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oVice×サイボウズが語るハイブリッドワーク成功の秘訣(イベントレポート)

リモートワークとオフィスワークを組み合わせ、それぞれのメリットを享受できるとして注目の「ハイブリッドワーク」。今や多くの企業がその新しい働き方を取り入れようと取り組んでいるものの、思うように進まず悩んでいる担当者も少なくありません。

そこでoviceでは、4/15(金)にサイボウズ株式会社ワークスタイルエバンジェリストの大槻幸夫氏をゲストに迎え「出社とリモートの両方を叶える次世代型ワークスタイル|ハイブリッドワーク成功の秘訣」と題したイベントを開催しました。

ビジネスメタバースを展開するoVice株式会社代表ジョン・セーヒョンと大槻氏が語った、ハイブリッドワークの市況動向や定着させる秘訣をお届けします。

マストな働き方になりつつあるハイブリッドワーク

ーまずは大槻さん、今起きている働き方の変化について聞かせてください。

大槻:みなさんもご存知の通り、コロナ禍でリモートワークが急に普及し、これまでのような「集まらないと成果がでない」という認識が崩れ「どこにいても成果が出せる」という認識に変わってきました

その変化の中で、出社させたいエグゼクティブ層とリモートで働きたい労働者の衝突も起きています。欧米ではリモートワークを廃止する企業が現れ、多くの従業員が「リモートワークができないなら辞める」と退職するケースが起き始めているのです。

ただし、労働者の間でもリモートワークにおける切実な声があがっているのも事実。「オンライン会議では発言がしづらい」「雑談する機会がない」と嘆く声が聞こえます。シニアの管理職の中には、オンラインの波についていけず、コミュニケーションが減ったのが寂しく感じ出社を強要するケースも少なくありません。

エグゼクティブ層、労働者ともにフルリモートの働き方に限界を感じてきており、その中でハイブリッドワークに注目が集まっています。

ージョンさんは、この働き方の変化をどのように捉えていますか?

ジョン:コロナ禍への対策として始まったリモートワークが、今では経営戦略の中心になりつつあると感じています。もしも、私たちのサービスがコロナ対策だったとしたら、緊急事態宣言が解除された時に多くの企業に解約されているはずでした。

しかし、実際はそうならず、多くの企業が出社をしながらもリモートで働ける環境を残したのです。大槻さんも言ったように、今やリモートワークは優秀な人材を確保しておくためには欠かせない働き方。多くの企業がハイブリッドワークのためにoviceを活用し続ける選択をしてくれました。

コロナ禍で多くの企業が頭を抱える「人事評価」。2社の見解は?

ーコロナ禍で働き方も大きく変わりましたが、その中で企業が抱えている課題についても聞かせてください。

大槻:多くの企業が口をそろえて言うのは、評価に関する困りごとです。オフィスに出社していれば部下が働いている姿が見えていたので、難なく働きぶりを把握できていました。しかし、リモートワークになると仕事ぶりが見えず、適切な評価ができなくなったのです。そこで、メンバーシップ型雇用から、ジョブ型雇用にシフトして成果で評価しようという議論が増えてきています。

しかし、それは本質的な解決にはならないと思います。歴史を見てみると、実は60年も前から日本は「ジョブ型雇用に以降しなければ」と議論をくり返してきました。それでも未だに移行できていないのは、私たち日本人の感覚にジョブ型雇用がなじんでいないから

大事なのは、雇用制度を見直すことではなく、働き方を可視化することです。ツールを使って働きぶりを可視化さえできれば、これまでのメンバーシップ型でも適切な評価ができるはずです。oViceさんでは、その点はどのような人事制度を敷いていますか?

ジョン:全ポジションに評価テーブルを設ける形で評価制度を運用しています。とはいえ評価制度はまだ始まったばかりで、今後もブラッシュアップしながら続けていく予定です。

働き方の面では「勤務中はovice上にいる」というルールがあり、「今は誰が仕事をしているか」「誰と誰が会話しているか」などが誰でもひと目で分かるようになっています。「勤務場所は快適な通信環境があれば世界中どこからでもOK」とメンバーには伝えています。

そのため、oViceメンバーはグローバルで韓国、アメリカ、チュニジアと場所は様々で全社員フルリモートワークでも一体感を持って仕事を進めることができています。

また、必ずしも日中に働く必要はなく、自分の都合の良い時間でやるべきことさえやればいいと私自身は考えています。このような働き方は私たちのフェーズだから成り立っているのかも知れませんが、「もっとメンバーを信頼してほしい」と世の中の経営者にはお伝えしたいです。メンバーを信頼して仕事を任せ、メンバーはプロフェッショナルとしてその信頼に応える。そのような関係性が築ければ、ハイブリッドワークも実現できると思います。

ハイブリッドワークでメンバーの個性を活かした働き方を実現

ーサイボウズはハイブリッドワークを導入してますが、具体的にどのような働き方をしているのか教えてください。

大槻:ハイブリッドワークと称していますが、実際に出社しているのは10%くらいです。IT企業としては当たり前の数字に感じるかもしれませんが、1,000名以上の組織でリモートワーク率90%は高い数値だと思います。

とは言え、私たちもすぐにハイブリッドワークに適応できたわけではありません。コロナ禍でリモートワークを余儀なくされた時は困惑し、試行錯誤しながら今の働き方を作ってきました。

紙での業務を全てデジタル化し、評価制度も働き方にマッチした形に見直してきました。今では、メンバー全員が満足してハイブリッドワークで働けています。

ーoviceは様々な企業のハイブリッドワーク化を支援してきていますが、ハイブリッドワークを取り入れることで働き方はどう変わりますか?

