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「雑談=ムダ話」は誤解。会議よりも“会話”をしよう

リモートワークが急激に普及したことで、多くの企業で「コミュニケーション不足」が問題に挙げられました。コミュニケーションを増やすためにオンライン会議ツールを導入し、コロナ前と変わりなく会議が行えるように環境を整えた企業も多いでしょう。

ここで考えなければならないのは「会議を増やして、本当にコミュニケーションが増えるのか」という問題です。

会社の方向性を決めたり、大事な情報を社内で共有したりするために、たしかに会議は必要です。ただし「コミュニケーション不足」の解決策としてはあまり機能していないように感じます。

この記事では様々な事例を参考に、コミュニケーション不足を解消するために何が必要なのか、紐解いていきたいと思います。

オンラインでは“会議はできるが会話がきつい” 副都知事のX投稿が話題に

オンライン会議ツールを導入し、コロナ前と同じように会議は行えているのに、なぜか組織に元気がない。そう感じている方も多いのではないでしょうか。

先月、東京都副知事の次のポストが話題を呼び、1,000件を超す「いいね」がつきました。

<出典>宮坂@東京都副知事&GovTech東京理事長のポスト(X)

この投稿を見て、「ツールを導入してスムーズに会議を行えるようになっても、それだけではコミュニケーション不足の課題は解決しない」と共感した人も多いのでしょう。返信欄には次のような反応がありました。

<出典><a href=httpstwittercommiyasakastatus1693038973088886959 target= blank rel=noopener title=>宮坂東京都副知事GovTech東京理事長のポストX<a>返信欄

「心理的安全性がない」チームは会議時間が長い

2021年に出版された『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣 』(著:越川 慎司/ディスカヴァー・トゥエンティワン)でも、次の調査結果が紹介されていました。

クライアント企業25社に協力してもらい調査しました。本人を特定しない匿名アンケートで「心理的安全性がある」と答えるメンバーが7割以上いるチームと、「心理的安全性がない」と答えるメンバーが7割以上いるチームで比較しました。

すると、「心理的安全性がない」チームは、会議時間が長いことがわかりました。各社平均の20~30%も多く打合せが入っているのです。

AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣 (著:越川 慎司/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

心理的安全性の高い企業は会議時間が短くて済み、それだけ生産性を上げられると言えるでしょう。では、どうすれば組織の心理的安全性を高められるのでしょうか。

同書では、優秀なリーダーは「『ほうれんそう(報告・連絡・相談)』よりも、まず『ざっそう(雑談・相談)』を目ざし、メンバーと雑談・相談(ざっそう)し合える関係を作ろうとします」と述べられています。

昔から社内コミュニケーションでは「報連相」が大事だと言われてきました。オフィスで働いていれば自然と雑談が生まれていて、その延長線上に「報連相」の機会を作りやすかったからかもしれません。

リモートワークも一般的になった今、意識的に雑談を生み出せる環境づくりも、リーダーに求められる仕事のひとつだと言えるでしょう。

単に雑談を増やすだけでなく、会話を通してメンバー同士の共通点を探し、距離感を縮めることが重要です。雑談の効果を高めるためにも、目的を持って会話することを意識してみてください。

<参考>東洋経済オンライン|会議の「冒頭2分は雑談」ルールが効果絶大な理由

“会話”で社員も事業も成長させる「ほぼ日」

糸井重里さんが代表を務める株式会社ほぼ日は、ウェブサイトを通じたコミュニティ運営と、文具などの商品や書籍の企画・販売を行っています。同社でも、組織づくりにおいて雑談が重視されています。社会学者の樋口 あゆみさんが「ほぼ日」の社内調査をまとめた記事の中では、雑談についてこう記述されています。

「ほぼ日」において雑談は単に気軽な息抜きの役割を超えて、さまざまな機能を負っている。それは仲間同士の軽妙なかけあい、とっさの手助けなどを含んだ即興劇的な息抜きや情報共有であると同時に、個人の熱意の種を芽吹かせて企画に変えていく現場であり、さらには社員一人ひとりのキャラクターを磨き上げていくことで、将来、コンテンツへと転化する目論見を含んだ修練の機会でもある。

「ほぼ日」はなぜ雑談を重視するのか|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

雑談で心理的安全性を高めるだけでなく、会話を通して社員を成長させ、事業の成長に繋げようとしているとのことでした。

このように会話の役割は「なんとなく社内の雰囲気をよくするもの」にとどまりません。話すことで社員同士の理解が深まれば、それぞれの個性を活かして企画に活用することもできるのです。

「雑談はムダ話」という誤解

雑談=「ムダ話」というイメージを持つ方も少なくないでしょう。しかし両者は似て非なるもの。

たとえば、左官訓練センターを運営する株式会社オオタのコラムの中では「雑談は人を惹きつけるが、ムダ話が人を引き寄せることはない」と語られていました。人を惹き付ける意図を持って話せば「雑談」に、そうでなければムダ話になってしまう、という話に共感される方も多いのではないでしょうか。

最初から「ほぼ日」のような雑談をするのは難しいかもしれませんが、意識して続けていれば雑談スキルも蓄積されていくでしょう。また、面白い話ができないからといって悲観することはありません。いい聞き手になれば、会話の質を上げられるからです。

あなたも、相手の聞き方によって話しやすかったり、逆に話しづらいと感じたことはないでしょうか。いい聞き手になれば話は盛り上がりますし、あなたと「また話したい」と思ってもらえるでしょう。

複数人で雑談をする場合、ファシリテーター役になるのもおすすめです。話に入りにくそうにしている人に話を振ったり、盛り上がりにくくなったときは話題を変えたり。ファシリテーターがいることでも、雑談の質は大きく変わります。

<参照>株式会社オオタ|雑談とムダ話の違い!

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リモートワークで姿を消した「会話」を取り戻そう

組織でよい仕事をしていくためにはコミュニケーションが欠かせません。

ご紹介した事例を通じて、仕事における大事なコミュニケーションとは「会議」だけでなく、ムダ話のようにも感じられる「会話」もまた同様だと、共感された方も多いのではないでしょうか。

私自身も、会話が仕事に活きた経験は少なくありません。会議中はどんなに頭を捻っても浮かんでこなかったのに、会議が終わって雑談をしていたら、溢れるようにアイディアが出てきたこともしばしば。

会議となると「まともなことを言わなければならない」という意識から、自由な発想に蓋をしていたのかもしれません。そのときはブレインストーミング以上に雑談の時間を増やした方が有益なようにも感じました。

コロナ禍を経て再び対面での交流も増えている今、「会議」と同じように「会話」の重要性にも目を向けてみませんか。雑談を通じて繋がることで、お互いが職種や肩書き以上の役割を果たせる、よいチーム形成に活きるはずです。


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SuzukiKohei
フリーのビジネスライターとして、ビジネスメディアでの執筆やベンチャー企業の採用広報を担当。起業家や投資家のほか、ベンチャー企業とのオープンイノベーションに積極的な大企業への取材を行う。