業種業界問わず、さまざまな企業で社内コミュニケーションを重視する一方で、ワークスタイルの変化や人材の多様性などにより、コミュニケーション形態の見直しが迫られています。特に近年のテレワーク環境下においては、対面のミーティングや会話の機会が減り、必要最低限のコミュニケーションに閉じやすい傾向があります。
活発な社内コミュニケーションは、企業の生産性や競合優位性が高まり、従業員のエンゲージメント向上にもつながるなど、企業の強みにつながります。
本記事では、改めて社内コミュニケーションの必要性を解説し、活性化に向けた施策やユニークな事例を紹介します。
足りないのは「仕組み」。リモートでもコミュニケーション活性化はできる!
目次
仕事では社内連携や情報共有が必要不可欠
仕事の多くは、人と関わり合いながら進めていきます。チームやプロジェクトメンバー、組織で同じ目的に向かって連携し、情報共有することで、高い生産性や成果を発揮します。また、コミュニケーションを密に取ることで良い関係性を育み、働きやすい環境作りや満足度向上にもつながるでしょう。
HRProの調査によれば、95%の企業が「コミュニケーション不足は業務の障がいになる」と回答しており、中でも部署間の連携において、スムーズな情報共有や方向性の認識合わせにコミュニケーションが欠かせないと認識しています。
特に、テレワークやハイブリッドワークでは相手との距離を感じやすいため、意識的に社内コミュニケーションの機会を作る必要があります。
コミュニケーション促進がもたらす3つのメリット
コミュニケーションの促進は、人材マネジメントにおいて大きく3つのメリットがあります。
①適材適所やエンゲージメント向上を実現
コミュニケーションが活発な雰囲気は社員が積極的に発言しやすく、新たな発想やイノベーション創出の可能性が高まります。さらにテレワーク環境では、社員の自主性に任される局面が増える一方で、個人の意識やコミュニケーションスキル次第でやり取りの頻度にバラつきがでやすいため、社員の発言を引き出すことが重要です。
人事の観点でも、コミュニケーションを通じて社員理解が進むことから、長所や持ち味を活かした配置が実現できるようになります。また、積極的なコミュニケーションはオープンで健全な職場環境を構築し、社員のエンゲージメントが向上します。
②チームビルディング強化で生産性アップ
情報共有が活性化されると、チーム内の業務分担や進捗報告がスムーズになり、生産性が上がります。強い連携体制を築ければ、新規事業へのシフトやトラブル発生時も、信頼関係のもとで協力し合い、乗り切れるでしょう。
③帰属意識を保て企業リスクを最小化
社内コミュニケーションの活性化は企業カルチャーの浸透や業務スタンスの統一を加速させ、社員による過失やトラブルが発生しにくくなります。その結果、情報漏洩やコンプライアンス違反を回避でき、企業の信頼性を維持します。また、社員の会社に対する帰属意識が保たれ、安定した人材確保にも効果的です。
8割近くの企業が社内コミュニケーションに課題感
HRProによる社内コミュニケーションの課題感についての調査では、74%の企業が「課題がある」と答えています。コミュニ―ケーションの阻害要因は、「組織風土・社風」がトップで54%、続いて「対面コミュニケーションの減少」が50%、「コミュニケーションスキルの低下」が48%となっており、個人に起因するものから会社全体で取り組むべきものまでさまざまな要因が挙げられました。
組織風土や社風については、「言えない」文化の浸透や、会議が一方通行の報告会スタイルで定着してしまっているなど、根深い事例が多いようです。また、テレワークや業務効率を重視する働き方などにより、対面で生まれていた雑談や仕事以外のコミュニケーションが減少した結果、関係値を構築しづらくなるケースも見受けられます。
コミュニケーションを加速させる6つの施策
コミュニケーションを加速させるためには、会社としてコミュニケーションが弾むイベントやツールなど環境を用意することと、社員自身が積極的に周囲との関わり合いを持ち、仕事に活かすことの両方が必要です。具体策を6つ紹介します。
