働き方に興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
フレキシブルワークとは?
フレキシブルワークとは、働く場所と時間を柔軟に選択できる働き方のこと。働き方が多様化していく中で、個人のライフスタイルに合わせた働き方が強く求められるようになったのを背景に、欧米を中心に広がり始めました。
特にフレキシブルワーク先進国である英国、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダ、スウェーデン、デンマーク、米国の8カ国では新しい働き方を支援する政策が導入されています。例えば英国では1998年にEU労働時間指令(EU Working Time Directive)を受けて労働時間規則が導入されました。
海外に比べれば遅れたものの、日本でも働き方改革の一環として、大企業を中心にフレキシブルワークの導入が進んでいます。
参考:リクルートワークス研究所
フレキシブルワークの要素
フレキシブルワークとは、特定の取り組みを指す言葉ではなく、自由な働き方を可能にする取り組みの総称とも言えます。
日本で最も広く認知されている「フレックスタイム制度」もフレキシブルワークの要素の一つ。労働時間や時間帯を選択できるので、通勤ラッシュを避けての出社、時間配分により残業の軽減などが期待できます。就業が必須の「コアタイム」と、自由に出退勤できる「フレキシブルタイム」を設けるのが一般的です。
また、新型コロナウイルスを契機に広まったリモートワークもフレキシブルワークの一要素です。自宅やサテライトオフィスなど、会社以外で仕事できる働き方で、通勤ラッシュのストレスを軽減でき、仕事と介護や育児の両立も可能になります。
最近では1人で行う仕事を複数人でシェアし、評価や待遇もシェアする「ジョブシェアリング」もフレキシブルワークに向けた取り組みです。
リモートワークとフレキシブルワークの違い
リモートワークは自由な働き方というイメージが強いため、フレキシブルワークと混同している方も少なくありません。しかし、先述した通りリモートワークはフレキシブルワークの要素の一つでしかなく、自由になっているのは「場所」だけです。
フレキシブルワークが指す「自由な働き方」とは、場所だけでなく働く時間や休暇の取り方も含まれます。個人に合わせて働き方の可能性を広げられる取り組みはすべてフレキシブルワークと言えるでしょう。
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フレキシブルワークを導入するメリット
フレキシブルワークを導入することで、どのようなメリットが得られるのか紹介していきます。
メリット①多様な人材の確保
フレキシブルワークを実現することで、それまで雇用できなかった多様な人材を確保できます。たとえば育児や介護によってフルタイムで働けない方や、オフィスに通うのが難しい海外や地方に住んでいる方なども採用できるかもしれません。
採用の母集団を広げられるため、人材不足を解消し、より優秀な人材を確保できるでしょう。
メリット②生産性の向上
フレキシブルワークによって従業員のワークライフバランスが改善されれば、仕事へのモチベーションも上がり生産性向上も期待できます。従業員それぞれの生活リズムに合わせて働けるため、ストレスや疲労を軽減させることもでき、新たなスキルや資格を取得するための勉強時間も捻出できるでしょう。
メリット③コスト削減
フレキシブルワークによって働く場所が自由になれば、オフィスにかかるコストを大幅に削減できます。従業員みんなが出勤できるほどのスペースを用意する必要がないため、よりコンパクトなオフィスに移転できるでしょう。オフィスを利用する人が減るため、電気や水道などのインフラコストも抑えられるでしょう。
また、さまざまな働き方に対応できる、コワーキングスペースやシェアオフィスのような「フレキシブルオフィス」を活用すれば内装工事や管理にかかる費用も削減できます。
メリット④災害への対応力強化
フレキシブルワークは、災害時の事業継続性確保の観点からも関心を集めています。たとえば、災害によってオフィスが機能しなくなったり、インフルエンザなどの流行性疾患で外出が制限されると、勤務場所がオフィスだけの企業は事業を停止せざるを得なくなります。
働く場所が自由であれば、そのような事態でも事業を続けられるため、緊急時の対応力を高められるのです。
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フレキシブルワークを導入するデメリット
様々なメリットがある一方で、フレキシブルワークにはデメリットも存在します。
デメリット①コミュニケーションに工夫が必要
フレキシブルワークでは、オフィスに出社していた時と同じようなコミュニケーションができません。働く時間も場所も異なるため、会議ツールやメッセージツールを導入するなど、コミュニケーションの工夫が必要です。
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デメリット②社会的孤立への対応
フレキシブルワーク、特に在宅勤務の機会が多い方は、社会的に孤立してしまうリスクもあります。特に趣味のない人や、外出する機会の少ない人は孤立することによってメンタルを崩しがちです。フレキシブルワークをする際には、従業員の仕事の管理だけでなく、メンタルケアも必要です。
