部門リーダーやプロジェクトマネージャーなど、チームを統率する立場の方であれば「チームビルディング」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。
しかし、チームビルディングという言葉自体は知っていても、具体的な取り組み方についてはよくわからないという方は少なくないのではないでしょうか。
チームビルディングは組織開発の手法の一つであり、チームワークやチームマネジメントとはその意味は異なります。
この記事では、チームビルディングの概念や取り組み方をはじめ、オンラインで実施する際のポイント、ビジネスメタバースが果たす役割について解説します。
目次
チームビルディングとはどういう意味?
チームビルディングとは組織を開発するための手法の一つであり、チームメンバー個々のスキルや能力を最大限に発揮して、チームのパフォーマンスを上げるための取り組みです。
近年のビジネス環境では「個性」を重視する傾向がありますが、その個性を活かしつつ、チームとして機能させることがチームビルディングの目指す姿です。普段のコミュニケーションをはじめ、ワークショップや社内イベントなどもチームビルディングに含まれます。
チームビルディングとチームマネジメント・チームワークの違い
チームビルディングと似た言葉に、「チームマネジメント」と「チームワーク」がありますがその意味は異なります。
言葉 | 意味 |
チームビルディング | チームメンバーそれぞれのスキルと能力を最大限に活かし、チームパフォーマンスを向上させるための取り組み |
チームマネジメント | リーダーが中心となり、メンバーへの指示や仕組み作りなどのあらゆる手法を用いて、組織・集団の目標達成を導くこと |
チームワーク | 同じ組織・集団に属するメンバーが、共通の目標に向かって協力しながら進める共同作業 |
チームマネジメントはリーダーが主体となり、指示を与えることに重きが置かれるのに対して、チームビルディングはチームメンバー全員で行う取り組みです。
また、チームワークは概念を表すのに対して、チームビルディングは具体的な取り組みを指します。
チームビルディングにおける「チーム」の定義
チームビルディングを行う上で、「チーム」という言葉の定義をメンバー間で揃える必要があります。世界で最も影響力のある企業の一つであるGoogleも、効果的なチームの条件を考えるにあたって、「チームとは何か」を明確にすることが重要であると言及しています(※)。
チームとは、共通の目標と目的を掲げ、それを達成するために進捗をともにする組織であり、単なる人の集まりである「グループ」とはその意味が異なります。とくに、ビジネスにおいては「チーム」と「グループ」では発揮できるパフォーマンスに差があります。
チーム :メンバー個々の能力や技術など特性に合わせて編成される組織。仕事においては相乗効果を期待できる。グループ:単に区分けされた人の集まり。仕事においてはメンバーの数に合わせて、作業が割り当てられるだけであり、相乗効果は期待できない。 |
<参照>(※)Google re:Work|「効果的なチームとは何か」を知る
チームビルディングが求められる背景
先述したように、近年のビジネス環境は一昔前と比べて大きく変化しています。
新卒で入社した会社に定年まで勤め上げる人は少なくなり、中途採用やアウトソーシングが一般的になりました。そのため、会社においてもトップダウンのマネジメントが機能しづらくなっています。
また、コロナ禍以降はリモートワークが普及し、社員の会社への帰属意識は薄くなっています。
このようにメンバーの働き方が多様化する現代においては、チームのビジョンを明確にしてメンバーに共有すること、メンバー間での意識や認識のズレを合わせることの重要性は高まっています。
リモート環境でのコミュニケーション不足に悩む社員が増えていることも背景に、企業がチームビルディングを実施するメリットは近年とくに大きくなっています。
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チームビルディングの6つの目的
チームビルディングの主な目的は以下の6つです。
それぞれについて解説します。
①チームメンバーの関係強化
チームビルディングでは共通の目標を掲げ、その過程でコミュニケーションを密に取り合います。
コミュニケーションの活性化により、メンバー同士の関係性は強化され、チームとしての一体感も醸成されます。
②マインドセットの形成
マインドセットは各人が持っているものですが、チームの結束力が高まることで、“組織の目標達成”のために必要なマインドセットが形成されます。
また、共通のマインドセットを共有することはモチベーションの向上にも寄与するはずです。
③ビジョンの浸透
チームビルディングは、期初やプロジェクトのキックオフと同時に導入されることが多く、チームのビジョンを共有します。
ビジョンを明確にして共有することで、メンバーはそれぞれの役割を認識し、責任感をもって仕事に取り組むことができます。
④人材の育成
チームビルディングは新人研修でも実施されることが多く、新人をはじめとした若手社員のコミュニケーション不足を解消するのに効果的です。
