「テレワーク」は場所の制限を受けない就業スタイル。コロナの流行を受けて、在宅勤務が広まり、テレワークも日本社会に浸透したといえるでしょう。政府の掲げる成長戦略の一つにもなっているテレワークは今後もニューノーマルとして定着していくと考えられます。
その一方で、「テレワーク疲れ」の存在が調査結果からは明らかになっています。こうした「テレワーク疲れ」は、業務に最適化されていない「場所」に起因するものもあります。たとえばPC作業に向かないデスクや椅子、家族への配慮、通勤などの日常的な運動が減っていること、またオンオフの切り替えが難しいこと、などがその原因です。
自宅以外のテレワークスペースを確保することで、少なくともこれら環境起因のテレワーク疲れは解消されるはずです。この記事ではテレワークスペースの探し方や、おすすめのテレワークスペースについて紹介します。
目次
個室あり!テレワークのためのレンタルスペース探し方
テレワークのためのスペースは実は日本全国に多くあります。まずはレンタルスペースの検索サービスと、レンタルスペース以外でテレワークに使えるスポットについて紹介します。
打ち合わせや小規模なセミナー、また動画などの撮影に使うことのできるレンタルスペースは、実はテレワークにも向いています。こうしたレンタルスペースは、レンタルスペースを取り扱う検索・予約サイトから探し出すことができます。
サービスには以下のようなものがあります。
- インスタベース(instabace) https://www.instabase.jp/
- スペースマーケット(SPACEMARKET) https://www.spacemarket.com/
- くーある https://kuaru.jp/
- カシカシ https://kashispace.com/
それぞれの特徴を紹介します。まずインスタベースでは、検索機能で「会場タイプ」「場所」「日時」を設定すれば、候補となるレンタルスペースが検索結果に表示されます。会場タイプには「レンタルスペース」「貸会議室」「コワーキングスペース」「ワークスペース」などがあります。リモートワークの目的であればこれらを選択するとよいでしょう。場所については、大まかな地域(たとえば「東京」)を入力すれば、候補が表示されるのでそこから選択します。
検索結果はおすすめ順で表示されます。
▲新宿駅でのワークスペース検索結果
スペースマーケットの場合もインスタベースのように「場所」「日時」「利用目的」を設定してスペースを検索できます。インスタベースと異なり、場所を5か所まで一度に入力できます。利用目的には、「パーティ」「飲み会」「ビジネス」など大分類があり、さらに小分類で検索条件を設定します。トップページの時点では「全てのスペース」が検索対象になっていますが、検索バーの上部で「ワークスペース」を設定すれば、検索対象がビジネスに向いたものに絞り込まれます。
▲横浜駅・ビジネス目的を条件にした検索結果
インスタベースとスペースマーケットの検索結果を比較してみると、インスタベースの方が個人向けのスペースが多く見つかるようです。スペースマーケットはやや広めのレンタルスペースが見つかりやすいように思われます。今後、テレワークのためのスペース需要がより高まれば、スペースマーケットでも個人向けスペースの取り扱いが増えるのかもしれません。
「くーある」でも、「エリア」「用途」「日時」の検索条件を入れて利用可能なスペースを検索できます。「用途」には「オフィス」のほか、「パーティ」「会議・研修」「セミナー」があります。オフィスで検索した場合であっても、住居風の撮影スタジオのようなスペースも散見されます。リモートワーク向きの物件の取り扱いはあまり多くないのかもしれません。
「カシカシ」は「日時・場所」「目的」「キーワード」のいずれかからレンタルスペースを検索します。「目的」には「パーティ」「会議・セミナー」などがあり、「テレワーク」の選択肢もあります。場所と目的を掛け合わせて一度に検索はできないようですので、検索結果画面で再度地域名を入力すると絞り込みができます。東京のテレワークスペースは現在61件と、インスタベースなどに比べると多くありませんが、穴場のスペースを見つけられるかもしれません。
また「くーある」「カシカシ」はインスタベースやスペースマーケットほどの掲載数はないようですが、穴場のスペースを見つけることができるかもしれません。
コワーキングスペース
コワーキングスペースもテレワークに活用できます。「地域名×コワーキングスペース」と検索すれば行動範囲内の施設がおそらくみつかるでしょう。Wi-Fiや電源はもちろんのこと、フリードリンクを提供しているところもあります。デスクワークを前提とした環境であるため、自宅の椅子とデスクよりも快適に業務ができるかもしれません。ただし、図書館のようにすぐそばに利用者がいることもあるため、機密情報を取り扱う場合には向きません。静かすぎる環境が苦手な方に向いているでしょう。個室や半個室を用意している施設もあります。利用料金はさまざまですが、たとえば2時間まで550円、1日の利用が1,100円といった料金を設定している施設もあります。月額利用料金を提供しているケースもあります。
