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働き方改革を実現するアイデア10選。実施するメリットと併せて紹介

2019年には法律が改正され、あらゆる企業が取り組まなければならない「働き方改革」。しかし、中には具体的に何をすればいいのかわからず、戸惑っている企業も少なくありません。法律で義務化された取り組みには着手できても、それ以上の取り組みができない企業が多いのも事実です。

そこで今回は、働き方改革を実現する具体的なアイデアや、そのメリットを紹介します。目先の仕事が忙しく、働き方にまで注意を向けることができない会社はぜひ参考にしてください。

働き方改革とは

働き方改革とは、人手不足によって起こる労働時間の問題を改善するとともに、個人の意思や事情に合わせた多様な働き方が選択できる仕組みを作ることです。一人ひとりが職場で無理なく働くことで、離職率の低下や生産性の向上など、社会全体にとって良いサイクルが生まれると考えられています。

働き方改革が注目される背景

働き方改革が注目される背景は主に2つあり、1つは少子化高齢化による生産人口の減少があります。生産人口が減っても経済を支えていくためには、業務を効率化すると同時に、これまで働くのが難しかった高齢者や女性が働きやすい環境が求められているのです。働き方を見直すことで、これまで働くのが難しかった人々が広く社会で活躍できるようになります。

もう一つの背景は、ワークライフバランスという考え方が広がったこと。かつては仕事を中心にライフプランを考えるのが一般的でしたが、最近では趣味やプライベート、家事育児を重視する考え方が普及してきました。プライベートを充実させることで、多くの人が健康的で生きがいのある人生を歩める社会を作ることも働き方改革の大きな目的の一つです。

働き方改革の目的

働き方改革の目的は企業によっても異なりますが、政府としては「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」を目指しています。

そのためには、正規雇用の労働者だけでなく、近年増加しているパートタイマーや時短勤務など幅広い雇用形態に対してのフォローも欠かせません。企業の業績と従業員の生きがい、その両立を図るのが働き方改革の大きな目的と言えるでしょう。

働き方改革関連法とは

働き方改革を実現するために、政府は2019年4月から働き方改革に関する法律を順次施行しています。法令を守らなければ、企業に罰則が課される場合もあるため注意しましょう。どのような対応が求められるのか、その一部を紹介します。

時間外労働の上限規制を導入

かつての労働基準法では、時間外労働に関しては行政が指導するだけで、残業時間に関して特に上限は求められていませんでした。しかし、長時間労働による健康被害を防止するために、法律で残業時間を規制するようになったのです。

下記の上限を超えて残業をすると、罰せられることになるので注意してください。

  • 残業時間は原則45時間、年360時間を上限とする
  • 臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合でも「年720時間以内」「複数月平均80時間以内」「月100時間未満」は超えられない
時間外労働の上限規制、改正前と改正後の違い。改正前、法律上は残業時間の上限がありませんでした(行政指導のみ)。改正後は法律で残業時間の上限を定め、これを超える残業はできなくなります。
▲時間外労働の上限規制改正前と改正後の違い 出典<a href=httpshatarakikatakaikakumhlwgojptopovertimehtml target= blank rel=noreferrer noopener>厚生労働省|時間外労働の上限規制<a>

勤務間インターバル制度の導入促進

勤務時間だけでなく、勤務と勤務の間の休息(インターバル)も法律で規制されることになりました。休息時間が少ない長時間労働は、従業員の健康被害やメンタルヘルスなどの問題を引き起こすリスクも高まるからです。

就業後に一定のインターバルを設けることで、十分な休息や睡眠時間を確保できるよう、政府が企業の努力義務として推奨しています。

勤務時間インターバルの考え方を棒グラフで示したもの。勤務終了時刻に応じて、始業時刻を繰り下げる
▲勤務時間インターバルの考え方 出典<a href=httpsjsitemhlwgojptokyo roudoukyokuhourei seido tetsuzukiinterval01html target= blank rel=noreferrer noopener>東京労働局|勤務間インターバル制度をご活用ください<a>

雇用形態に関わらない、公正な待遇の確保

雇用形態によって不合理な待遇格差をなくすことも、国が定めている働き方改革の一つです。法律が改正されたことによって、正社員や契約社員、パートタイマーなどの勤務形態において、基本給や賞与、手当などに不合理な差を設けることは禁止されました。

