新型コロナウイルスの感染拡大から2年が経過し、多くの企業が様々な形でワークスタイル変革に取り組んできました。個人の成長やワークライフバランスへの関心が高まる中、相手や仕事の内容・環境に縛られない働き方が模索されています。
そこでoViceは、2022年10月11日に『「次世代ワークスタイル戦略」アクセンチュア×AWS×oViceが考えるこれからの職場環境のあり方』と題したオンラインイベントを開催しました。
登壇したのはワークスタイル改革に最前線で取り組んでいるアクセンチュア社の高瀬浩 氏、AWS社の畑浩史氏に加えoVice COOの田村元氏。今回は、次世代の働き方について語られた様子をレポートします。
目次
オフィスの変遷から考える、これからのオフィスに求められる機能
ーまずはアクセンチュアが考える「次世代のワークスタイル」について聞かせてください。
高瀬:これまでのオフィスのあり方と、これから求められるオフィスのあり方についてまとめた図があるので、まずはこちらをご覧ください。
2000年以前のオフィスというのは、いわゆる「作業場」という意味が強く、同じ場所を共有して価値観や文化を醸成してきました。チームごとに島をつくり、部長が全体を見渡せる位置に座って部署を管理する。どんなタイミングで、どんなコミュニケーションをするかが出世にも影響していました。
そのようなオフィスのあり方に変化が起きたのが2000年頃。偶発的な出会いに価値が見出されるようになり、自分の席以外で他部署の人と会話する機会を生み出す仕掛けが現れ始めました。また、上下関係を中心とした人間関係だけでなく、心理的安全性の確保についても考えられるようになったのもこの時期です。
ー具体的にはオフィスにどのような変化が生まれているのでしょうか。
高瀬:具体的にはフリーアドレスやリモートワークのように、部署やチームを跨いだコミュニケーションや効率的な働き方を可能にするオフィスです。加えて、リアル・バーチャルともにデータを活用したオフィスづくりも始まっています。たとえばオフィスにセンサーを組み込んで、オフィスの中で誰がどういう働き方をして、誰とコミュニケーションしているかデータを収集します。
それらのデータを活用して、健康管理や生産性向上を図るのです。さらにはAIやロボットを活用して、生産性を上げるのも大きな働き方の変化として挙げられるでしょう。
ー生産性を高めるために様々な工夫がなされているのですね。
高瀬:より抽象的に言うのであれば、作業場から「イノベーション拠点」に変化したということです。単に効率よく作業をするだけでなく、それによって生まれた時間をワークショップやアイディアソンに充てるためのクリエイティブな場所になったのです。
中にはアカデミアやスタートアップの人たちを入居させることで、コラボーレーションをしながら新しい価値を生み出そうとする会社も現れ始めました。
ー今後はさらにどんな変化が予想されるのか聞かせてください。
高瀬:よりイノベーションに特化した場所になると思います。これまでリアルで行われてきたアイディアソンやワークショップもオンラインにシフトできますし、そのような時代にオフィスに求められるのは実地検証できることです。
研究設備が整っていたり、実証の場としてのオフィスにユーザーがいてフィードバックが求められるなど、より実地に近い業務を行える場所になっていくと思います。これからは、組織のあり方も大きく変わり、人が報酬に応じて組織やプロジェクトを立ち上げる分散型自立組織のようになっていくのではないでしょうか。
コロナ禍で失い、未だ取り戻せていない「偶発的コミュニケーション」
ー高瀬さんの話を聞いて、田村さんはどう思いましたか。
田村:仰るとおりだと思います。この1〜2年で私たちの働き方は激変し、時間と場所を固定した働き方から「どうすれば最高のパフォーマンスを出せるか」に着眼した働き方になってきました。そして、そのような働き方を会社に定着させることに、多くの経営層が頭を抱えてきたと思います。
そして、その中でも特に難しいのが偶発的なコミュニケーションです。オンラインで偶発的なコミュニケーションを再現するのが難しいのは自明ですが、仮に出社しても以前のようなコミュニケーションを取るのが難しい状態になっています。
多くの企業がコロナ禍に適したオフィスとして、個室やブースを多く設け、そこで仕事をするのがほとんど。隣の人に話しかけるのも憚られ、会話をするにはミーティングをセットしないといけないのです。それによって失われるのは一体感や帰属意識だけではありません。
ちょっとしたことが気軽に聞けなくなったり、周りの人がどんな様子なのか分からず、助けるのが遅くなったり。これまで普通に行われていた、手を差し伸べあったり、知恵を出し合ったりすることができなくなってしまったのです。
こうした悩みは、多くの経営者の方から聞くようになりましたね。
ー偶発的なコミュニケーションを生むにはどうすれば良いのでしょうか。
田村:その答えはまだありません。多くの企業が様々な取り組みを始めていますが、以前のようなコミュニケーションを再現できている会社はまだないと思います。
むしろオフィスでのコミュニケーションを増やそうとしたことで、出社組とリモートワーク組の溝ができるなど、別の問題に発展しているケースもあるほど。まだまだ多くの企業が、この問題に対して模索を続けているような状況です。
多くの企業が抱えるオンボーディングの悩み。その解決策とは
ーアクセンチュアでは、今はどのような働き方をしているのでしょうか。
高瀬:今は「リターントゥオフィス」という考えのもと、徐々にオフィスに戻りつつあります。グローバルのリサーチを見ても、ハイブリッドワークの方が効率がいいという結果が多いので。
チーム単位で出社する日時を合わせていて、組織単位や会社単位でもコミュニティ作りを目的として定期的に集まる場を用意しています。
ー働く場が徐々にオフィスに戻りつつある中で、高瀬さんが感じていることがあれば教えてください。
高瀬:大きく3つあります。一つは人によって評価がしづらいということ。アウトプットベースで評価できる人材がいる一方で、アウトプットがうまく出せない人もいます。そのような人をサポートするためにも、ある程度リアルな場が必要だと感じています。
