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リモートワークは廃止にすべき?国内外企業の動向と、デメリット対策のアイデア

感染症の拡大によって世界的に普及したリモートワーク。しかし、近年リモートワークを廃止する企業が増えています。世界的に有名な大企業も廃止したことによって、その影響は日本にも及んでいると言えるでしょう。

「新しい働き方の代名詞」として受け入れられたかのように思えるリモートワークですが、なぜ廃止する企業が出ているのでしょうか。本記事では、その理由とリモートワークのデメリット解決のための対策を紹介します。

リモートワーク・テレワークを廃止した大企業

まずは、リモートワーク・テレワークを廃止した大企業を日本国内、海外でそれぞれ確認してみましょう。

リモートワーク・テレワークを廃止した国内大企業

日本国内では、すでに多くの企業がリモートワークの継続・廃止を巡る意思決定をしています。

ホンダは2022年4月に、全部署で対面での働き方を重視する方針へ移行しています。IT大手GMOインターネットグループも今年(2023年)2月、「原則週2日在宅勤務」だった体制を原則出社に戻しています。こうしてみると、製造業からITまで、業界を問わずリモートワーク体制の見直しとそれに伴う出社の奨励が行われていると言えるでしょう。

一方で、必ずしもリモートワークから完全に出社に切り替える企業ばかりではありません。目的や担務に応じてリモートワークを採用し続けたり、制度として維持し続けたりといった動きが時事通信社により報じられています。

また日本政策投資銀行の調査によると、国内大企業に従業員の「理想的な出社率」について、32%が完全出社となる「10割」と回答したとしています。このように、大企業でも一定程度リモートワークによる働き方を問題視し、出社を歓迎する意見が見られます。

<参照>
GMOインターネットグループ株式会社|GMOインターネットグループ、新型コロナ対策完全撤廃に伴い週2日在宅勤務推奨を廃止
JIJI.com|テレワークかオフィス回帰か 企業、割れる働き方―コロナ「5類」移行
毎日新聞|大企業の32%「10割全員出社が理想」 5類移行で本音浮き彫りに

リモートワーク・テレワークを廃止した海外大企業

海外企業に目を向けると、フルリモートワークの廃止として最もインパクトがあったのがGoogleでしょう。2022年4月から在宅勤務期間を終了し、週3日以上の出勤を促しました。

また、代表がイーロン・マスクに代わったTwitter社も、彼が承認しない限りはリモートワークを禁止としています。最近では、Zoomがオフィスの近くで働く従業員に対して、週に少なくとも2日のオフィスへの出勤を義務付けたと報じられており、波紋を呼んでいます。

ただし同社ではGoogle同様、完全な週5出社ではなく出社とリモートを組み合わせたハイブリッドワークに移行しようとしています。

GoogleやZoomのような「ハイブリッドワーク」スタイルを採用する企業はコロナ後一般的になってきています。「出社だけ」に切り替える企業とは対照的に柔軟な働き方をさまざまな方法で実現し、これまでになかったアドバンテージを得ようとしています。

<参照>
CNN|米グーグルの在宅勤務期間終了へ、4月から週3日以上の出勤促す
HYPEBEAST|イーロン・マスクが Twitter 従業員にリモートワーク終了を通知
mashable|Even Zoom is making staff return to the office now

日本国内におけるリモートワーク・テレワークの現状

日本のリモートワークの状況はどうでしょうか。東京都産業労働局では「テレワーク実施率調査」を毎月実施・公表しています。これによれば、令和3年度(2021年度)春ごろの緊急事態宣言期間では60%以上の高い実施率で、その後も50~60%超となっていました。

新型コロナ5類移行後のことし5月と翌月6月直近では44.0%と、令和2年(2020年)4月以降で最も低い数字となりました。さらに、最新の調査データである2023年7月の調査結果では、45.2%と1.2ポイント上昇しています。

日本のリモートワーク実施率は東京都が国内でも高い水準にあることから、地方ではよりリモートワーク実施率が低いと考えられます。5月、6月のオフィス回帰のムーブメントを経て一部リモートワークを再度推進する動きもあるようですが、全体の大きな潮流としてはリモートワークからオフィス出社に回帰している、というのが現状のようです。