仮に、正社員やパートタイマーなど勤務形態が異なる従業員に対して、不合理な賃金差や手当の差などがある場合には、これを解消しなくてはなりません。職務内容(業務内容と責任程度)が同じであれば、雇用条件に関わらず均等な扱いが必須となります。

均衡待遇規定。
不合理な待遇差の禁止。
①職務内容、②職務内容・配置の変更の範囲、③その他の事情、これらの違いに応じた範囲内で待遇を決定する必要があります。

均等待遇規定。
差別的取り扱いの禁止。
①職務内容②職務内容・配置の変更の範囲 これらが同じ場合、待遇について正社員と同じ取り扱いをする必要があります。
▲不合理な待遇差をなくすための規定の整備 出典<a href=httpshatarakikatakaikakumhlwgojpsamehtml target= blank rel=noopener title=>同一労働同一賃金<a>

フレックスタイム制の拡充

これまでもフレックスタイム制はありましたが、従来の1ヵ月清算から3ヶ月精算に改正されました。精算期間が短いと繁忙期が季節単位の場合には労働時間が極端に長い月が出て法令違反の問題が生じたり、子供の長期休暇の時に実労働時間が不足するようなケースもあったのです。

精算期間が長くなったことで、より柔軟に生活に合わせた働き方を実現しやすくなりました。

フレックスタイム制の清算期間延長のイメージ。改正前は1か月単位で清算するため、企業にとっては割増賃金を支払う必要があり、従業員にとっては所定労働時間に満たない場合欠勤扱いとなる。改正後は清算期間の上限が三か月となるため割増賃金の支払いが不要になったり、前の月や前の前の月の働いた時間と相殺するため欠勤扱いにならなかったりということが可能となる。
▲フレックスタイム制の清算期間延長のイメージ 出典<a href=httpsjsitemhlwgojpgunma roudoukyokucontentcontents000381471pdf target= blank rel=noreferrer noopener>厚生労働省|フレックスタイム制のわかりやすい解説導入の手引き<a>

働き方改革を実施するメリット

法を遵守するためにも必要な働き方改革ですが、本来は働き方を見直すことで企業にも様々なメリットがあるのです。

生産性の向上

働き方を見直す最大のメリットは生産性が向上することです。残業続きで疲れ果てたままでは本来のパフォーマンスも出せず、生産性が落ちるのは目に見えています。しっかり疲れがとれた状態で働いてもらうことで、短い労働時間でも高い生産性をあげてくれるでしょう。

人材の定着

劣悪な労働環境では、誰も働きたいとは思いません。転職が当たり前の時代だからこそ、働き方を見直すことで、長期に渡って働いていく人が増えていくはずです。長期で勤務してもらえることで、ノウハウも定着し人材が育つ環境ができあがっていきます。

人材の確保

働きやすい環境は既存の社員に長く働いてもらうだけでなく、新たな人材も集まりやすくなります。今は働く環境で会社を選ぶことも多いため、働き方改革に積極的な会社は多くの求職者に魅力的に映るでしょう。費用をかけなくとも採用できるため、その分働き方改革にコストをかけられるようになります。

働き方改革のアイデア

働き方改革を実現するために、どのような施策をすればいいのか、いくつかアイデアを紹介していきます。

ハイブリッドワーク

現在、最も注目を集めている働き方が「ハイブリッドワーク」です。新型コロナウイルス拡大の影響でリモートワークが普及しましたが、その一方でリモートワークならではの課題も見えてきました。

そこで現在は、リモートワークと出社を自分で選べるハイブリッドワークが注目を集めているのです。人によってリモートワークか出社を選べたり、出社日が決まっていたりと様々なパターンがあり、自分たちの会社のスタイルに合わせて導入することが重要です。

関連記事:
ハイブリッドワークとは?メリット・デメリットと導入事例を紹介

バーチャルオフィスの導入

ハイブリッドワークを実現する上で重要なのがバーチャルオフィスの導入です。リモートワークによって、オンライン会議システムを導入した企業も多いと思いますが、それだけでは働きやすい環境を整えるのは不十分。