1. 社員同士が交流できる社内イベントの開催
業務以外の目的で社員同士が集まり交流する社内イベントは、普段仕事では見えない一面が垣間見え、部署や役職を越えたタテ・ヨコ・ナナメのつながりを作る貴重な機会です。ボーリング大会やゴルフ大会など体を動かすイベントや、ハロウィンやクリスマスパーティー、忘年会など季節イベントも盛り上がるでしょう。単発のイベントだけでなく、部活動や同好会など長期的なイベントは、良好な関係の維持に効果的です。
最近では、オンライン上で宴会やイベントを開催できるツールが多くあります。在宅中の社員や遠方エリアに住む社員と気軽に交流できるため、オンラインイベントを実施する企業が増えています。
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2. 社内報で社内のニュースや社員を紹介
社内報は、さまざまな部署の動向やニュース、メンバー紹介などを発信する社内向け広報物です。紙で配布する方法と、イントラネットやメルマガなどWeb媒体で配信する方法があり、会社の業績や社内の事業やプロジェクト、社員の紹介など、会社や社員の理解を深める内容にします。
広く共有したい情報を社内報として別出しすることで、社員は自業務以外の情報をインプットしやすくなり、部署を越えた依頼や提案など、主体的な連携が期待できます。
3. チャットツールでフラットな情報発信
SlackやChatworkなど、テレワークで普及が目覚ましいビジネスチャットツールも有効なコミュニケーション手段です。従来のメールでは形式的なやり取りがメインでしたが、チャットツールではフラットにメッセージをやり取りできます。業務上の連絡や情報共有以外にも、雑談専用のチャンネルと作ったり、個人のチャンネルでつぶやきを残したりすることで、何気ない会話が生まれやすくなります。
4. 部下が上司に本音を言える1on1
1on1は、上司と部下が1対1で面談をし、部下の相談に対し上司がアドバイスしたり、成果に対してフィードバックをしたりすることで、信頼関係の構築や部下の成長を支援できます。評価面談のような長期スパンではなく、短いスパンで面談を実施することで、タイムラグなく部下の本音を吸い上げ、重大なトラブルや離職を未然に防げるでしょう。
特に、リモートワーク中に入社した社員や、人事異動で新たに配属になった社員は、1on1を週や月で繰り返し実施すると、戸惑いを減らし馴染みやすくなります。
5. フリーアドレス制度で業務に合わせて自由に移動
席を固定せずに、オフィス内で自由な場所を選択して仕事ができるフリーアドレス制度は、上下関係やセクショナリズムによる壁を越え、人対人のコミュニケーションが活性化しやすい施策です。特に、タスクフォースなど複数部署のメンバーでチームを組む場合などは、固定席よりもフリーアドレスの方が議論しやすく有効です。
リモートワークやハイブリッドワークによるオフィススペースの縮小を機に、フリーアドレス制度の導入に踏み切る企業が増えています。
6. シャッフルランチで経営陣や他部署と交流
全社員をランダムに組み合わせ、グループを形成し、一緒にランチを食べるシャッフルランチは、昼休憩の時間を有効活用したコミュニケーション施策です。業務時間外は家庭の都合などにより参加が難しい社員も、ランチタイムであれば参加しやすく、また時間制限もあるためメリハリのある雑談ができます。接点の少ない相手であれば、人となりがわかることで安心感につながり、経営者へは仕事中に聞きづらい内容も直接問いかけられるため、距離が縮まるでしょう。
企業カラーが光る!コミュニケーション促進事例6つ
企業カルチャーや事業内容に紐づけた、個性溢れるコミュニケーション促進事例を紹介します。
事例1【サイバーエージェント】月イチ面談でびっくり退職激減
