ホーム » 働き方改革 » 緊急事態宣言中も出社…派遣社員に対する「テレワーク格差」まだなくならない?

緊急事態宣言中も出社…派遣社員に対する「テレワーク格差」まだなくならない?

新型コロナウイルスの影響により、テレワーク制度を企業が積極的に取り入れるようになってから、もうすぐ丸2年が経とうとしている。オミクロン株・デルタ株による第六波も迫ってきている中、「非正規社員・派遣社員に対するテレワーク格差」は早急に解決すべき課題である。 

テレワーク格差とは?

昨年3月。他の正社員同様にテレワークを求めた派遣社員のAさんが、「テレワーク格差」を受け、派遣先と派遣元に対して、損害賠償と雇い止めの撤回を求める裁判を提訴したというニュースがあった。

東京都知事の会見で、新型コロナの「感染爆発の重大局面」を受け、全国の企業に対してテレワークへの協力を訴えた翌日、派遣先企業は正規社員に対してはテレワークを命じたが、派遣社員に対しては有給を使って休むよう勧めた。つまり、派遣社員にのみ在宅勤務を許可しなかったのだ。

Yahoo!ニュース|コロナ「派遣差別」で提訴 理不尽なテレワーク解雇の実態とは?

また、政府は「出勤7割減」を掲げていたが、内閣府の調査により、非正規のテレワーク経験は正規の半分以下ということがわかった。厚生労働省が提出している資料には、「正社員と非正規社員の間にはテレワーク実施率に差が生じている」と記述されている。

<参照>厚生労働省|第2回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 検討課題

派遣だからという理由でテレワークを許可しないというだけでなく、正社員をテレワークさせるために出社が必要な業務全てを派遣・非正規社員に担当させるというケースも頻発している。

そもそもテレワークというのは、単に出社人数を減らす為でなく、職場内の感染リスクを減らし、社内の命を守るという目的があったはず。そこに格差が生まれて良いものなのだろうか。

派遣社員は立場が弱く、声も上げにくい?

労働組合の総合サポートユニオンに寄せられた相談事例によると、「正社員はほぼ毎日テレワークだが、パートは週1日のみ」という明らかな格差が見えてくる。「派遣だとパソコンを無くした場合に責任が取れないという理由でテレワークを派遣元から認められない」という事例もある。

国を挙げてテレワーク勤務を推奨し、出社による感染を防ごうとしているのに関わらず、テレワークを許可しないというのには相当な理由が必要だ。しかし、これらの理由は納得できるものなのだろうか。

派遣などの非正規労働者は立場が弱く、声を上げにくい。日本労働弁護団の嶋崎量弁護士は「裁判で闘えるのはごく一部の人。格差是正に実効性のある法律をつくるべきだ」と強調している。

<参照>東京新聞|守られぬ「同一労働同一賃金」 強制力なく企業任せ テレワーク格差

なぜ企業は派遣社員にテレワークをさせたくないのか

派遣社員に対して、テレワーク差別よりももっと前から差別があるのではないか、と筆者は考えている。「派遣だとパソコンを無くした場合に責任が取れないという理由でテレワークを派遣元から認められない」という事例を見れば、単に信頼関係を築けていないからだとわかるが、信頼関係の壁をなくすことは雇用システム上、時間がかかってしまうのかもしれない。

派遣社員はその企業の一員として働いているが、雇用者(企業)が直接雇用している労働者ではなく、派遣会社に雇われていることになる。期間や場面を限定して活躍すると思われる人材を派遣しているため、長期的に会社にいる人材とみなしていない=良くも悪くも正社員とは異なる待遇をされてしまう可能性がある。

現に、新型コロナ以前の調査で、派遣差別を感じたことがあるかという質問に対して、44.7%もの人たちが「はい」と答えている。

「派遣差別」を感じたことはありますか? はい(44.7%)。いいえ(55.3%)、N=530
▲派遣差別を感じたことはありますか 出典<a href=httpshakensearchnetA100127 target= blank rel=noopener title=>派遣サーチ|派遣社員への差別にはどのような理由がある具体例と対策<a>

差別されたと感じた理由については、「企業の設備(社員食堂、休憩室など)が使えない」、「個人名でなく “派遣さん” と呼ばれる」、「社内で催されるイベントに誘われない」、「支給される物品などが正社員と異なる」など。

悪意がないとしても、普段からこのような差別があれば、テレワーク格差が生まれてしまうのも納得がいく。

しかし、テレワークによって「効率性・生産性が上がった」という声が高まっている中で派遣社員にのみ出社を命じるのは、とても勿体ないことだと思う。

「派遣だからテレワーク対象外」は違法である可能性が高い

2020年4月、厚生労働省は雇用形態に関わらず公正な待遇を確保させるために「同一労働同一賃金」の導入を発表した。

これにより、正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止された。

また、厚生労働省が作成した「テレワークの適切な導入及び実施の推奨のためのガイドライン」においても、「非正規社員の差別があってはならない」という趣旨の文言が付け加えられている。つまり、「派遣だからテレワーク対象外」とすることは違法である可能性が高い。

しかし、未だにテレワーク格差に関しての相談の声は続いているという。

<参照>
厚生労働省|同一労働同一賃金
厚生労働省|テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
FINDERS|「派遣社員だけテレワーク禁止」「求めたらクビ」は違法の疑いアリ。ブラック企業と戦うユニオン共同代表が語る実態と対策【特集】進まない・続かないテレワーク 2021年の課題

派遣社員へのテレワーク導入により、効率がアップしたという実例も多い

一方で、実際に派遣社員へのテレワーク導入を実施した企業・派遣スタッフは、「心配したほどではなかった」「やってみたら意外とできた」という声が多く聞こえたという。

業務効率について企業側は、「在宅の方が悪くなった」と回答したのはわずか15.6%で、約8割が「どちらともいえない」(51.2%)、「在宅の方が良くなった」(33.2%)と回答していることがわかった。

<参照>DIAMOND online|派遣社員のテレワーク化が企業にもたらした成果、生産性向上や応募数増加も

また、派遣社員の約8割が、パンデミック後も「テレワークを希望」と回答している。テレワークであれば場所を問わず業務ができるため、住んでいる場所を限定せず、より優秀な人材を確保することができる。

テレワークを取り入れたことにより業務の効率性が向上し、家族との時間も増えたというポジティブな声が多く取り挙げられているが、そういった企業もテレワークを取り入れたことによって生じた課題解決には積極的に取り組んでいる。

テレワーク格差を無くし、それによって生じる課題解決を今すぐにでも始めたほうが、より良い未来につながるのではないか。


新しい働き方・コラボレーションを「バーチャルオフィス」で実現。9社の事例をまとめています。

資料を無料でダウンロードする

author avatar
YUI SASANO
フリーランス歴10年目、現在25歳の作詞作曲家/SNSマーケター。アーティストや文化人、企業のSNSプロデュースの他、コラムニストとしても活動している。