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デメリット③マネジメントの難しさ
フレキシブルワークでは、メンバーの管理も難しくなります。働く場所や時間が異なれば、業務委託など雇用形態の異なる人とも働くためパフォーマンスの評価も難しくなり、コミュニケーション管理も容易ではありません。
ツールなどをうまく活用しながら、効果的にタスクの進捗管理やコミュニケーション管理を行いましょう。
また、利用するツールのセキュリティ管理もマネジメント業務に含まれます。セキュリティツールを取り入れるだけでなく、研修なども取り入れながら人的リスクも防ぎましょう。
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デメリット④トレーニングや教育に工夫が必要
フレキシブルワークでは、若年層や管理職に対するトレーニングや教育にも工夫が必要です。以前のように、同じ時間・場所に集まるのが難しくなったため、好きな時間に好きなペースで学べる仕組みが必要です。
また、困ったことや分からないことがあった際に、気軽に相談できる取り組みも必要になるでしょう。
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フレキシブルワークの導入手順
フレキシブルワークを導入するにあたって、どのような準備が必要なのか手順を追ってみていきましょう。
手順①働き方のルールを見直す
現在の就業規則や評価基準を見直しながら、働き方のルールを修正したり、新たに追加していきましょう。この際に重要なのが、従業員の声をしっかり取り入れること。立場が違えば求める働き方も違うため、自社の社員がどのような働き方を求めているのかヒアリングしながら働き方のルールを制定してください。
手順②サテライトオフィスやコワーキングスペースを契約
働く場所を自由にするためには、必要に応じてサテライトオフィスやコワーキングスペースを活用しましょう。自宅でばかり仕事をしているとパフォーマンスが下がってしまう人もいます。従業員にヒアリングしながら、必要に応じて自宅とオフィス以外の場所を提供してください。
サテライトオフィスやコワーキングスペースを導入する場合は、どれだけの人間が利用するのか把握して、必要なスペースを契約しましょう。
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手順③コミュニケーションツールの選定・契約
どんな場所で作業をしても十分にコミュニケーションできるよう、コミュニケーションツールを導入しましょう。コミュニケーションツールは主に「テキスト」「音声」「ビデオ」といった種類があるため、どれが自社に適しているのか吟味してください。必ずしも一つに絞る必要はなく「会議に使うツール」「雑談を促進するツール」などコミュニケーションによって使い分けてもいいでしょう。
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フレキシブルワークの事例
最後に、どのような企業がフレキシブルワークを取り入れているのか、事例を紹介します。
事例①アサヒビール株式会社
『全社員が安全で健康に働ける環境をつくること』を企業のミッションに掲げているアサヒビール。ミッション達成に向けて、社員にとって一番いいワークライフバランスが実現できるような取り組みを積極的に行っています。
同社では、一般的なフレックス制の他に、コアタイムを含まない『スーパーフレックス制』を導入しており、時間に縛られることなく社員のライフスタイルに合わせた対応をしています。そのような取り組みが認められ、家庭の育児や介護をしなくてはいけない社員でも働ける環境をつくり、育児を高い水準で支援している会社へ厚生労働者から贈られる「プラチナくるみん」認定を受けています。
事例②株式会社MIXI
MIXIは2022年4月にオフィスワークとリモートワークを融合した働き方「マーブルワークスタイル」を正式に制度化。出社orリモートを事業部単位で選択できるなど、より社員が働きやすくなるような環境整備を目的とした制度です。
2023年4月からは、一定期間好きな場所で働ける「マーブルロケーション」の導入や、フルフレックスを試験導入するなど、積極的に「新しい働き方」や柔軟に働ける環境づくりを推進しています。
事例③旭化成株式会社
「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域で事業を展開する旭化成株式会社は、今後、介護をしながら勤務する社員が増えることを見据え、フレックスタイム制を導入して仕事と介護が両立できる支援をおこなっています。
その大きな特徴は制度の利用に期間の定めを設けないこと。育児と違って介護は見通しがつかず、20年以上続くこともあります。期間を定めないことで、介護に携わる社員に大きな安心感を与えました。
働き方改革の一つの解「フレキシブルワーク」
日本では長らく「働き方改革」に向き合ってきましたが、未だ満足できる働き方の解を見つけられていないように感じます。しかし、それぞれの従業員に寄り添ったフレキシブルワークこそ、日本が進むべき働き方改革のコンセプトになるかもしれません。
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