<参照>
東京都|テレワーク実施率調査結果 7月

企業がリモートワーク・テレワークを廃止する理由

ではなぜ、企業は一度導入したリモートワークを廃止するのでしょうか。その理由を整理します。

理由①コロナが終息したから

そもそも企業の多くは、新型コロナウイルスの感染拡大を防止することをリモートワークの主な目的にしていました。現在は、このような観点からはリモートワークを続ける必要は低下しています。

理由②効率が悪いから

リモートワークが廃止される理由として、効率の悪さを指摘する人もいます。リモートワークには、適切な環境が確保できないことによる集中力の低下や、オンラインでのコミュニケーションの難しさにより進行が妨げられてしまう可能性など、生産性を低下させる要因が付随しますす。

理由③コミュニケーションが難しいから

リモートワークを廃止する理由として、従業員間のコミュニケーションが不足してしまうという点もしばしば挙げられます。

相手の姿を見つけて話しかけることができる物理的出社でのコミュニケーションと比べ、オンラインでは相手に反応してもらわなければコミュニケーションを始めることができません。そもそも姿が見えないので、「あとで話せばよいか…」というように意図せず会話の回数が減ってしまうこともありえます。

このようなすれ違いから、コミュニケーションが減ってしまったというケースは珍しくないでしょう。コミュニケーションが減った結果、情報共有が疎かになりミスが増えたり、信頼関係を築けないと感じる企業もあるようです。

新しいアイディアを生み出すために、従業員同士のコミュニケーションを重視している企業も少なくありません。そのような考えに基づき、日々の何気ない会話や気遣いなど、顔を合わせて仕事をすることができるオフィス出社を復活することが必要だと判断することも当然でしょう。その結果、リモートワーク廃止となるケースもあります。

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理由④目標や価値観を共有しにくいから

リモートワークでは、会社が重要視するミッションやビジョンを共有したり体感してもらう機会が減り、結果としてチームの一体感や各従業員のエンゲージメントが低下する恐れもあります。

物理的にオフィスに出社することで、これらを空間から感じてもらったり理解してもらったりすることを意図するケースもあります。

リモートワーク・テレワークを継続するメリット

オフィス回帰が全体的な潮流とはいえ、リモートワークを継続している企業もあります。どのようなメリットを期待しているのでしょうか。

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事業のコストを削減できる

リモートワークを継続することにより、オフィスの規模を縮小することによる、家賃や光熱費などの固定費が削減できます。また、出社や対面での打ち合わせを削減することで、通勤費や出張費などの支出も削減できます。

リモートワークにより従業員のワークライフバランスが改善されることも期待できます。ワークライフバランスの改善によりエンゲージメントが高まれば、離職率が低下し、採用コストや教育コストの削減効果も期待できるでしょう。

業務効率の改善や生産性向上を図れる

リモートワークを継続することにより、生産性の向上も期待できます。リモートワークにより、従業員は自分に合った環境で仕事ができるため、集中力が高まり、生産性が向上することがあります。

また、通勤時間がなくなることで、心身ともに疲労が減り、より高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

採用で有利になる

リモートワークを継続することにより、採用面でのメリットもあります。リモートワークにより、採用に関する地理的な制約がなくなるため、より広い範囲から優秀な人材を採用できるからです。感染症拡大を背景に地方へ移住する人も増えたため、出社できる範囲だけで採用活動をしても優秀な人を採用するのは難しくなりました。

育児や介護などで通勤が難しい人材も採用の対象になるため、リモートワークによって採用活動の可能性を大きく広げられるのです。

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進むハイブリッドワークの流れ。リモートワークのデメリット、どう対策?

リモートワークのメリット・デメリットについては、この数年間、実践を通じてさまざまな情報が世の中にシェアされてきました。さらに、そうした課題を解決するための知識も広く共有されてきています。

今世の中で実践が進んでいるのは、リモートワークとオフィスワークを合わせた「ハイブリッドワーク」という働き方です。こうした中、これまでの「全員がリモートワーク」という状況の時とは異なる課題に直面しています。

最後に、リモートワークを継続しながらのハイブリッドワークが広まる中で、どのようにオフィスを活用すればそのデメリットへの対策となるのか、紹介します。

アイデア①社内コミュニケーションが生まれる工夫

リモートワークが抱える大きな課題のひとつに、社内でコミュニケーションがしづらいという点がありました。それなら、オフィスを「コミュニケーションが生まれる場所」としてデザインしましょう。「誰かと話して思考を整理したい」「みんなの考えを聞きたい」という場合にオフィスを活用できる場所にすることが重要です。