インターネット広告事業大手のサイバーエージェントは、評価への満足度が高い部署は上司と部下で週単位や月単位で対話をしていることに着目し、「月イチ面談」という1on1のシステムを開始しました。社員主導の面談とし、前月の振り返りと当月のアクションプラン、そして中長期的なキャリアについて話すことで課題がクリアになり、評価への不満が減るだけでなく離職率が大幅に下がっています。上司と部下間のコミュニケーションを増やすことで、副次的な効果が得られた好例です。
事例2【ぐるなび】ウォーキングミーティングがひらめきとストレス解消に効く
飲食店情報メディアを運営するぐるなびでは、外でウォーキングをしながら会議をする「ウォーキングミーティング」が定着しています。会議室のようにクローズドな環境で話すのではなく、解放された屋外で威圧感なく話すことで、柔軟なアイデアが思いつきやすくなる効果があるとしています。また、横に並び同じスピードで歩くことで、対等に話せるメリットもあるようです。
テレワークによる運動不足も解消でき、生産的な会議とリフレッシュが同時にできる、新しい会議スタイルと言えます。
事例3【アカツキ】毎朝「Good&New」でお互いを褒めモチベーションが向上
エンターテイメント事業を手掛けるアカツキでは毎朝、全社員全職種を集め数人のグル―プを組み、新しいことや良かったことなど自身の気づきをシェアし合う「Good&News」という時間を設けています。もともと褒め合う文化がある同社では、Good&Newsでお互いを尊重し、ポジティブな言葉を掛け合うことで、結束力につながっているようです。
テレワーク導入後はZoomの朝会に移行し、朝会をきっかけに気の合うメンバーでコミュニティを作るなど、自然に社内の輪が広がっています。
事例4【ネオキャリア】経営陣や社員の素顔を動画で紹介し相互理解が深化
HRテック事業などを手掛けるネオキャリアでは、テレワークの推進により、ロールモデルとなる社員や共通点を持つ社員の存在が見つけづらくなっている状況に着目し、社内向け動画配信をスタートしました。各事業部の役職者や経営陣をゲストに呼び、事業についてやプライベートを掘り下げたり、活躍社員のノウハウを紹介するコーナーを設け、社員のやりがいや帰属意識の強化を目指しています。
事例5【VOYAGE GROUP】社内バー「Ajito」で熱量ある議論がコラボレーションを生む
広告事業を展開するVOYAGE GROUPでは、会社の規模拡大に伴い、社員同士が熱く議論できる場として、社内に「Ajito」というバーを開設しました。業務終了後に社員が立ち寄り、お酒を交えながら部署を越えた交流ができ、さらに会議や勉強会、商談にも利用するなど、企画時に想定していた稼働率を大きく上回るほどの人気エリアです。
同社では、セレンディピティを重視しており、Ajitoも偶然の出会いやひらめきを生み出す場として、今後も盛況することでしょう。
事例6【バスクリン】銭湯めぐりでベテランから若手に知見継承
入浴剤でお馴染みのバスクリンでは、会社公認の部活「銭湯部」があります。社員の年齢層が高齢化する中で、若い世代への知見伝承を進める目的と、銭湯文化を残したいという狙いから、2ヵ月に1度の銭湯巡りを開始しました。入浴を通じたコミュニケーションで、ベテラン社員から若手社員へ商品開発の経験や知識、教養を引継ぎ、世代を超えて打ち解けられる活動は、同社らしいアイデアです。
テレワークでもオープンコミュニケーションができる「ovice」
ポストコロナにおいて、オフィスありきのコミュニケーション施策から、リモートやハイブリッド環境に適したコミュニケーション施策へのシフトが必要です。オフィスやイベント開催ができるバーチャル空間「ovice」は、部署間の連携やちょっとした雑談など、失われがちなコミュニケーションが自然に生まれ、働く場所が離れていても、チームビルディングが実現できます。
厳密な勤務時間を管理するツールではないため、強制的な参加ではなく、ふらっと立ち寄ったり、誰かに声をかけたりするような、気軽な使い方ができ、フラットな会話が弾みます。「集まって楽しい場所」を社員に提供することで、社員は一人で悩むことなくモチベーションも高まります。
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