また、チームビルディングを主導する立場の中堅以降のマネジメント人材の指導力向上も期待できます。
⑤適切な人材配置
チームビルディングに取り組むなかで、チームメンバーはお互いの技能や価値観、考え方を理解できるようになります。
その結果、メンバーの特性に合った人材配置を行えるようになります。
⑥パフォーマンスの向上
メンバーそれぞれに適切な業務、役割を与えることでチームとしてのパフォーマンスは向上します。
また、チームビルディングは「チーム力の向上」に焦点が当たりやすいですが、取り組む過程において、多様な価値観に触れることができます。これにより、メンバー個々のレベルアップも期待できます。
チームビルディングの5つの段階
チームが成熟するまでにはいくつかの段階が存在します。チームの状態(成熟度)を5段階に分けた概念「タックマンモデル」はチームビルディングを行う上では押さえておきたい考え方です。
タックマンモデルでは、チーム成熟度のフェーズを以下の5つに分類しています。
フェーズ | 特徴 |
①形成期 | チームが形成されて間もないため、個人の役割が定まっておらず、お互いのことをよく知らない状態。チームに緊張感があるため、お互いについて理解することが大事。 |
②混乱期 | メンバー同士の理解が浅く、ぶつかり合うこともある状態。メンバー間での意見の対立を恐れないことが大事。 |
③統一期 | チームとして形を成しつつあり、各メンバーが役割を認識・共有している状態。メンバーの個性をより活かせるような役割分担を考えることが大事。 |
④機能期 | チーム全員が主体的に行動できて、目に見えた成果を上げられる状態。継続するためには、マネージャーは細かい指示は避けて、メンバーのメンタルケアや自立を助ける取り組みが大事。 |
⑤散会期 | メンバーそれぞれが次のミッションやプロジェクトに向けて動き出して、チームとしての活動が終了する状態。チームビルディングが成功したかどうかはこのフェーズではじめてわかり、メンバー間で称賛しあったり、解散を惜しむような姿があれば成功といえる。 |
チームビルディングにおいては、それぞれのフェーズに合った取り組みを実施することが重要となります。
チームビルディングのやり方〜研修内容やおすすめゲーム〜
ここからは、チームビルディングを実施する上で重要なことや具体的なやり方など、チームビルディングの方法を説明していきます。
研修やゲーム内容に悩んでいる企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
チームビルディングを実施する上で重要なこと
まず、チームビルディングを実施する上で押さえておきたい重要なポイントは次の通りです。
それぞれ、詳しく説明します。
チームの目標を明確にする
チームの目標が明確でなければ、メンバーは自発的に動くことができないため、目標を明確にすることは最も重要です。
また、チームの目標はモチベーションにも関わるため、「営業売上○○万円を達成する」など、できるだけ具体的に設定しましょう。
心理的安全性の高い環境を作る
チームビルディングを成功させるには、メンバー間での活発なコミュニケーションが欠かせません。
メンバーが安心して発言できるように、お互いの意見を尊重するのはもちろん、色々な意見があったとしても、一人ひとりの多様性を受け入れられるようなチーム環境を目指しましょう。
義務的にしない
チームビルディングはメンバーに強制するものではありません。メンバーの主体性を醸成する(自発的に行動する)ことが重要であるため、チームビルディングの取り組みが義務にならないように注意が必要です。
チームビルディングに自発的に取り組んでもらうには、メンバーに取り組みの目的を丁寧に説明した上で、選択肢を与えるようにしましょう。
チームビルディングのやり方5パターンを紹介
チームビルディングに貢献する代表的な取り組みとして、次の5つがあります。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
①座学
座学は、基礎知識の習得に効果的です。とくにチームを結成して間もない時期(タックマンモデルにおける「形成期」)で行うと有効になります。
座学を通して、メンバー各自がチームとしての目的やチームビルディングに取り組む意味について理解を深められるようにしましょう。
ただし、一方的に教えるだけではメンバーが退屈に感じてしまいます。座学の後半ではワークショップを実施するなど、メンバーが主体的に参加できるような工夫をすることがおすすめです。
なお、チームの結成初期に実施する場合は、メンバー同士の理解を深められるようなワークショップを実施すると良いです。
②グループディスカッション
グループディスカッション(メンバーとの対話)は、メンバー同士の理解を深めることに役立ちます。とくに、タックマンモデルの「混乱期」である、メンバー間での意見の食い違いが起きやすい時期に実施すると効果的です。
注意点として、グループディスカッションの目的はお互いの理解を深めることであり、正解を求めることではありません。相手の意見を頭ごなしに否定せず、受け入れるように心がけましょう。
「人生とは?」「働くとは?」など、正解を導き出せないような壮大なテーマでディスカッションすることがおすすめです。
