2022年も引き続き、テレワーク環境ありきでの新入社員の入社が見られそうです。株式会社ウィル・シードが行った「リモートワーク時代における2020年度新入社員の実態調査」では、同年の新入社員がテレワークの継続と、対面での働き方、両方を希望している結果となりました。
リモートワークの課題に、コミュニケーション不足やそれに起因するパフォーマンスの低下があります。しかしこの問題の解決策には「コミュニケーションの回数を増やす」という提案が少なくありません。
しかし、コミュニケーション回数を増やすことで、新入社員が抱える課題は解決できるのでしょうか。実際のケースやデータから、テレワーク環境下でのより良い関係構築について考えてみます。
目次
テレワーク下の新入社員を育てるには?見えてきた課題
2022年の日本では、大企業を中心にテレワークが今後も継続されていく様相です。働き手の意向としてもテレワークを望む声が強いものの、冒頭に紹介した調査結果のように、対面の機会も必要と考えているようです。在宅勤務で働く社員の間では、どうしてもコミュニケーションの量や質が低下してしまいがちです。一方で、コミュニケーションの質や量を担保できなければ、業務に慣れない新人を戦力にできなくなってしまいます。
新入社員が職場で直面する課題には大きく2つあり、①業務に関するもの、②人間関係に関するものに分類できます。これら双方の領域での成長を感じられることは、働くことのモチベーションに直結します。
新入社員が職場で直面する課題は、主に、業務に関するものと、人間関係に関するものに分類できます。それぞれに適した解決方法があるものの、共通して言えることがあります。それは、いずれの領域かを問わず、「自身の成長を感じられること」が働くことのモチベーションに直結しているということです。
では、成長やその実感はどのようにして得られるのでしょうか。そもそも新入社員は仕事に慣れていないため、周囲のサポートが欠かせません。さまざまなアドバイスをもらい、実践を重ねながら能力を高めていきます。そして自分がどの程度、業務を達成できているのかについては、周囲の評価をもって判断するしかありません。
ところが、テレワークで業務にあたることで、どういう風に仕事にあたったらいいのかを理解する機会、またどのように周囲が自分を評価してくれているのかを知る機会は、否応なしに減ってしまいます。反対に、先輩・上司としても、新入社員のコンディション・モチベーションがわかりづらいという課題が生まれています。
2021年末に、日本経済新聞は「学情」による調査結果を紹介しています。これによれば、テレワークが入社1年目の社員の活躍に影響を与えているとの回答が4割超、具体的な影響については「上司や先輩との人間関係が築けていない」が最多の74.3%、「同期間での人間関係が築けていない」が55.4%と続きました。
【データ】リモートOJTの実態…新人に何をさせるのが正解?
2020年、2021年と、新入社員をリモートワーク前提に迎えた組織はそれ以前よりも多かったと考えられます。こうした新入社員を、企業はどのように成長に導くことができるのでしょうか。2つの調査データを紹介し、考えてみます。
①2020年度新卒入社者のオンボーディング実態調査(コロナ禍影響編)/パーソル総合研究所
1つ目のデータは、パーソル総合研究所が2020年11月に実施した2020年度新卒入社の社員を対象とした実態調査です。従業員数300名以上企業の新卒新入社員、人事担当者から回答を得ています。
この調査では、新入社員の定着・育成に関する各施策の実施方法について集計しています。入社式や会社設備の見学、研修、面談、歓迎会・懇親会などについて質問し、実施方法が「通常通り対面式」「密を回避して対面式」「オンライン形式で実施」のいずれであったのかを新卒新入社員が回答しました。
集計結果からは、配属前の研修と1on1を含む面談、配属後は業務外の相談員・質問窓口の利用でオンライン形式が多かったことがわかります。
こうした状況の中、新入社員に「在宅勤務の課題」を尋ねたところ、1位、3位、6位に「コミュニケーションのとりづらさ」がランクイン。また「教育効果の低下」「研修・業務へのモチベーション低下」も4位と5位にランクインしています。
グループワークやケーススタディの効果を感じづらい様子もうかがえます。
これらの課題感は、コミュニケーションツールの形式によって改善が期待できます。たとえば、ビデオ会議ツールなどでは、1人が発言している状態では他のメンバーは聴衆のようになってしまうこと、また発言の際に対面時以上にリアクションが気になってしまうことが起こりがちです。
こうした課題感は、たとえばアイコンで会話できるようなバーチャル空間を利用することで解消される可能性があります。オンラインでのコミュニケーション形式に変更することで、従来のOJTや業務割り振りであっても、期待した効果が得られるでしょう。