ジョン:ハイブリッドワークを取り入れることで、様々な制約から開放されます。例えば、かつてはいい仕事を探すために東京で探していましたよね。そのため、住む場所は職場に通える場所に限定されてしまいます。

もしも、サーフィンが好きな方が通勤のために埼玉に住んでいるとしたら、サーフィンをするために千葉まで行かなくてはならず、サーフィンを楽しめるのは週末だけ。それでは、メンバーそれぞれの個性が尊重されません。

これまでは効率のために一箇所に集まって仕事をしてきましたが、ハイブリッドワークになれば、そのような物理的な制約がなくなり、それぞれの個性を活かして働きます。サーフィンが好きなら、沖縄の海の近くに引っ越して昼休みにサーフィンをしたっていいんです。

その経験が様々な気づきとなって、仕事をクリエイティブにしたり、生産性を上げてくれたりするでしょう。

大槻:キーワードは「アイデンティティ」ですね。特に日本人は会社に属する意識が強かったため、メンバーの個性を後回しにしてきました。しかし、働き方がハイブリッドになれば働く場所と時間を選べるため、会社のルールに縛られる必要はありません。

会社が用意した選択肢の中から選ぶのではなく、自分の理想の生活のために会社というツールを利用する。そうすることで、働き方だけではなく人生に対する考え方も大きく変化していくでしょう。

ー明るい未来が待っているように感じる一方で、中には新しい働き方に対して懐疑的な意見もあると思います。どのように意識を変革していけばいいと思いますか?

ジョン:たしかに「個性を活かす」を「サボる」と定義して批判する方もいます。しかし、これから会社がやるべきことは、メンバーの「サボる」を会社の成長のベクトルに向かわせることです。メンバーの個性を活かした取り組みが、どうすれば会社の成長につながるのか。それを考えるのがエグゼクティブの仕事になっていくと思います。

それは、これまでのように従わせるよりも難しいこと。しかし、それができる会社がこれから勝ち残っていくのではないでしょうか。

大槻:サボる人を排除するのではなく、それすらも活用して会社の成長につなげるんですね。とても面白いと思う一方で、リーダーに負担が集中するのは気をつけなければいけないと思います。メンバーは好きなように個性を活かす一方で、リーダーばかりが負担を背負っていては組織が長続きしません。

そうならないためにも、メンバー全員が自分の判断で仕事を進められる状態を作ることが重要です。全ての情報を透明にし、メンバーに裁量を渡すことでリーダーの負担が減り、メンバーの個性を活かせる組織が作れると思います。

ーメンバーにも高いレベルが求められるんですね。

ジョン:理想の働き方を実現するにはリーダーも変わらないといけませんが、メンバーも変わらないといけません。サボり方にも良し悪しがあって、自分でオーナーシップを持ってサボるのは良いですが、上司に仕切られてサボるのは無責任です。

自分の仕事に責任を持って、プロ意識を持ってサボることが、これからの労働者には求められると思います。

大槻:oViceのような若い会社は、最初からプロ意識を持って採用しているのだと思います。私たちのように組織ができあがっている会社は、メンバーにプロ意識をもってもらうために心理的安全性を作らないといけませんね。

メンバーが上司の顔色をうかがって仕事をするのではなく、自信を持って自分で判断する。仮に失敗したとしても、周りがサポートして再発を防げる環境を作れれば、大企業であってもプロ意識を持った組織を作れると思います。

ー最後に、ハイブリッドワークを取り入れるための秘訣を教えてください。

大槻:組織が変わるには組織で影響力を持っている人たち、つまり大企業の昭和のおじさんたちが変わらないといけません。どんなにツールを入れても、おじさんたちのマインドが変わらなければ本当の意味で組織は変わらないと思います。

これまでは人が会社に合わせていましたが、これからの時代は違うんだ。上司たちがそう認識を改めることが、ハイブリッドワークへの第一歩です。ツールを取り入れるのはその後でも構いません。

そして、認識を改めることは一朝一夕ではできません。時間がかかるからこそ、ハイブリッドワークに興味のある方は、時代が変化していることを早く意識し始めた方がいいと思います。

そして、いざ動き始めたら小さな組織で試してください。いきなり全社を変えようとしても無理なので、早く小さく試してみる。そのくり返しで仲間を増やしていけば、いつか全社を巻き込んでハイブリッドワークを実現できると思います。

ジョン:私は大槻さんと全く逆の意見で、まずはツールを導入するのがおすすめです。大企業には様々な価値観を持っている人がいるので、彼ら全員が納得する妥協点を探すのは困難を極めます。

しかし、ツールを入れて新しい働き方を実際に体感してもらうことで、ハイブリッドワークがどんなものかイメージできますよね。だからoviceは若い人でもおじさんでも使いやすいツールを目指しており、みんなが納得できるような仕様にしているのです。

もちろん、ツールを入れただけではすぐにハイブリッドワークは実現しません。ツールを入れた後も社内でコンフリクトは起こると思いますが、試行錯誤をくり返していく中で徐々に組織に定着していくと思います。

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SuzukiKohei
フリーのビジネスライターとして、ビジネスメディアでの執筆やベンチャー企業の採用広報を担当。起業家や投資家のほか、ベンチャー企業とのオープンイノベーションに積極的な大企業への取材を行う。