マネジメントに必要な能力(スキル)は、コミュニケーション能力や論理的思考力など多岐にわたります。マネージャーはどれか一つの能力に特化していれば良いわけではなく、あらゆる能力を満遍なく兼ね備えていることが理想です。
また、マネジメント能力は鍛えることができますが、性格的に向いている人と向いていない人がいるのも事実です。マネージャーを選考するにあたっては、その見極めが重要になります。
この記事では、マネジメントに必要な能力(スキル)をはじめ、マネジメント能力が高い人と低い人の特徴、「マネジメント能力診断チェックリスト」を紹介しています。
マネージャーを目指す方、マネージャーの選考に困っている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそもマネジメントとは
マネジメントに必要な能力を知る前に、まずはマネジメントの定義についておさらいしましょう。
「マネジメント」の定義
マネジメント(management)とは、「経営」「管理」を意味する言葉。ビジネスにおいては「経営管理」「組織運営」を指して使われますが、その解釈は人によって様々です。
アメリカの著名な経営学者、ピーター・ドラッカーはマネジメントを「組織としての成果を上げさせるための道具、機能、機関」、マネージャーを「組織の成果に責任を持つ者」と定義しています。
「マネジメント」と「リーダーシップ」の違い
また、マネジメントとリーダーシップは似ており、両者とも「目標を達成する」という目的は同じですが、求められる能力が以下のように異なります。
マネジメント ⇒ 目標を成し遂げるための手段や方法を考え、管理する能力
リーダーシップ ⇒ 目標達成に向かってメンバーを導く能力
マネジメントの意味や定義をきちんと理解しておくことは、マネジメントに必要なスキルを身につける以前に大切なことなので、きちんと把握しておきましょう。
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マネジメントに必要な能力とは
一般的に、マネジメントに必要な基本能力(スキル)として、「マネジメントの知識」「コミュニケーション能力」「論理的思考力」「ファシリテーション能力」があります。
これらの能力はマネジメントに必要不可欠ではあるものの、簡単に鍛えられるものではありません。また、あくまでも基本的に身につける能力であるため、これらだけでは不十分です。
ここでは、上記の能力をより活かす、または養うために必要となる能力として、次の4つを紹介します。
洞察力
マネジメントにおいては、メンバーの特性を見抜いたり、変化を感じたりする能力が必要です。
とくにビジネス現場では、抱えている悩みを他人に話したくないメンバーや、課題を自覚していないメンバーもいるため、メンバーの課題や変化にいち早く気付く能力が重要となります。
洞察力を鍛えるためには周囲をよく観察することはもちろん、先入観にとらわれずに、フラットな目線で物事をみることが大事です。
傾聴力
洞察力にも通じることですが、メンバーが話す内容だけでなく、細かな表情や話し方から気持ちを読み取るために、傾聴力はマネジメントにおいて欠かせない能力です。
話している内容=表層的な事柄だけでなく、その背景にある深層的な事柄を理解しなければ、適切なアドバイスや指示を出すことはできません。また、相手の話に共感しながら、話を引き出す能力も同様に重要となります。
傾聴力を身につけるためには、相手の話に耳を傾けて熱心に聴くことはもちろん、相手の価値観を否定しないこと、また自分の感情をきちんと伝えることが大切です。
言語化力
マネジメントに必要とされる基本能力のコミュニケーション能力と論理的思考力の根幹ともいえるのが「言語化力」です。マネージャーはメンバーに対して、「端的に」「わかりやすい」言葉で伝えることが求められます。
とくにマネジメントの重要な役割の一つに「人材育成」がありますが、マネージャー自身が感覚的にやっていたことを、嚙み砕いて、わかりやすい言葉にしないとメンバーには伝わりません。
ちなみに、トヨタ自動車株式会社のマネジメント手法の一つである「方針管理」では、わかりやすく言語化されたビジョン、ミッションを掲げることで、部下は当事者意識を持って業務を遂行できる仕組みを作り出しています(※)。
言語化力を鍛えるトレーニング方法としては、本や新聞などを読んで文章からのインプットを増やすこと、また自分の気持ちや感覚を文章にして書く習慣をつけることがおすすめです。
<参照>(※)東洋経済オンライン | 「方針がない…」残念な上司が言うトホホな言い訳 トヨタの強さの源泉はマネジャーの「言語化力」だった
意思決定力
