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リモート時代のウェルビーイングに必要なのは「見える・見られる」というコミュニケーション

ウェルビーイングへの日本社会の関心は高まり続けています。リモートワークの普及で、働き方が変わり、生活と仕事の双方を充実させることは、これまでよりも実現しやすくなってきています。

ウェルビーイングとは「満ち足りた状態」のこと。それは職場だけでなく、家庭や社会とのつながりも含めた考え方で、物質面だけでなく、心理面も含めた概念です。

働き方に関しては、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」に取り組む企業も増えています。そのなかで、心理的に満たされる職場とはどのようなものなのでしょうか。oVice社のメンバーとの関係性から考えてみました。

人間関係には、反応が大事

LINEヤフー代表取締役会長の川邊氏は、SNSに10月20日、以下の内容を投稿しています。

川邊氏のX(旧Twitter)の投稿

この投稿には、職場のウェルビーイングを理解するためのヒントがあると感じました。以下は投稿の一部分です。

人間は社会的動物です。人と人の間で報告、連絡、相談し合いながら日々を豊かにしています。
少人数の友人間、家族間でも上記の報・連・相の即レスがなければ日々は停滞、劣化していきます。

出典:https://twitter.com/dennotai/status/1715141099629760821

人が満ち足りた状態であり、関係性を維持していくためには、誰かに何かを伝えること、そしてその誰かから反応をもらうことが必要だと川邊氏は述べています。

返信・反応の速さはもちろんのこと、その有無が組織に与える影響の大きさを考えさせられる投稿です。

リモートで「見えない」メンバー、反応不足が負の感情を生み出す可能性

以下のような経験をしたことはないでしょうか。

 チャットツールなどでメッセージを送ったものの、反応がなくそのまま止まってしまう。
 進捗共有の場では時間不足などの理由で確認がとれず、その後も返事が得られない…

同じミッションに向かって手を取り合って行くべきはずが、このような状態だとやりづらさや苦しさを感じてしまう方もいるでしょう。返信・反応の有無は、職場のウェルビーイングに大きな影響を与える可能性があります。 

「即レス」を社内ルールにすることも一つの解決策ですが、それはイソップ寓話の一つである『北風と太陽』でいえば、「北風」にあたる対応となると思います。

では、「太陽」のような対応とはどのようなものでしょうか。

もしかしたら、対面で「先ほど送った件ですけれど」と話しかければ、「ああ、あのことね」のように返事がもらえるかもしれません。こうして返信・返答に関しての明確なルールを設ける代わりに、こうしたコミュニケーションを増やすことが、筆者は「太陽」の対応だと考えています。

オンラインで「同期的」×「突発的・偶発的」コミュニケーションを取り戻す

では、離れ離れの場所にいる二人に、一緒のオフィスにいるときに得られる「同期的」×「突発的・偶発的」コミュニケーションの機会を実現することは不可能なのでしょうか。

「そんなことはない、オンラインでそのようなコミュニケーションが実現する…」そんな意見をお持ちの方は、きっとバーチャルオフィスを使ったことのある人でしょう。

バーチャルオフィスは、アバターで二次元のスペースに入室し、そこここにいるメンバーに、近づけば声をかけられるサービスです。相手の姿があり、距離があり、それは現実空間の再現のようでもあります。

時には応答できないこともあるかもしれませんが、ビデオ会議ツールやチャットツールとの違いは、「後でまたコミュニケーションをとってみよう」と思える点です。

例えばバーチャルオフィスのoviceなら「肩ポン」機能を使って話しかけようとした履歴を残すこともできます。もしかしたらその同僚のそばにいたメンバーが、「さっき○○さん話しかけてたよ」というふうに教えてくれるかもしれません。

ウェルビーイングな職場に必要な体験とは

バーチャルオフィスにアバターをおいている際の感覚を文字で伝えるのは難しいですが、頑張ってその一部を表現するならば、たとえば以下のような出来事があります。それによって、「私はメンバーとかかわっている」「メンバーは私を認識している」という感覚が得られており、こうした体験は、ウェブ会議ツールやチャットツールでは実現しづらいものだと感じています。

例①アバターの動きで、自身の感情を表現する。

例えばoviceで勤務している際、相手のアバターの近くで自分のアバターを動かします。こうすると、リアルな場で話しかける前に手を振るような雰囲気でコミュニケーションを始めることができると感じています。
こうした動きは、特に「相手とラフな雰囲気で会話がしたいな」という際にとることが多く、自分の感情を表現する手段にもなっていると思います。

 

例②コミュニケーションの相手だけではなく、周囲のメンバーがその様子を見ている。

例えばovice上では、誰かと誰かが近づいている様子から、「あの二人は何か話しているな」と気づくことができます。
アバターのいる位置などで相手の様子が分かるので、例えばもし何かのトラブルを抱えている時に上長と2人で会話していれば、その会話の様子を見ていた同僚から「さっきはどんな会話をしていたの」「解決しそう?」といった声をかけてもらえることもあるのです。

 

バーチャルオフィスoviceにはこのほかにも、リアクション、絵文字、アバターにつける表示名、チャットなどなど…周囲からのリアクションを期待できる自己表現の場がたくさんあります。

▲アバターの名称に話しかけたい相手の名前を入れてアピールしている社員

このような自分から周囲へのはたらきかけ、そして周囲から自分への反応は、雑談に加えて、リアルなオフィスで起きていた“給湯室・喫煙所での何気ないコミュニケーション”を引き起こす役割も果たします。

ちなみに、雑談は幸せホルモンを分泌させる効果があり、バイタリティを高めるという調査結果もあるそうです。(出典:https://newspicks.com/news/8855213/body

雑談が人の中に幸せホルモンを生み出すのは、雑談というものがそもそも、「周囲からの反応を得たい」という感情を満たしてくれていることにも関係しているのではないでしょうか。

“雑談”や非言語のコミュニケーションと職場におけるウェルビーイング

物質的に満たされた日本社会では、多種多様な製品やサービスが、私たちの生活を過不足なく満たしてくれています。そんな私たちがいま職場に求めているのは「利便性」「生産性」以上のものかもしれません。そんなある意味贅沢な私たちにとって、時には、“雑談”や非言語のコミュニケーションを介して人とのつながりを感じられる職場こそが、ウェルビーイングな職場と言えるのではないでしょうか。

そこに「居る」相手にすぐに話しかけられること、コミュニケーションを周りが見守ってくれること。

そのような関係や環境が、リモートワークやオフィス出社が混在するこれからのハイブリッドな職場でウェルビーイングを実現するために必要なのではないでしょうか。

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山浦雅香
1985年生まれ、茨城出身、東京在住。2007年北京に一年留学。ライター・編集。翻訳や中国向けSNSコンテンツ監修、中国VR展示会アテンドなども。