出社した人もリモートワークの人も、同じ空間に集まり自然と雑談できる環境を作るにはバーチャルオフィスが欠かせません。ワークスペースとしてだけではなく、イベントスペースとしても活用できるなど、様々なメリットがあります。

関連記事:
仮想オフィスツールの選び方とは?比較ポイントや無料で試せるツール8種を紹介

会議の削減

メンバーの生産性を高めるためにも、現在行われている会議が本当に必要かどうか見直してみましょう。会議が多くなれば、それだけ作業時間を確保できなくなり、残業時間が増えることになるのです。

報告だけでいいのであればテキストでも十分ですし、参加時間を減らしたり、参加人数を抑えることで、それだけ会社全体の生産性を上げることもできます。もちろん、アイデア出しなど会議が必要なこともあるため、本当に必要な会議は精査して残しましょう。

評価制度の見直し

評価制度を見直し納得できる評価をもらえるようにすることも、働き方改革を進める上で非常に重要です。自分の仕事に見合った評価を得られなければ、モチベーションも上がらず生産性も下がっていくでしょう。

上司との相性で評価されることがないよう、何をもってどう評価されているのか、評価基準や評価方法を前もって公開しておくことが求められます。

休暇制度の充実

産休や育休のような法律で定められている休暇制度の他に、社員に求められている休暇制度を用意するのも働き方改革の一環です。特に最近は育休や介護をしながら働く方も多く、それらが理由で休暇が必要な方もいるでしょう。

会社が一方的に休暇制度を作るのではなく、社員の声を聞きながらニーズを満たす制度作りが必要です。

研修制度の充実

研修を充実させることも、立派な働き方改革の一環です。研修が乏しくては、スキルアップしたくても仕事以外の時間を使わなければならず、習得に時間がかかってしまいます。会社として研修を充実させれば、仕事を続けながらスキルアップが可能です。

一時的には業務時間が短くなるかもしれませんが、スキルアップすることで短時間でも今まで以上の生産性を上げてくれるようになるでしょう。

フレックス・時短制度の充実

働く時間を自由に選べる環境も働き方改革では重要な施策になります。フレックス制度や時短制度を充実させることで、育児や介護で働く時間がイレギュラーになりがちな方も、自分の生活に合わせて柔軟に働けるでしょう。

CWO(チーフ・ワークスタイル・オフィサー)の設置

これまで働き方改革は人事部が業務の一環として行うのが一般的でした。しかし、人事部は採用業務をはじめ様々な業務を抱えているため、働き方改革にまで手が回らないことも少なくありません。

そのため、最近では人事部の他に働き方改革を専任で行うチームを作り、そのトップをCWO(チーフ・ワークスタイル(ウェルビーイング、ウェルネス)・オフィサー)に任命するケースが増えています。社内に向けても、会社が本気で働き方改革に乗り出していることをアピールできるでしょう。

例えばアステリア製薬では、2022年7月にCWOを新設しています。ワーケーションの推進や、ポジティブ心理学を用いたチームづくりなどの多様な働き方の提案を行うことで、同社社員や家族のウェルビーイングの向上を図っていくとしています。

<参照>Asteria|CWO(Chief Well-being Officer)の新設と就任について

また、楽天もCWOを設置しており、社員の健康を支える「ウェルネス部」やエンゲージメントを高めていく「エンプロイー・エンゲージメント部」、継続的な社会を作るための「サステナビリティ部」を受け持って活動しています。

相談窓口の設置

社員が抱える問題をいち早く吸い上げるためにも、相談窓口を設置することも重要です。働き方や精神状態に問題を感じても、相談する相手がいなければ、問題を放置して大事になりかねません。

できるだけ早い段階で問題を把握し、解決に乗り出すためにも、社員が相談しやすい窓口を作ることが求められています。

1on1の導入

リモートワークの普及によって注目を集めているのが「1on1」です。上司が部下の話を約30分ほど聞く取り組みで、仕事の話はもちろん仕事以外の近況報告を聞いても構いません。大事なのは「部下の時間」であるということ。部下が安心して働けるようになりますし、組織が抱える課題にもいち早く対応できるようになります。


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SuzukiKohei
フリーのビジネスライターとして、ビジネスメディアでの執筆やベンチャー企業の採用広報を担当。起業家や投資家のほか、ベンチャー企業とのオープンイノベーションに積極的な大企業への取材を行う。