③ゲーム
ゲームは楽しみながら取り組めるので、チームにおける緊張感の解消や、コミュニケーションの活性化に効果的です。
チームビルディングのゲームは様々な種類があるので、チームの成熟度に応じて選ぶことをおすすめします。
ただし、チームビルディングでは、楽しくゲームをすることが目的ではありません。ゲームを行う意味を、各メンバーへ事前に説明しましょう。
代表的なチームビルディングゲームとして、次のようなものがあります。
ゲーム名 | 概要 |
マシュマロチャレンジ | 乾麺のパスタやマシュマロ、ひも、テープなどを使って自立可能なタワーを立てるゲーム。一番高いタワーを立てたチームが優勝となる。4人1チームで18分間の時間制限を設けてプレイする。 |
謎解き脱出ゲーム | 制限時間内に謎や暗号を解き明かし、閉ざされた空間から脱出するゲーム。制限時間は1〜2時間程度で、謎や暗号の難易度に合わせて調整する。1チームの人数は自由。 |
共通点探しゲーム | 制限時間内にペアになった人との共通点をできるだけ多く探すゲーム。ペアは適宜変更しながら、最終的にはチームメンバー全員とペアになるようにする。 |
チームビルディングのゲームについて、詳しくは次の記事もチェックしてみてください。
関連記事:
チームビルディングに使えるおすすめゲーム&自作するときのポイント
④社内イベント
バーベキューや社内運動会、合宿などの社内イベントもチームビルディングの手法の一つです。仕事以外の場所でメンバーと交流することで、普段の業務では気づきにくい魅力を発見できます。
ただし、チームを結成して間もない時期は、メンバー同士の理解がまだ浅いため、社内イベントに参加したくないメンバーもいることが想定されます。
そのため、社内イベントはチームの結束が強くなった時期(タックマンモデルにおける「統一期」「機能期」)に実施することが理想的です。また、強制参加を強いる状況は避けて、自発的な参加を促すように心がけましょう。
⑤1on1
「1on1」は、チームマネージャーとメンバーが1対1で面談することです。定期的に実施すると、メンバーの微細な変化や潜在的な問題に気づくことが可能になります。
とくに、チームとしての成熟度が高くなった時期(タックマンモデルにおける「機能期」)は、チーム全体として上手く進んでいるように見えることもあり、個人の悩みやストレスに気づきにくくなりやすいです。
チームの成熟度に関わらず、1on1を継続的に実施することで、メンバーの状態を把握できるように努めましょう。
チームビルディングを外部の研修会社に委託する選択肢も
自社内でチームビルディングを企画するノウハウやリソースが不足している場合、チームビルディング研修を提供している、外部の会社に委託する選択肢も有効です。
外部の研修会社に依頼することで、事前の準備や運営にかかる工数が大幅に削減されます。それだけでなく、専門家からの指導やフィードバックにより、新たな視点やアイデアを得られる可能性もあります。
さらに、チームビルディングを進めていく上で、社内のメンバーには言いづらいことでも、社外の人であれば気軽に相談できる場合もあります。
チームビルディング研修を実施している会社はたくさんあるため、料金や特徴、実績などをしっかり比較し、自社に最適なサービスを選びましょう。
オンラインでのチームビルディングに「ビジネスメタバース」が有効な理由
チームビルディングが注目されるようになった背景として、リモートワークが普及したことが挙げられます。
リモート環境におけるオンラインでのコミュニケーションは得意な人とそうでない人がいるため、うまくコミュニケーションが取れずに疎外感や孤独感を抱えている人が増えています。
それを解消する施策として、チームビルディングは有効であり注目を集めていますが、オンラインならではの注意点も存在します。
ここでは、オンラインでチームビルディングを実施する方法について説明していきます。
オンラインでチームビルディングを実施する際のポイント
オンラインでチームビルディングを実施する具体的な方法を紹介する前に、実施する際のポイントを見ていきましょう。
それぞれ、詳しく説明していきます。
気軽に参加できるプログラムにする
チームビルディングは、通常の業務ミーティングとは異なり、メンバーがリラックスして楽しめる環境を作ることが大切です。
オンラインでのチームビルディングでは、各メンバーが別々の場所で参加することが多い点に考慮する必要があります。
誰でも気軽に参加できるプログラムとしては、ゲームがおすすめです。
通信環境を確認する
オンラインでチームビルディングにおけるプログラムを実施する際、各メンバーの通信環境の確認は必須です。不安定な通信環境の場合、コミュニケーションがスムーズにとりづらくなるなど、プログラムに影響を及ぼします。
通信環境の他にも、Google MeetやZoom、Microsoft Teams、Chatworkなど、実施するプログラムに合ったツールを選ぶように心がけることも大切です。
初対面の人がいる場合は、なるべく顔出しで参加してもらう
チームビルディングは、お互いを知ることが第一歩です。