先述したように、マネジメントとリーダーシップは異なるものですが、メンバーを成功に導く力は共通して必要であり、そのためには強い意思決定力が求められます。
マネージャーに意思決定力がないと、業務をスムーズに進められないだけではなく、メンバーの不信感にもつながります。日頃から「このように進めていく」という強い意思を持ち、またそれをメンバーに示すようにしましょう。
マネジメント能力が高い人と低い人の違い
マネージャーは、マネジメントに必要な能力をすべて兼ね備えていることが理想ではあるものの、現実にすべてを兼ね備えた人はそう多くありません。
この背景から、マネージャー人材を選出するのは難しく、実際にマネージャーになってからでないと、適性がわからないケースは往々にしてあります。
とは言え、マネージャーを社内の人材から選出するにあたって、どんな特徴のある人を選べば良いのかは知っておきたいところです。
ここからは、マネジメント能力が高い人と低い人、それぞれの特徴を説明していきます。
マネジメント能力が高い人の特徴
マネジメント能力が高い人の特徴として、主に次の5つが挙げられます。
業務推進力がある
マネージャーはプロジェクトの納期に合わせて、計画的かつ確実に業務を完了させることが求められます。業務推進力があるということは、自身の業務に対して責任感を強く持っている証でもあるため、チームを率いる人材として相応しいです。
また、業務をスムーズに進めるためには素早い判断力が必要となるため、業務推進力がある=スピーディーな意思決定ができるとも言い換えられます。
専門スキルのレベルが高い
マネジメント能力を語る上で、マネージャー自身の専門スキルは軽視されがちですが、メンバーが困ったときに、的確なアドバイスをして助けてあげられるスキルは重要です。
専門スキルのレベルの高さは基本的に経験量に比例するため、豊富な実務経験があるかどうかはマネージャーを選出する際の一つの基準となるでしょう。
人望がある
メンバーから本音を聞き出すためには、マネージャーがメンバーから信頼されている必要があります。また、チームとして成果を上げるためには、チームのメンバーだけでなく、他部署や社外の人たちからの協力も欠かせません。
マネージャーに人望がないと、メンバーから本音を聞き出せず、周りの人からもサポートを受けることができないため、チームは上手く機能しないでしょう。
冷静である
マネージャーは予期せぬトラブルが起きた場合でも、適切な対応、対処が求められます。
そのためには、常に冷静でいられるかどうかが大切です。マネージャーが常に冷静な態度であれば、メンバーは安心して仕事に取り組むことができます。
逆に、感情の起伏が激しい人はマネジメントには向いていません。
指導力がある
指導力のある人は、言語化力、洞察力、コミュニケーション能力が高い傾向にあります。
メンバーの性格や業務レベルに応じて言葉や表現を変えられるので、マネジメント業務においても高いパフォーマンスを発揮できるはずです。
マネジメント能力が低い人の特徴
続いて、マネジメント能力が低いと考えられる人の特徴も見ていきましょう。
人に仕事を任せられない
自分の仕事に責任を持つことは大事ですが、マネジメントにおいてはメンバーを信じて仕事を任せることも大事です。指示を出し過ぎたり、自分のやり方を押し付ける人はマネージャーに向いていません。
メンバーを信じられない人はメンバーからも信じてもらえず、マネージャーになったとしても信頼関係を構築することは難しいでしょう。
優柔不断
優柔不断な性格は、マネジメントに必要な能力の一つである「意思決定力」が低いことの表れともいえます。素早い判断が求められるマネジメントにおいては致命的といえるでしょう。
マネージャーになると責任が大きくなるため容易に決断できない場面も多々ありますが、自分のなかに明確な判断基準を持つことが大事です。
計画性がない
マネージャーはメンバーの業務レベルを把握した上で、スケジュール通りに業務が進むように調整する、綿密な計画性が求められます。
計画的に業務を進めるためには、やるべきことを決めるだけでなく、やらないことを決めることも大事です。物事の取捨選択が苦手な人はマネージャーには向いていません。
説明が下手
先述したように、マネージャーはメンバーに「端的に」「わかりやすく」伝える必要があります。マネージャーの説明が下手だと、メンバーは業務について理解できず、チームの生産性は低下してしまいます。
また、端的であっても抽象的な説明だと伝わりにくいこともあるので、ケースバイケースで具体的に説明することも大事です。
自分本位に仕事を進める
マネージャーは「自分がどうしたいか」ではなく、「チームとしてどうしていくべきか」を考えるべきです。そのためには広い視野を持ち、客観的に物事を判断する必要があります。
自分本位で仕事を進めたい人や自己中心的な考え方の人は、マネージャーには向かない可能性が高いです。