②リモートワーク時代における2020年度新入社員の実態調査/株式会社ウィル・シード
株式会社ウィル・シードは通信・人材・IT 3企業に2020年度に入社した新入社員を対象に「リモートワーク時代における2020年度新入社員の実態調査」を行っています。調査では「テレワークのポジティブ面」「テレワークのネガティブ面」「今後の働き方」「人間関係構築」の4つについて回答を集計。
人間関係の構築においては、上司との良質な人間関係が構築できているという回答が84%に上る一方で、職場の一体感については「感じられない」との回答が57%、社内の人的ネットワークの広範化については「できていない」が75%となっています。
同社では2021年5月末に「withコロナ初の新入社員研修はどうだったのか?」をテーマにしたオンラインフォーラムを開いており、ここでは参加企業により、新入社員を対象にしたオンライン研修の所感が共有され、改善案が話し合われました。オンライン研修では「実際にさわれるコンテンツが少ない」ことや、「全社員のネットワーク構築のための基盤がない」ことに課題を抱いているようです。
オンラインでリアルのやり取りを完全に再現することは不可能であり、新入社員の研修においては、オンライン研修はオンライン研修と割り切ることも時には必要なのかもしれません。在宅勤務とリアルのオフィスでの執務を組み合わせたハイブリッドワークが、日本国内や世界で知られる企業で一早く普及していることも、このことを裏付けているのではないでしょうか。
一方で、ツールを導入することで、オンラインでもオフラインに近い感覚を得ながら執務にあたることは可能です。オンラインコミュニケーションはビデオ会議ツールやチャットツールとは限りません。oviceをはじめとするバーチャルオフィスであれば、同僚や上司の存在感はそのままに、過剰な緊張を強いることなく在宅勤務にあたれるでしょう。
新人とのリモートコミュニケーションを成功させるには
全国求人情報協会による「2020年卒 新卒者の入社後追跡調査、テレワーク実態調査」の「2020年卒 新卒者のテレワーク勤務実態調査リリース」では、「テレワーク/在宅勤務経験者におけるテレワーク/在宅勤務時のコミュニケーションについて感じたこと」について、勤続志向・転職志向のそれぞれで回答を集計しています。
勤続志向の回答者の方が、基本的には状況を良いものとして評価していると考えられますが、5つの質問項目のうち3つで「機会が十分だった」という回答は少数に留まりました。
具体的に、勤続志向の回答のうち「十分だった」の割合は、「ちょっとした問題や困りごとを相談する会」で37.8%、「自分の頑張りへの評価・自分の仕事への感謝の言葉をかけられる機会」は33.4%、「同僚同士を気にかけたり助け合う機会」33.4%でした。
それでは、こうした質問項目で「十分だった」の回答割合を高めるためには何ができるのでしょうか。コミュニケーションの回数を多く設定すれば良いかというと、そうも言えません。
たとえば、オンラインツールで指定されたタイミングで話すこと、チャットツールで「今から話しましょう」の示し合わせで会話することは、部下にとってはおそらく想定以上の負担になります。また同僚同士でも、共通の関心事項などが明らかでないままに突然に通話を申し出られては、戸惑うことも想像に固くありません。
会話のタイミングをルーティンで決めることや、アンケートの回収、交流イベントの開催が効果を発揮するのは、つまるところ「信頼関係」のあることが前提となります。リモートワークを実行する際には、コミュニケーションの回数を担保すると同時に、対面で構築していた信頼関係を再現できる方法を探す必要があります。
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コミュニケーションツールとしてのバーチャルオフィス
テレワーク環境にある新入社員とのコミュニケーションを円滑にし、育成を成功させるためには、もはや対話の回数を増やすだけでは不十分です。オンラインコミュニケーションに利用できるツールは、今やチャットツール・ビデオ会議ツールだけではありません。この既存ツールからの脱却が解決につながる場合もあります。
oviceのようなバーチャル空間なら、オンラインコミュニケーションで失われた形式の交流を取り戻すことができます。思いつきのタイミングでアバターを近づけ、ちょっとした会話をすることは、「時間を約束し」「発行されたURLからカメラを開いて(あるいは開かずに黒塗りの画面で)」対面することと、大きく異なる体験です。
テレワークと対面コミュニケーションの良い点を最大限に掛け合わせることも可能になるでしょう。