とくに初対面の人がいる場合は、なるべく顔出しで参加してもらうようにしましょう。画面越しでもメンバー同士の顔を合わせることで、初めて参加するメンバーの不安を和らげることにつながります。
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いつでも発言できる場所を設ける
オンラインでチームビルディングにおけるプログラムを実施する場合、当事者以外が参加しづらい状況が生まれる可能性があります。
チャットツール内に専用のチャンネルを作るなど、当事者以外が発言(コメント)できる場所を用意しておきましょう。
オンラインのチームビルディングにおすすめのゲーム
オンラインのチームビルディングにおすすめのゲームには以下のようなものがあります。
ゲーム名 | 概要 |
グッドアンドニュー | チームメンバー各自が24時間以内にあった「良かったこと(グッド)」と「新しい発見(ニュー)」を共有するゲーム。24時間以内が難しい場合は1週間、1ヶ月に期間を変更しても良い。 |
他己紹介ゲーム | 2人1組のペアになり、パートナーのことを参加メンバーに紹介するゲーム。メンバーに知らない人同士がペアになって想像だけで紹介するといった違う楽しみ方もできる。 |
オンラインでのチームビルディングのゲームについて詳しくは以下の記事で詳しく紹介しています。
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オンラインでのチームビルディング取り組み事例
オンラインでのチームビルディングの取り組み事例として、今回は次の2つを紹介します。
どのような工夫をしてオンラインでのチームビルディングを行っているのか、詳しく見ていきましょう。
株式会社MIXI
国内大手のIT企業である株式会社MIXIでは、「組織の粘着力」を高める目的でビジネスメタバースのoviceを導入しています。
「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」をパーパスに掲げる同社は、リモートワーク環境におけるコミュニケーションの質と量に課題を感じていたことが導入のきっかけだったといいます。
同社ではオンライン画面上のバーチャル空間にアバターを使ってコミュニケーションが取れるoviceを毎日の朝会に活用。アイデア創出のための社内イベント「アイデアソン」もoviceを使って開催しています。
oviceについては「コミュニケーションがよりとりやすくなった」「孤独感が解消された」といったポジティブな意見が多く、リモートワークの課題解消に一役買っています。
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“組織としての粘着力”取り戻したMIXI ミニモ事業部。アバターだから、アイデアソンも盛り上がる!
株式会社メルカリ
フリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリは、多様なバックグラウンドを持つメンバーが在籍していることから、メンバーの相互理解のためにチームビルディングに注力している企業として知られています。
オンラインにおける取り組みの一つとして、チームメンバーがGoogleのハングアウト上に集まり、何を描いたのかを当て合うゲーム『Gartic.io』を取り入れています(※)。
同社では、他にもオンラインで様々なチームビルディングに取り組んでおり、その模様は公式サイトで紹介されています。
<参照>(※)リモートでチームビルディング!?メルカリCRE Mobileチームの試みに参加してみた #メルカリな日々
ビジネスメタバースがチームビルディングに果たす役割
先述した株式会社MIXIのように、オンラインでのコミュニケーションを活発化させるためにビジネスメタバースを導入する企業は増えています。
ビジネスメタバースとは、仮想空間にオフィスを構築し、アバターを使ってコミュニケーションを取れるツールです。リモートワーク環境でもオフィスに出社しているときと同じようなコミュニケーションを取ることができます。
ビジネスメタバースがチームビルディングに果たす役割は大きく、リアルなコミュニケーションを図れるだけでなく、アバターを通じて自分のアイデンティティをアピールすることもできます。
ビジネスメタバースのoviceは、バーチャルオフィス空間を広くしたり、豊富な背景レイアウトから選べたりするなど、カスタマイズ性が高いことも魅力の一つ。「素敵なオフィス空間のコンテスト」といった、ビジネスメタバースならではのイベントを開催することもできます。
まとめ
今回は、チームビルディングの概念や方法、オンラインにおける取り組み方までを解説しました。
チームビルディングにおいて最も重要なのは「コミュニケーション」です。メンバー間で密接にコミュニケーションを取ることがチームの成熟度を高め、パフォーマンスの向上につながります。
オンライン環境はコミュニケーションが不足しやすいですが、チャットツールやWeb会議ツール、またビジネスメタバースを活用することでチームビルディングを活性化させることが可能です。
オンラインでのチームビルディングに取り組みたい、また取り組んではいるものの課題を感じている企業の担当者様は、ぜひ一度ビジネスメタバースのoviceをご検討ください。