マネジメント能力診断チェックリスト
マネジメントに必要な能力や、向いている人・向いていない人の特徴を踏まえ、マネジメントに向いているかどうかを診断するための「チェックリスト」を見ていきましょう。
【チェックリスト】 ✓計画的に仕事を進められる ✓責任感がある ✓個人よりもチームで何かを達成することが好き ✓決断が早い ✓周りの人の変化に気付きやすい ✓周りの人の長所を発見するのが得意 ✓仲間を信頼できる ✓実務経験が豊富である ✓感情の起伏が激しくない(感情を抑えることができる) ✓周りに頼るのが得意 ✓他人から相談されることが多い ✓言葉で伝えるのが得意 ✓客観的に物事を判断できる ✓他人の意見を積極的に受け入れられる |
マネージャーの選出で悩んでいる方や、これからマネージャーを目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
なお、チェックリストの内容は、あくまでも一般的にいわれていることです。すべての項目にチェックが付いていないからといって、マネージャーに向いていないと確定するわけではありません。
マネジメント能力を高めるのにおすすめの書籍
最後に、マネジメント能力を高めるためにおすすめの書籍を3冊紹介します。
- 『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』林健太郎
- 『とにかく仕組み化 ── 人の上に立ち続けるための思考法』安藤広大
- 『あなたの「言語化」で部下が自ら動き出す 「紙1枚!」マネジメント』浅田すぐる
『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』林健太郎
出版社 | 三笠書房 |
著者 | 林 健太郎 |
概要 | リーダーが部下との信頼関係を構築するための「傾聴力」について、基本から実践法までをわかりやすく解説した一冊。 |
『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』では、これまでに650名以上のビジネスリーダーにコーチングをしてきた林健太郎氏がマネジメントにおける「傾聴力」の重要性について解説しています。
傾聴力の高め方だけでなく、部下との向き合い方やリーダーとしての在り方について学べる一冊となっています。
『とにかく仕組み化 ── 人の上に立ち続けるための思考法』安藤広大
出版社 | ダイヤモンド社 |
著者 | 安藤 広大 |
概要 | マネジメントにおいて「仕組み化」することの重要性とその手法について解説した一冊。 |
『とにかく仕組み化 ── 人の上に立ち続けるための思考法』は、累計110万部以上を売り上げる3部作シリーズの完結編。「組織は放っておくと属人化する」という前提のもと、チームとして最大限のパフォーマンスを引き出すための手法として仕組み化することの重要性を説いています。
組織の成果を上げられない、部下の人材育成がうまくいっていないマネージャーがマネジメントの思考法を学ぶのにおすすめです。
『あなたの「言語化」で部下が自ら動き出す 「紙1枚!」マネジメント』浅田すぐる
出版社 | 朝日新聞出版 |
著者 | 浅田 すぐる |
概要 | 「紙1枚」を使ったフレームワークでマネジメントの悩みを解消する方法を解説した一冊。 |
『あなたの「言語化」で部下が自ら動き出す 「紙1枚!」マネジメント』は、マネージャーが抱える代表的な3つの悩み「部下の働き方・姿勢・モチベーション」「人間関係やコミュニケーション」「人材育成」を改善するのに有効な、紙1枚のフレームワークを紹介しています。
マネジメントにおいて言語化することの重要性はもちろん、紙1枚にまとめるまでのプロセスが、言語化力を鍛える上で参考になるはずです。
まとめ
今回は、マネジメントに必要な能力や、マネジメント能力が高い人と低い人の特徴について解説しました。
マネジメントに必要な能力は多岐にわたり、どれか一つの能力が突出していれば良いわけではなく、すべてを万遍なく備えていることが理想です。
また、リモートワークが一般的になって以降は、オンラインにおけるマネジメントスキルも求められるようになりました。
オンライン環境におけるマネジメントでは、コミュニケーション不足が課題として挙げられ、いかにコミュニケーションを創出できるかがカギとなります。
バーチャルオフィスツールのoviceでは、仮想的なオフィス空間上でアバターを使ってメンバーと交流できるため、オンライン環境でもオフィスにいるときと同じようなコミュニケーションを実現できます。
オンラインでのマネジメントに課題を感じている方は、ぜひ一度バーチャルオフィスツールのoviceをご検討ください。