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令和のリクルーティング、人材確保に欠かせないリモートワーク 募集に対し20倍応募のケースも

もはやリモートワークなしではリクルーティングもおぼつかない…令和の働き方改革はそこまで歩みを進めた。

Yahoo! JAPANは2022年4月1日に「出社指示があった際に公共交通機関を利用して午前11時までにオフィスに出社できる範囲」という居住地の制限を撤廃。「どこでもオフィス」を打ち出し全国どこに居を構えようと勤務できる形態へと移行した。同社の私の知人も神奈川県在住だったが、この本格導入を受け福岡県に転居を決め、早々に引っ越して行ってしまった。

<参照>ITmedia|ヤフー、居住地・通勤手段の制限撤廃 日本全国どこでも勤務可能に

リモート・ワークは社員の能動的選択肢

メルカリも「ニューノーマル・ワークスタイル “YOUR CHOICE”」とし、リモート、オフィス勤務に縛られない、社員が選択する自由な働き方を推進。「日本電電公社」だったNTTでさえも転勤を強制しないリモートによる勤務に乗り出した。

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元来「働き方改革」が推奨されてはいたものの、新型コロナ蔓延による「ステイ・ホーム」が大きな転機となったのはご承知の通り。しかし、コロナの落ち着きにより経営者が、オフィス勤務を強制したところ、オフィスでのフルタイム勤務であれば、転職を厭わない社員が珍しい存在ではなくなった。

特にアメリカでは「Pew Research Center」の調査によると、2020年10月時点でテレワーク勤務の理由を訊ねたところ64%がコロナ蔓延により「出社できないから」と回答していたものの、22年1月の調査では61%がテレワーク勤務を「自身で選択している」となり、意識そのものの変化が明らかになっている。

また、22年1月の同調査では「ワークライフ・バランス」についても、リモートワークのほうが「効果的である」と回答した者の割合は64%。「どちらでも変わりはない」が20%。むしろオフィス勤務のほうが「効果的」と回答したのは16%にとどまった。

<参照>Pew Research Center|COVID-19 Pandemic Continues To Reshape Work in America

日本で働き方改革を推進するこうした企業の関係者に話を訊くと、リモートワークはもはやリクルーティングという観点から不可欠となっているという。

IT企業にとってエンジニアは事業の根幹を構築している。ITが不可欠となった世の中においては、エンジニアのニーズはもちろん上昇、すでに大都市圏在住の優秀なエンジニアは各社に囲われている状況にあり、ヘッドハンティングには高額なサラリーを用意しなければならない状況だ。

しかし、それが地方在住のエンジニアについては、まだ余地があり、わざわざ大都市圏に呼び寄せず、地方在住のまま優秀なエンジニアを囲い込むためにも、勤務地の自由度を広げたほうが、リクルーティングに有利という切実な事情があるという。

「エンジニアの確保ね、なるほどね」などと、したり顔で頷いていたところ、実はリクルーティング市場はもっと先へと進んでいると指摘された。

リモートワークは、もはや求職条件のTOP3

人材派遣、職業紹介事業の中堅として知られるヒューマンステージ株式会社京都支店の夘山剛(うやま・たけし)マネジャーにお話を伺うと、もはやエンジニアに限った話題ではないそうだ。

夘山さんは「もはやリモートワークは、勤務地や年収などとならび求職者から求められる条件のトップ3に入っています」と明言。

「京都」という土地柄、やはり地場の顧客を大切にする傾向は強く、経営者からもオフィス勤務や「フェイス・トゥ・フェイス」での打ち合わせを要望される機会は多いという。

しかし求職者からはリモートワークの要望はさらに高まっているそうだ、現在でも現場勤務が必須となっている製造業への応募者は減少傾向、リモートワーク可能なサービス業などへの応募はさらなる増加傾向にあり、夘山さん自身もリモートワークによる求人格差は広がると読んでいるそうだ。

その論拠として「フルリモートの求人は多くはありませんが、先日も求人に対して20倍以上の応募がありました」とその人気について明かした。

そもそもヒューマンステージ社のように派遣業を営む社にとって、リモートワークそのものは、これまでの通勤途中の不慮の事故などのリスクを軽減できる上に、現在では新型コロナ・ウイルスへの感染をさけるためにも、歓迎すべき働き方改革と認識している。

その上、同社は全国に拠点を持ちながら、コロナ前までは各支社の連携はそれほど深くなく、各支社がそれぞれの施策を遂行する傾向にあったものの、リモートワークによりむしろ連携が深まり支社間の連帯感が生まれるメリットもあるそうだ。

ただし、やはり各業種で認識が進んでいる通り、新入社員や未経験者は、リモートコミュニケーションを苦手とする状況にあり、この点についてはいまだにリモートワークとしては課題として残っていると見ているとか…。

今後はoviceなどを始めとする、リモート・ツールをより活用することで、さらなる改善につなげて行くという。

絶滅危惧種「昭和のおっさん」は保護すべきではない

私自身、汐留の某広告代理店に転職した際は「徹夜で呑んだ後でも、朝は這ってでも会社に来い。会社では寝ててもいい」と諭された経験がある。実際、本社4階の医務室には「仮眠室を借りたいです」と足を運ぶ若手は珍しくなかった。

NTTドコモでも始業時間前、朝8時にはオンデスクで勤務していたもの。それが数年後には、すっかりリモートワークなしでは働けない身体になってしまい、これまでいかに通勤時間が無駄だったかを痛感。リモートの効率性に身を委ねる每日だ。

それでも、中には未だに電話で長々と業務連絡を続け、フェイス・トゥ・フェイスの打ち合わせを必須とする昭和の化石のようなオジサンたちが生き永らえている。こうしたオジサンたちを絶滅危惧種として保護する必要はない。eメールというツールが一般化しすでに30年が経とうとしている。バーチャル・オフィス化が進むこの世において、こうした絶滅危惧種には、早々に退場願いたいものだ。それが会社組織のためであるという点、すでにリクルーティング市場、人材確保の面でも詳らかになっているのだから…。

昭和のオジサンのひとりとして少々生きにくくなってはいるものの、それは時代の趨勢、やむを得ないは承知の上である。


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松永裕司
Forbes Official Columnist ● NTTドコモ ビジネス戦略担当部長/ 電通スポーツ 企画開発部長/ 東京マラソン事務局広報ディレクター/ MSN+毎日新聞プロデューサー/ CNN Chief Director などを歴任。出版社、テレビ、新聞、デジタルメディア、広告代理店、通信会社での勤務経験から幅広いソリューションに精通。