そのためには、1対1や複数人など、様々なシーンでのコミュニケーションを想定したレイアウトが必要です。気軽に立ち話できるエリアを設けることで「会話の相手が限定されてしまう」「定型的な会話しかできない」といった課題を解決できるかもしれません。フリーアドレスを導入することが解決策となる場合もあるでしょう。

コミュニケーションの場を物理的オフィスのみに限定せず、オンラインとオフラインでスムーズにつながることのできるツールや設備をそろえることもコミュニケーションの促進に役立ちます。

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アイデア②目標や価値観を共有できる空間

リモートワークの大きな課題である「価値観の共有」も、オフィスのデザインで補えます。ミッションやビジョンを表した掲示物を、オフィス内の目に着く場所に掲示するのもその方法の一つです。自社の価値観をかたちにしたデザインや、会議室の名前を工夫する会社も少なくありません。

たとえば、2018年、マネーフォワードではオフィスの床面に「通貨記号の足跡」グラフィックを描いています。これは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というマネーフォワードのミッションをイメージしているそうです。またメルカリでは、会議室の名前に「改革者・世の中を変えた人・世界にチャレンジした人々」をテーマに、12名の偉人の名前を採用しています。

<参照>
Let’s make it ! みんなで創るマネーフォワードの新オフィス。|株式会社マネーフォワード Wantedly
新会議室の名前が決まったよ #メルカリな日々 2018/06/26|mercan

こうした例以外にも例えば、会社のこれまでの歴史が描かれているエントランスを通ることで、会社が大事にしてきたこと・目指していることを日々実感できるということもあるでしょう。「オフィスに来ると会社が大事にしていることを感じられる」デザインにすることで、会議軸のコミュニケーションが多かったリモートワークでは得ることの難しい、帰属意識も感じられるのではないでしょうか。

こうしたデザイン上の工夫の多くは、物理的空間に施すことで人々にインパクトを与えてきたものですが、バーチャルオフィスの空間に再現することも可能です。そのように考えると、帰属意識の向上のために、出社は必ずしも必須ではないのかもしれません。

▲ミッションカルチャーをバーチャルオフィスに掲出しているPrivTech出典<a href=httpswwwovicecomarticleja usecase privtechutm source=ovicemagazine detail 250utm medium=referralutm campaign=article middle target= blank rel=noopener title=>リモートワークのパフォーマンスをもう一段上げるためにoviceに入ろう声かけで普及<a>

また、会議室でオンラインのメンバーとの情報共有がストレスなくできるようマルチスクリーンを設置する、閉鎖的なコミュニケーションを避けるためにあえてドアや仕切りのない会議室にする…といったように、自社が理想とする関係性を体現できるコミュニケーションの空間をデザインすると良いでしょう。

アイデア③サテライトオフィスなど「本社オフィス以外」を活用する

リモートワークをしている人の中には「家だと集中しにくいけど、オフィスは遠くて出社が多いのは負担だ」と思っている人もいます。そのようなメンバーの要望に応じて、会社がサテライトオフィスを用意するのもおすすめです。オフィスへの出社とリモートワークの二者択一ではなく、第三の選択肢として検討すると良いでしょう。

企業において従業員が果たすべき役割を考えれば、サテライトオフィスに限らず、ワークプレイスとして活用できる場所の選択肢は増えるのではないでしょうか。コワーキングスペースやバーチャルオフィスも、選択肢の一つとして検討に値します。

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リモートワーク、安易な廃止より工夫と改善

リモートワークを取り入れていると、物理的オフィスでの組織運営と比べて、コミュニケーションやマネジメントが難しいこともあります。しかし、今回ご紹介したように、リモートワークは事業コストの削減、業務効率の改善、生産性の向上などの点で企業・従業員両者に大きなメリットをもたらします。

最近ではリモートワークとオフィス出社の間でバランスを取ったハイブリッドワーク勤務も増え、マネージャー層・一般メンバー共に、新しく頭を悩ませることが生まれているかもしれません。しかし安易にリモートワークを廃止するよりも、ハイブリッドワークに移行する方が、長期的に考えた場合有益となることもあるのです。


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SuzukiKohei
フリーのビジネスライターとして、ビジネスメディアでの執筆やベンチャー企業の採用広報を担当。起業家や投資家のほか、ベンチャー企業とのオープンイノベーションに積極的な大企業への取材を行う。