仕事と育児の両立の難しさから、どちらかを諦めざるを得ない傾向にある日本社会。そんな中、キャリアも家庭も大切にした持続可能な働き方をかなえるため、XTalent株式会社では、共働きの子育て世帯(ワーキングペアレンツ)に特化した転職サービス「withwork」を展開しています。
従業員の6割以上が「ワーキングペアレンツ」というXTalentに、ワーキングペアレンツにとっての柔軟な働き方の重要性や、バーチャルオフィスを活用した働き方について話を聞きました。
■インタビュイー
上原 達也/XTalent株式会社 代表取締役
新卒で株式会社Speeeに入社し、新規事業や海外事業の立ち上げに参画。その後、JapanTaxi株式会社に転職し事業開発を担当。2019年にXTalent株式会社を創業。共働きで2児(小3、年中)の育児中。
吉田 智恵/XTalent株式会社 コンサルタント
新卒で大手小売業に入社後、店舗責任者として課題解決や人材育成を経験。第2子の産休後に、自身のキャリアと働き方を見直したいとXTalent株式会社に転職し、現在はコンサルタント業務を担当。共働きで2児(小1、年少)の育児中。
目次
「仕事も子育ても諦めなくていい」。これまでになかった働き方
男性も「両立」目指す世の中に
ー貴社が展開するワーキングペアレンツ向け転職サービス「withwork」はどのような背景からが誕生したのでしょうか?
上原:
withworkは、私の原体験から生まれたサービスです。
私は新卒からベンチャーに入社したこともあり、独身時代は望んでハードワークに身を投じていました。しかし、結婚して子どもが生まれ、夫婦共働きを選択してからはこれまでのキャリア観を大きく揺さぶられました。
時間が限られる子育て世代にとって、家事や子どもたちと過ごす時間を確保しながら、理想のキャリアを開拓することは容易ではありません。
しかし、私はどちらかを選ぶ、諦めるのではなく、どちらもチャレンジできる選択肢を作りたいと考えたんです。
サービス開始当初は、ユーザーの多くが仕事と子育ての両立に悩む、時短勤務または産休・育休中の女性でしたが、最近では男性からの相談も増えています。多くの共働き層が「キャリアとライフをトレードオフにしない」働き方に、強い関心を抱いているのだと実感しています。
ワーキングペアレンツ×バーチャルオフィスという働き方
ーお二人ともまさに「ワーキングペアレンツ」ですが、どのように仕事と子育てを両立しているのでしょうか?バーチャルオフィスが役に立つシーンはどんな時ですか?
上原:
我が家では妻が出退勤の際に子どもたちの送迎をしてくれているため、慌ただしくなる夕方の家事を私が担当しています。具体的には、oviceにログインし在宅で働いた後、家族が帰宅する18時頃に一旦離席し、夕食作りや子供たちとの時間を過ごします。
急ぎの仕事があれば、その後バーチャルオフィスに戻り再開することもありますね。
吉田:
私の場合は、毎朝6時半には起床し、子ども達の習い事の練習や家事を済ませて学校まで送り届けます。フルタイムで働いた後、18時頃に子ども達を学校に迎えに行きます。そこから夕食作り、お風呂、寝かしつけを済ませて、大体21時半に家事が一区切りつく毎日です。
夫が早朝に出勤し帰りも遅いため平日はワンオペですが、バーチャルオフィスがあるおかげでお迎えギリギリまで仕事に集中できて助かっています。
ー吉田さんはXTalentで初めてのリモートワークを経験されたそうですが、不安はなかったのでしょうか?
吉田:
前職は大手アパレル企業の店舗勤務だったこともあり、正直なところリモートワークで働くイメージはあまり湧いていませんでした。
しかし、バーチャルオフィスの「肩ポン機能」などのおかげで、初めて会うメンバーにも気後れすることなく話しかけることができ、チームにもすぐに馴染めました。バーチャルオフィスが無ければ、スムーズなオンボーディングはできていなかったかもしれません。
また、リモートワークながらチームで働く一体感を感じられるのもバーチャルオフィスの特徴ですね。弊社では、案件の成約や内定承諾の報告があると、拍手などのリアクションを使って全員で盛り上げます。
初めてリモートワークを経験するメンバーでも孤独を感じにくく、遊び心のある機能がバーチャルオフィスには複数備わっていると感じます。
「共働き3.0世代」と、現在の企業のジェンダー観
時代とともに、共働き当事者の価値観も変化
ーリモートワークの普及は、ワーキングペアレンツの働きやすさにもつながっているように感じます。上原さんが、転職支援をする中で課題に感じる点があれば教えてください。
上原:
リモートやフレックスタイムの導入などの拡充は大前提とした上で、採用側との間にある「ライフスタイルやジェンダーに関する価値観のずれ」が、ワーキングペアレンツのキャリア形成の足枷になっていると感じます。
私は、子育てに対する価値観は以下のように変化していると考えています。
- 子どもが生まれたら仕事を辞める、もしくは扶養内で働く1.0世代
- 共働きだけど、男女の役割分担に偏りがある2.0世代
- 共働きで、役割分担もフェアなあり方を目指す3.0世代
今はまさに、2.0世代から3.0世代が入り交じる分岐点。ライフスタイルの変化と共に「女性だから育児優先」「男性だからバリバリ仕事をする」という価値観から、「夫婦揃って子育てに積極的に関わる」「家族としてのキャリアを充実させたい」などと、ジェンダー観が変化してきているんですよね。
ところが、多くの企業が1.0〜2.0世代の価値観のままワーキングペアレンツに接しているため、「女性には残業がある仕事や出張は任せられない」などと過剰な配慮をしてしまいます。それが、彼らの理想のキャリアを実現するための妨げとなることもあります。
吉田:
ユーザーの中には、育休明けのキャリア面談で「出産後も元の職場で管理職を目指したい」と上司に打診したところ、「前例がないから難しい」と一蹴された方もいらっしゃいます。未だに古い価値観にとらわれている企業は少なくないのです。
ワーキングペアレンツは、企業の成長に欠かせない存在
ーでは、どうすればこの状況を打開し、ワーキングペアレンツが理想のキャリアを叶えられる社会に近づけることができるのでしょうか?
