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【4か国の実態】コロナ5類から1年の“働き方”変化は?

新型コロナが5類に移行してから、2024年5月8日で丸一年が経ちました。5類移行直後は明らかに「オフィス回帰」がトレンドとなりましたが、週5出社に「逆戻り」したことで離職が相次いだ企業もあるということや、出社により育児がしづらくなったなどという報道も目立ちました。現在でも、「出社とリモート」のバランスや、より柔軟な働き方ができる方法を模索している企業も少なくないのではないでしょうか。

オフィス回帰が起こってからの1年で、日本の働き方はどのように変わったのか。アマゾンやテスラなど、リモートワークからオフィス回帰を進めたことが話題になった欧米では現在どのような働き方が主流となっているのか。各国の調査や事例を元に紹介します。

<参照>
週5出社“逆戻り”で企業と深い溝。「リモート廃止の理由がわからない」社員3人の悲痛な訴え|Business Insider Japan

国土交通省の調査でわかった「ハイブリッドワークの定着」

国土交通省などの「令和5年度(2023年度)テレワーク人口実態調査」によると、勤務先からテレワークを認められないことなどの理由で出社へのより戻しが見られるものの、リモートワークの実施は依然として高い水準となっていることがわかりました。

調査によると、企業や団体などに雇用されながらリモートワークをしたことがある「雇用型テレワーカー」の割合は、全国で24.8%(1.3ポイント減)。全国的にリモートワークをする人が減少傾向であるものの、コロナ禍以前と比べると確実に高い水準を維持しています。特に首都圏では、約4割の水準を維持しています。

また、リモートワークの頻度について、直近1年間でリモートワークを実施した雇用型テレワーカーは「週1~4日」リモートワークを実施する割合が増えており、出社とリモートワークを組み合わせるハイブリッドワークが拡大傾向にあることがわかりました。

▲テレワーク実施頻度(直近1年間の雇用型テレワーカー)

2023年度においては、「月1~週4日」リモートワークを実施する人の割合が、2022年度と比べて増加しており、このことからも、ハイブリッドワークが着実に定着していることがわかります。

<参照>
テレワーカーの割合は減少、出社と組み合わせるハイブリットワークが拡大~令和5年度のテレワーク人口実態調査結果を公表します~|国土交通省

<各国事例>世界での働き方、どう変化?

国土交通省の調査により、日本ではハイブリッドワークが社会に定着していることがわかりますが、世界各国の働き方はどのように変化しているのでしょうか。ここでは、米国、英国、シンガポールの事例を紹介します。

【米国】CEO100名に調査、「週5出社」支持は34%まで減少

▲米国の一部の大手企業では「オフィス回帰」の動きが報じられたが、社会としては「ハイブリッドワーク」が主流になりつつある(写真はイメージ)

アマゾンやテスラなどが従業員にオフィス出社を命じたとの報道が印象に残る米国。世界4大会計事務所のひとつであるKPMG USが米国大企業のCEO100人を対象に行った調査によると、従業員がフルタイムでオフィスに出社することを期待しているCEOは実は多くないことがわかりました。

近い将来、オフィスを基本とした働き方(週5日出社)に戻ると予想したCEOは、2023年では62%いましたが、2024年になると約半分の34%になり、大幅に減少しています。また、46%のCEO がハイブリッドワークが主流になると予想したCEOは、2023 年の34% と比べて2024年は46%に増加しているなど、この1年間で変化がみられます。

日本のメディアでは、米国の「オフィス回帰」が大きく報じられていましたが、実際にはリモートワークとオフィス出社を組み合わせた働き方が主流となっていく可能性が高いと考えられます。

<参照>
More CEOs expect hybrid work is here to stay
KPMG Study: CEOs tackling risks to growth including geopolitics, cyber and structural changes such as tight labor market, new regulations

【英国】ロンドン地下鉄の利用率、パンデミック前には戻らず…鉄道会社の新たな策も

▲金曜日の乗車率がコロナ前に戻らないロンドン(写真はイメージ)

ロンドンでは、リモートワークの定着により多くの人が金曜日にオフィスに出勤していないことがわかっています。

ロンドン交通局(TfL)の発表やBBCの報道によると、週半ばの地下鉄の利用率はパンデミック前と比べて85%に低迷、金曜日の利用率はさらに低く約73%でした。

そのためロンドンでは、2024年3月から2024 年 5 月末までの3ヶ月間、毎週金曜日を試験的に運賃が割り引かれる「オフピーク」と定め、通勤客の代わりに旅行客の乗車を促す動きが出ています。

リモートワークの定着により、都市インフラの仕組みも変化していることがわかります。

<参照>
Off-peak Friday fares trial to start for Tube and trains in London
In the City – deals and things to do

【シンガポール】全ての企業で“柔軟な働き方”の要求が可能に

最後に、アジアの事例としてシンガポールの状況を紹介します。

シンガポール政府は2024年4月、同国内の従業員が同年12月1日から在宅勤務、週労働時間の短縮、フレックスタイム制などについて、雇用主に要求できるようになると発表しました。

12月1日に施行される新ガイドラインの下では、雇用主などは従業員の要求に応じる法的な義務はなく業務に支障が出ると判断した場合は拒否することができるものの、会社規模に関係なく全ての企業において、従業員は上記のような要求ができるようになります。

こうした取り組みは、既に英国やアイルランド、オーストラリアでも実施されており、世界的に広がる傾向にあります。

また、調査会社Universum(ユニバ―サム)の2023年の調査によると、シンガポールでは若手の従業員の73%がリモートでの仕事を望むと回答しています。

<参照>
Singapore says it’ll let workers ask for their dream schedule. There’s just one obstacle.

日本でも世界でも“柔軟な働き方”が選ばれる。着実に広まる新たなワークスタイル

コロナ5類移行後、オフィス回帰がトレンドとして報じられた日本。しかし、出社が義務化されることによって、通勤時間の負担や、子育て・介護などの家庭生活にかけられる時間の減少などにより、生活全般における満足度が低下する傾向がみられ、企業側とっては不本意な離職を招きかねません。その結果、前述の調査結果のようにハイブリッドワークの定着が顕著に現れるなど、リモートワークとオフィス出社を組み合わせた柔軟な働き方が着実に浸透してきています。

世界を見てみても、「オフィス出社」一択ではなく、ハイブリッドな働き方を模索する国や企業が増えているなど、変化が継続しています。

今後避けて通ることができない日本社会の構造的な変化に対応するため、日本政府による子育て支援が推し進められており、その一環としての「柔軟な働き方」の実現は、今後も中長期的に取り組まれるテーマです。こうしたことからも、リモートワークを活用したハイブリッドな働き方は今後さらに広がっていくでしょう。

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薬袋友花里
日本国内や海外を転々としながらリモートで働くデジタルノマド生活を送る。読売新聞編集記者、在重慶日本国総領事館専門調査員、日本航空業務企画職を経て、現在はバーチャルオフィスを提供するスタートアップ「oVice(オヴィス)」の広報担当。1987年生まれ、山梨県出身。