もう一つは、メンタルのサポートです。ちゃんとデータで見なければいけませんが、精神的に疲弊している人が増えているように感じています。特に独身で一人暮らしのメンバーはその傾向が顕著なので、リアルに会う場を作って軽減したいと思っています。
最後はオンボーディングです。新しく入ってきた方々に価値観や文化を伝えていくには、リモートワークだけでは難しいため、リアルで集まる場はオンボーディングに時間を充てることを心がけています。
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ーフルリモートによる働き方を取り入れているoViceでは、どのようにオンボーディングをしているのでしょうか。
田村:oviceの中で席を並べ、グループワークなどをしながら会話をする機会をつくっています。そのオンボーディングのおかげで、わざわざミーティングするほどじゃないことも隣の席の人に聞けるようになるため、心理的安全性のある空間を醸成できていると思います。
実際、アクセンチュアさんのように、採用はしたもののオンボーディングに課題を感じている会社は少なくありません。オンボーディングができないことでメンバーが離れてしまったり、パフォーマンスが出ないという相談もよく聞きます。
そのような声に対して、オンボーディングのためのパッケージを提供したところ、多くの企業が申し込んでくれました。実際に成果が出ている企業も多くあるので、今後も積極的に提供していきたいと思っています。
ハイブリッド成功の肝は「出社するメリット」を提供すること
ーAWSの畑さんは、リアルとリモートワークのバランスについてどのように考えているのか聞かせてください。
畑:コロナ前の日本では、出社するのが当たり前でリモートワークがなかなか普及しませんでした。それがここ1〜2年で、良くも悪くも強制的にリモートワークが普及したことで、新しい課題にぶつかっているというのは、次のフェーズに来ているのだと思います。
ちなみに私たちを含め、多くの外資系企業はコロナ前からリモートワークを導入していました。ジョブ型の雇用制度はメンバーシップ型雇用よりも比較的リモートワークに適した評価制度だとは思います。
加えて、グローバル企業は集まること自体が大変なのも大きな理由です。アメリカのように国土の広い国では、そもそも全員がリアルで集まって働くこと自体がハードルが高いため、コロナの前からリモートワークが前提だったという側面もあります。
逆に言えば、時間とコストをかけて集まるだけの目的や価値がなければいけません。これまで感覚的に「リアルで出会う意味」を考えていたところから、それを言語化するのがこれからの課題だと思います。
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ーAWSでは現在はどのような働き方をしているのでしょうか?
畑:私たちもチームごとに出社のルールを決めていて、私のチームでは火曜日に出社するようにしています。近くの部署も火曜日に出社するようにルールを合わせているので、出社すれば隣のチームの人にも会えるような状況を作っています。
なぜ出社の日を決めているかというと、せっかく出社したのに誰にも会えなかったら意味がないからです。同じ日に出社したのに、時間が合わなくて会えなかったらもったいないですよね。しっかりチームで顔を合わせるためにも、出社日を決めています。
また、会社としてもオフィスに人を戻すために、月何回か17時以降は食べ物や飲み物を提供して自由に飲食できるようにしています。中にはそれ目当てに出社している人もいるので、一定の効果があるのではないでしょうか。
ー単純ですけど、いいアイディアですね。
畑:出社してもしなくてもいいのですから、出社したくなるインセンティブやきっかけをつくることは必要だと思います。どうしてもリモートワークの方が楽なので、何もなければ出社したくない人もいますよね。
仮にご飯目当てで出社したとしても、そこで誰かと話して情報を得たりいい気づきがあれば、それが成功体験となってまた出社したくなる、そのような循環ができてくれば、自然とオフィスに人が集まるようになるのではないでしょうか。
田村:オフィスに来てよかったな、と思えるようなものを提供することが大事ですよね。誰かと情報交換できたとか、初めて直接会った人と信頼関係を構築できたとか。
一度でも会ったことのある人とオンラインで仕事するのと、一度も会ったことのない人と仕事をするのでは意味が全然違います。そう考えると、入社してすぐは出社して、徐々にオンラインにシフトしていくという方法も良いかもしれませんね。
ーなるほど、ありがとうございます。最後にお三方からこれからのワークスタイルについてメッセージをお願いします。
高瀬:これから採用や生産性という観点から、働き方に自由度を持たせないと世界に勝てない時代になってきていると思います。oviceのようなバーチャルオフィスツールを取り入れないと、本当に人を採用することもできなくなると思っているので、ぜひoviceに初回登録してみてほしいと思います。
畑:今は働き方の過渡期だと思っています。コロナによって働き方が急変したことでカオスになったのが、整理されてきた状況だと言えるのではないでしょうか。過渡期なので、会社やチームによって適切な働き方も違うと思いますし、テクノロジーの進化によって更に選択肢も増えていくと思います。
oviceさんの進化とともに、リモートワークのあり方が変わっていくことを期待しています。
田村:私個人の見解ですが、ハイブリッドワークというのは出社してもしなくてもいいということではなく、リアルでもオンラインでも同じ空間で働ける状態だと考えています。その状態をつくるためにサービス開発していますし、今後はリアル・オンラインに関わらず同じ空間で働けることが競合との差別化ポイントになっていくはずです。
どこにいても同じ空間にいるような働き方を提供することで、oviceの認知度が高まっていくだろうと思っているので、非常に楽しみですね。