上原:
まず、企業側の固定観念を壊す必要があります。そのためには、活躍するワーキングペアレンツを増やし、「3.0世代の新しい価値観」を広く知ってもらう必要があります。私達転職エージェントは、ワーキングペアレンツが企業の成長に欠かせない存在であることを啓蒙していく使命があると感じています。
吉田:
同様に、求職者側のキャリアを諦めない姿勢も大切だと思います。
私自身も、産後の仕事復帰を考えた際に周りの理解が得られず、世代間ギャップに衝撃を受けた一人です。
しかし、「子育てを理由に仕事も諦めたくない」と奮起し働く環境を変えたことで、今は試行錯誤しながらも理想のキャリアを歩んでいます。
地道な作業かもしれませんが、キャリア志向のワーキングペアレンツと理解のある企業とのマッチングを一つでも多く成功させ、活躍する共働き世代の割合を増やすことが、課題解決の突破口になると考えています。
企業の働き方を変えるなら、組織の“OS”も変える。そのためのバーチャルオフィス
ーバーチャルオフィスの浸透は、今後のワーキングペアレンツの働き方にどのような影響を及ぼすでしょうか?
上原:
フルリモート可の企業の増加は、ワーキングペアレンツのキャリア形成に間違いなく大きなインパクトを与えています。
一方で、リモート勤務が特別なものとして認められている組織の場合、話が異なります。出社しない選択をした場合、キャリアの継続はできたとしても、組織内で重要な立場になることは未だ難易度が高いからです。
しかし、限りなく「リアル」に近いコミュニケーションが可能なバーチャルオフィスを使えば、何らかの事情で在宅勤務を選んだ場合でも、ハンディキャップが最小限になると感じています。
吉田:
例えば、個々の家庭の事情や家族の体調で、重要な会議に参加できなくなっても、バーチャルオフィスを通してリアルなオフィスと変わらない意思疎通やチームマネジメントができれば、出社の場合と変わらないパフォーマンスが発揮できますよね。
バーチャルオフィスは、ワーキングペアレンツはもちろん、時間的・物理的に制約のある多くの人々にとって「柔軟かつフェア」な働き方を可能にするツールだと考えています。
ー最後に、XTalentが目指す未来について教えてください。
上原:
リモートワークがもたらす利便性や可能性は認められているものの、生産性の面から否定的な意見もあり、リモートワーク導入に関する議論は今後も平行線をたどると考えています。
ただ一つ言えるのは、リモートワークに反対の企業が「チームビルディングが難しい、信頼関係を築きにくい」と主張しているのは、組織を「出社前提」で作っているからです。しかし、リモートワークが前提で「組織OS」を整えれば、超えられる壁はまだまだあると信じています。
私達が目指すのは「新しい働き方」を体現しながら、企業としても大きなインパクトを世の中に与えること。理不尽で不合理な固定観念や、世代間のジェンダー観ギャップを超えながら、「XTalentという企業があったから、男女ともに働きやすい社会に変わったよね」と、感じてもらえる存在を目指したいです。
バーチャルオフィス oviceの特徴や機能について詳しく見る
編集後記
今回は「ワーキングペアレンツ」をテーマに、XTalentのお二方を取材しました。
ライフスタイルの変化により、大きく変わるワーキングペアレンツのキャリア観。しかし、彼らの持つ新たな価値観と企業側の考えには未だギャップがあることが分かりました。
採用する企業側には、共働き世代の事情や意向を理解すると同時に、適切な「組織OS」の整備が求められています。ワーキングペアレンツの柔軟でフェアな働き方を可能にするバーチャルオフィスの浸透は、XTalent同様、今後の日本社会を大きく変えるかもしれません。
この働き方事例シリーズでは、これからもさまざまな「人生の選択」と「働き方」をご紹介していきます!
(インタビュー・執筆:稲葉めぐみ)
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