また「コインスペース(coinspace)」は商業施設内の一部に椅子とデスクを設置し、コワーキングスペースとして活用するものです。基本料金やレイアウトは入居施設によって異なります。公式サイト(https://coinspace.jp/)では空席検索機能が提供されています。コワーキングスペース同様、周囲に人のいる環境で作業をしたい場合に向いています。30分刻みで料金が設定されている施設が多く、利用料金は30分200円~です。
「コインスペース(coinspace)」は商業施設内の一部に椅子とデスクを設置したコワーキングスペースです。施設の空席は公式サイト(https://coinspace.jp/)で検索でき、予約も可能。基本料金やレイアウトは入居施設によって異なりますが、渋谷でも30分200円〜とリーズナブルです。もちろんWi-Fi提供があります。コワーキングスペース同様、周囲に人のいる環境で作業をしたい場合に向いているでしょう。
ホテルのデイユース
ホテルを宿泊なしで利用できる、デイユースもリモートワークに適しています。楽天トラベルやじゃらんnetなど、大手OTAではデイユースの掲載ページを設けています。東京のホテルの場合、デイユースは2,500円程度から、ラグジュアリーホテルの数万円のプランまで幅広い選択肢があります。
漫画喫茶やカラオケ
このほか漫画喫茶やカラオケのテレワーク利用プランも各社が提供しています。これらの場合は個室風であっても鍵がかからない場合があるので、所有物の管理に注意が必要です。またカラオケの場合は歌をうたったり楽器を演奏したりという目的で利用する人もいるうえ、照明設備もデスクワークを前提としていません。こうしたことから、テレカンなどには向かない場合もあるかもしれません。
どんなレンタルスペースがある?価格や設備
インスタベースの検索結果を見てみると、新宿のテレワーク向け施設は296件あります。(2022年1月13日現在)1時間あたり数百円から1,000円台の料金設定であり、都内の山手線沿線の場合は同様の価格が多いと考えられるでしょう。横浜近辺では148件が掲載されています。こちらも1時間あたり440円程度~1,000円台の施設が多くなっています。また施設によっては1日利用の料金が設定されているところもあります。
リモートワークの利用料は安ければ安いほど良いのかというと、そうもいえません。空間の広さや、デスクの大きさ、椅子の座りごこちなど、自分の作業効率に影響を与えてしまうこともあるからです。リモートワークのためにレンタルスペースを選ぶ際には、施設写真も確認して、自分にとっての使いやすさが確保されているかを確認するとよいでしょう。
また以前には、東京であれば、Yahoo!が提供していたLODGE、AmazonによるAWS Startup Loft Tokyoが無料で利用できましたが、現在LODGEは社内向けの施設になり、AWS Startup Loft Tokyoはコロナ流行を受けて営業を中止しています。
LODGE Amazon|ニューノーマルに適した新しいかたちへ
Amazon|AWS Startup Loft Tokyo
テレワーク目的で施設を選ぶ時のポイント
テレワークのためのスペースを選ぶ際に、金額や作業環境の他に注意すべきポイントは何でしょうか? 以下の観点から、自分に適した環境かどうかを判断するとよいでしょう。
- 個室かどうか
- 個室でない場合、隣り合った座席とパーテーションがあるかどうか
- 共有スペースがあるかどうか
- フリードリンク、有料ドリンクやフードがあるかどうか
- 近隣にコーヒーショップやコンビニがあるかどうか
- ネット環境は快適かどうか
- 有線での回線利用が可能かどうか
- 開放感のある空間か、あるいは余計なものがなく集中できる空間か
- BGMがあるかどうか
共有スペースについては、気分転換に利用するオープンスペースの有無や、打ち合わせに使えそうな場所かどうかなどを、目的に応じて確認すると良いでしょう。
テレワークにおすすめの東京のレンタルスペース5選
続いて、おすすめのレンタルスペース、コワーキングスペースをインスタベースの検索結果おすすめ順を参考に紹介します。
①(新宿)RemoteworkBOX 新宿南口ビル店
1名用個室タイプのリモートワークスペースです。防音の個室が並んでいます。椅子はデスクチェアのようです。個室の壁に向かって作業する空間が確保されています。個室内での飲食が可能です。
利用料金は1時間110~550円。JR新宿駅が最寄りです。
写真にはWebカメラ向けの照明も備わっていますが、実際の設備は直接問合せて確認してください。
②(新宿)TIME SHARING新宿
1名用個室タイプのリモートワークスペースです。個室の壁にはモニターが用意されています。
椅子はスツールタイプのようですが、利用に際しては直接問合せをするとよいでしょう。
利用料金は1時間550円です。新宿三丁目駅 (東京メトロ丸ノ内線) が最寄りです。
写真によればデスク上にサーキュレータが用意されていますが、実際の設備は直接問合せて確認してください。
③(新宿)233_mysa新宿10th
2名まで利用可能なレンタルスペースです。デスクワーク用の椅子、デスクはありません。ローテーブルとローソファが用意されています。大きな窓もあり、自宅にいるかのような感覚で執務にあたれるでしょう。
プロジェクターと白い壁、40型のテレビが用意されています。また調理器具もあります。
利用料金は1時間471円〜550円で、早割や直前割があります。東新宿駅 (東京メトロ副都心線) が最寄りです。
④(渋谷)PaO Work 渋谷マルイ店
渋谷マルイに設置された完全個室のワークブースです。電話やウェブ会議にも向いています。ブースの中は白を基調としたあかるい空間で、デスクチェアとカウンターがあります。Wi-Fiは利用可能ですが、有線は利用できません。
利用料金は990円〜2,750円で、早割や直前割があります。東新宿駅 (東京メトロ副都心線) が最寄りです。
⑤(横浜)横浜アントレサロン
横浜アントレサロンは、個別のデスクとオフィスチェアをパーテーションで区切ったオフィスのような空間です。パーテーションは隣り合う人が見えない程度のデザインで、圧迫感を軽減しています。スタッフが常駐していること、私語電話OKとNGのエリアを設けていることが特徴です。
利用料金は440円で、最寄り駅はJR横浜駅です。
テレワークのための快適な空間づくりのコツ
業務内容や家族の関係など、テレワークを在宅勤務でしか行えない人もいるでしょう。このような場合、レイアウトなどを工夫することで快適なテレワーク空間に近づけることができます。
テレワークの快適さは、オンライン通信のスムーズさと、その空間の居心地の良さ、そして作業スペースの快適さの3つが左右します。
通信環境を整える
まず、一般的な家庭のネット環境であれば、テレビ会議ツール含め、問題なく業務にあたれるでしょう。執務スペースにあたる部屋での通信状況が良くない場合は、メッシュWi-Fiや中継器の導入を検討します。
オン・オフの切り替えができる仕掛け
次に居心地の良い空間についてですが、もしもテレワーク用の部屋を用意できるのであればそのようにするのがおすすめです。業務とプライベートというオン・オフの切り替えにも役立ちます。
ワンルームだったり余っている部屋などないという場合には、居宅のなかでも執務用のスペースを区切るようにします。例えばリビング・寝室の一角や、戸建てであれば階段下のスペース、あるいはクローゼットを使うというのも良いアイデアです。空間を区切るために、小ぶりな棚や細身で天井近くまである棚などを配置するのもおすすめです。集中力を保つために、あえて壁に向かって作業スペースを確保することもよいでしょう。休憩時間をはさめば、コンパクトな空間でも意外に快適に作業ができるものです。
静かすぎる空間が苦手という場合には、YouTubeなどで作業用BGMを探してみましょう。また植物を配置したり、雑貨屋で植物のイミテーションを買うのもよいでしょう。
執務スペースを用意・整備する
テレワークではPC作業がメインになります。デスクとオフィスチェアは欠かせません。オフィス同様にスペックの高い余裕のあるサイズを導入できれば最高ですが、そうもいかない場合もあります。その場合でも、どこかしら自分の気に入るデザインや性能のある製品を選ぶとその後の気分にもポジティブな影響が期待できます。デスクが小さい場合は肘を乗せられる椅子を選んだり、逆にデスクチェアの導入が難しい場合には肘を乗せて作業できるデスクを選ぶと肩こりが軽減できます。PCの高さを調節できるパソコンスタンドの導入もおすすめです。
テレワークに使う空間では、電灯を白いものに取り換えたり、デスクライトを用意することで、目にかかる負担が減り作業効率が高まるだけでなく、オンの気分への切り替えにも役立ちます。またコンセントタップを適切に配置することで、部屋の見た目もすっきりするだけでなくストレスなく各種機器が利用できます。
テレワーク環境を整えて、業務効率もアップ
コワーキングスペースやレンタルスペースを利用すれば、引っ越しや事務所を構える経済的な負担なく、働くための物理的な環境を整えることができます。テレワークのための施設は、レンタルスペース検索サイトや、近隣のコワーキングスペースを検索することで見つけられます。週に2回、8時間を借りるとして、1時間550円の施設であれば月間35,200円の計算です。毎日利用するのであれば、月額料金を設定している施設を選ぶとよいでしょう。
また現状、在宅でのテレワークに不便がないという場合でも、家族の都合などで急に外部で執務にあたる必要が生じることもないとは言いきれません。どんな施設があるのか、把握しておいても良いかもしれません。
離れていても、メンバーの様子が見える・話せるバーチャル空間“ovice”